02 現実逃避
アピキテル家は辺境を守る辺境伯の地位を持っておりますわ。
私のお父様も当主として辺境を守っております、強く逞しく誇らしいお父様ですわ。
当然ながらこの世界の一般を守る方ですので、わたくしの思想が異端であると考え、どうにか矯正しようと努力された方の一人ですわ。
もう一方はお母様。両名とも、わたくしを扱きに扱いてくださいました。
昼間はお父様からの肉体を利用する格闘術など、夕方から寝る前までは勉学や刺繍など淑女教育を詰め込み、睡眠時間は疲れ果てて眠るだけ。余計なことを考え、行動する時間を与えぬように常に学びと鍛えを与えてくださる素晴らしい方々でしたわ。
そんなお二人の教育のおかげで、わたくしのスキルは見る見る間に増えていきギフトを使えるようになりましたわ。
この世界では魔力を消費して使用できる魔法。
生まれつき持っている能力のギフト。
経験や努力を積むことで増やすことのできるスキルがありますわ。
魔法は前世ではありませんでしたが、超能力なんかが魔法に近い気もしますわね。精神感応などは魔法に似ていますものね。
魔力は全員が持っているわけではないのですが、割合的には二人に一人くらいなので使える人は多いですわね。
ギフトは「才能」に近い感じですが、こちらも全員が持っているわけではありません。さらに、持っていても気づかぬまま一生を終える方もいますわ。
魔法とは別の能力で特殊能力のようなものでしょうか。
錬金術や叡智、不老や不死なんてものがありますわ。
スキルは技能。特技とでもいえるかもしれませんわね。こちらには階級があり、
・初心者 一度も経験がない人
・初級 一度以上経験がある人、人に教わりながらの使える
・中級 自分一人だけで使える
・上級 人に教えられる
まれに達人と呼ばれる、技能を一段階高みへ導ける存在もいるそうですわね。
わたくしの持っているギフトは「導き手」という変わったもので、人に教えることやその人が持っているギフトやスキルがわかりますの。
そのギフトのおかげでわたくし自身の持つギフトを把握することができましたわ。ただし、導くためには導けるだけの技量と知識が必要でしたので、両親からの扱きはギフトを極めるために大変役に立ちましたわ。
さらに、魔力もありましたので魔法も覚えましたわ。この世界では長い詠唱が必要で、水を出すとか火を出すといった単純なものばかりですのよね。
この辺も、宗教が絡んでおりましてあまり複雑で自由な魔法の利用は神へ近づきすぎる背徳行為になってしまうそうですわ。面倒くさいですわね。
長い詠唱も神をたたえる聖書の引用だったりしますのよね。
聖書を引用し、そのシーンを再現して魔法を使うという感じなので、実は想像さえできれば詠唱不要でどんな魔法も使えるんですのよ。この世界。
魔力もちで魔法が使える子は教会側に大切にされやすい面もあり、そうなると魔法がうまく使える子は協会所属になって教会戦力が増えていくことにもなりますわ。
まぁ、騎士とともに魔獣退治を担うこともあるので戦力が必要なこともわからなくはないのですが、いささか戦力過多で王国の騎士を上回るのではないかしら?と思わなくもないですわ。
「インサニア、現実逃避をして私の話を聞いていなかったね?」
「えっと、お母様が今日もおきれいだとか?」
盛大なため息をつかれる。仕方ないではありませんか。
国王に呼び出され、城に向かうまでの間ずっとお小言だったんですもの。
とりあえずわたくしはアピキテル家からは除名されることになりそうですわ。兄弟、姉妹の婚姻に影響を与えかねないですし、アピキテル家そのものがなくなっては困りますものね。
お父様や領地の者だけでなく、国防を担う存在を失うのは国としても困るので、わたくしを除名して穏便に済ませようということのようですわ。
そもそも、わたくしを罰するようなことを言いますが、神に逆らうようなことをしているものはほかにも山ほどいるのにどうして私だけこんな目くじら立てて怒られないといけないのかしら。
まぁ、わたくしの同士が教会関係者だから教会側としては強く出て罪をわたくしにすべてかぶせたいのではないのかしら。
賠償金とか言われたりしないといいのですけど。




