10 聖水をつくってみよう
どうも、魔女と呼ばれたことを若干ドヤったのにトイレのインパクトに負けたインサニアですわ。
「お嬢様、凹みすぎですよ」
「トイレに負けたんですのよ?悔しいですわ!」
「そのトイレを作ったのだってお嬢様なんですから、実質お嬢様が褒められたってことでいいじゃないですか」
「よくありませんわよ。こんなもん、あの子のパクリでしかありませんもの」
毛足の長い絨毯の上でゴロンゴロン寝転んでうだうだと文句を言っていると、アスとヴィが不思議そうにわたくしを眺めていましたわ。
ああ、そういえば魔法についてのお勉強をしましょうってお話だったんですわね。
「トイレってパクリなの?」
「サニア様の力じゃないの?」
双子ちゃんだから動きが似ていてかわいいですわ。
「基本的にわたくしのやっていることはゼロからではなく、元となる考えや技術がありますわ。
それを戒めとしてパクリと呼んでいますの。わたくし一人が作り上げたことではありませんので」
「そこは先人の知恵を拝借したとか、リスペクトとか言い方はあると思うのですが……」
拝借というより丸っと使ってたりしたらもうパクリですわよ。
「まぁいいですわ。ちょうどトイレの話が出ましたので聖域とその魔法についてお勉強いたしましょう。覚えれば皆さん聖域づくりくらいできますわよ」
「覚えるのが難しいと思うのですが?」
「子供は覚えが早いですのよ。あと、固定概念が少ないほうが魔法は使いやすいですわ」
ホワイトボードを引っ張ってきて聖域の作り方を書いていく。
「トイレの作り方は陶器であの形を作りますわ。陶器製にする理由として、木製より水漏れしにくい。見た目が美しい。白は世間的に聖女や聖域、聖なるもののイメージだからですわ」
「「サニア先生、イメージって大事なの?」」
二人は手を挙げて同じことを質問してくる。サニーがあの屋敷にいる間に、教えてくれる人を先生と呼び、質問の際には手を挙げるように教えたことが生きていますわね。
「イメージは大切ですわよ。特に魔法は想像によるサポートも大きいのですわ。
たとえは『火は赤いもの』という知識しかない、そして触ったことも見たことも無い状態ですとコレですわ」
わたくしは指先に何か赤い塊を出現させた。火というより赤い霧にようなおぼろげな存在ですわ。
「なにそれー」
「へんなのー!」
触れてみてもすり抜け、特に暖かくもない。火モドキに触れても焼けることも無い。
「ふふふ、それはお二人が『火』を知っているからですわ。
お二人が知っているのはこちらですわね。今度は熱いので気を付けてくださいませ」
赤く透けるような光は少し離れていれば暖かく触ろうとすれば熱く、肌を焼く。
「このように分かっていれば再現しやすいのですわ。そもそも火は日常的に使うので知らないほうが難しいので、魔法の基本として最初に学ぶんですのよ」
「……でも、それが聖域に何の役に立つんですか?」
「ほかの色じゃだめなの?」
「いい質問ですわ。ぶっちゃけると何色でもいいですわよ。
たとえは聖火、聖なる炎による聖域であれば、赤でもいいかと思いますわ。
たとえば聖水、聖なる水による聖域であれば、青でもいいかもしれませんわね。
その『聖なる』に連なるイメージがつけばなんでもいいんですわよ。
聖なる森なんて言葉もありますし、緑も聖域づくりに使えますわね。
ほら、魔石なども能力により石に色がついていますでしょう。あれと一緒ですわよ」
わたくしはホワイトボードに虹を書きながらイメージの説明をしましたけどアスはわかったようでしたが、ヴィは不服そうですわね。
「まぁ、教会が作り上げたイメージということもありますが……。
聖なる光って白く眩しいイメージありません事?治療の際など神官様が放つ白い光見たことありますでしょう」
しかし二人は首を振る。
あーそういえばサニーの情報によれば二人は森の民でしたわね。
「まぁ小難しい話はやめましょう。とりあえず、今日のところは白イコール聖域を作る方法にいたしましょうね。
まぁ、小難しい話辞めたら白いトイレを焼き上げる際に、浄化の術式焼きこんでおくだけですわね。あとは水入れたら、トイレの中には聖水ができており、排泄物は浄化されて汚水は聖水に戻る。以上ですわ」
「急に雑になった」
「先生、その術式を教えてくれるんですか?」
「そーなんですけども、ここはちょっと先ほどのイメージともつながってしまうんですわ。
お二人は信仰している神様や特別な存在はいますの?」
少し首をかしげるが、すぐに二人は顔を見合わせ、昔住んでいた森の近くの湖だという。
澄んだ空気の場所で『いずみさま』と呼んで、生活水として利用していたそうですわ。
「でしたら簡単ですわね。ここに用意したのは何の変哲もないガラスのコップですわ。
そしてただの水を注ぎます。さて、お二人には祈りを捧げていただきますわ。この水を通して『いずみさま』へ語り掛けてくださいませ」
二人はコップの水とわたくしの顔を交互に見ながらどうしたらいいのか困惑していますわね。
ちょっと見本を見せましょう。もう一つコップを用意して水を入れ、二人に水の味を確かめてもらいましたわ。あえてレモンを入れた水ですわ。
「わたくしの真似をしてみてくださいませ。
『いずみさま、いつもおいしいお水をありがとうございます。
どうか、わたくしにお水を分けてくださいませ』っと、こんな感じですわね。
この水、飲んでみてくださいますか?」
恐る恐るコップを受け取った双子は水を口にして驚いた顔を浮かべる。
「あの味だよ!」
「いずみさまのお水だ!!」
そりゃそうですわね。わたくしの場合はコップの中の水を入れ替え魔法で入れ替えただけですもの。
「アスもお願いする!」
「ヴィもいずみさまにお願いする!」
「ではお祈りしてみてくださいね」
アス用とヴィ用にコップを改めて用意して先ほど飲んでもらったレモン水を入れる。
二人は目を閉じコップを手にしながらコップに祈りを捧げる。
目を開けていたならこの美しい光景を目にできたのにもったいないですわね。コップからは薄水色の光が優しく輝き、コップに入っていた水はいったん消え新しく注がれる。
しかし信仰の対象となっている湖なだけあり、コップに満たされた水は聖属性が付与されていますわ。
信仰の力……神を信じる心が生み出し、神が力を貸す奇跡。
わたくし、神様がいることは知っていますが
信仰しているかといえばべつなので聖魔法という奇跡が使えないのですわ。
うーん、その辺も教会から目をつけられたのかもしれませんわね。
「このおみず、いずみさまのお水だ!」
「うえーん…もういずみさまに会えないと思っていたのに……
いずみさまはアスもヴィも覚えていてくれた―!」
二人はうれし泣きをしている。彼女たちからしたらいずみさまは聖域なのですわね。しっかし、森の民は精霊に愛されるので魔法系は得意とは聞いていましたけどわたくしの雑な講座でもこう簡単に聖魔法が使えてしまうなんて驚きですわ。
でも、この調子で魔法を鍛えていけば再びいずみさまに会いに行くことができるようになるかもしれませんわね。




