表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/61

第3章 帰還(7)


「お仕事中すみません。私、雨ケ谷警察署の鮫島と申します」


 警察手帳を見せてから、名刺を渡してくれた。警部補とある。偉いのかそうでないのか、成行にはわからなかった。若いほうの刑事も同様に名刺を差し出す。『真壁和也』こちらは巡査部長とあった。


「実は、私どもは、『女子大生連続殺人事件』を担当しておりまして」


 三人とも椅子に座ったところで、鮫島が切り出した。


「女子大生連続殺人事件……?」


 そういえば……と思い出す。その頃付き合っていた奈津美が、怖がっていたような。都内での出来事だから、不安になるのも無理はない。成行も夜遅くなるときは、必ず自宅まで送っていた。


「え……と、それが僕となにか?」

「ええ。どこから話せばいいものか。まずはこれをご覧ください」


 鮫島に促され、真壁が鞄からA5サイズほどのタブレットを取り出した。それを成行に見えるように置き、起動させる。


「あ、これ……僕ですね?」


 防犯カメラの映像だろう。茶髪に天然パーマ。見覚えのあるジャケットを着た自分が歩いている。動かすと、急いでいるのか足早にカメラの前を通り過ぎて行った。


「実は、この日時、昨年の3月25日なのですが、このカメラが設置されている付近で事件が起こったんです」

「はっ!? えっと……それって……」


 まさかと思うが自分が疑われてるのか? 突然の展開に成行はまたパニックに陥りそうになる。自分は殺人犯だったのか? それで逃げてたとか? いやいや、ちょっと待て。


「あ、お間違いなく。我々は佐納さんを被疑者とは思っていないんです。まあ、そう思った時もありますが」


 慌てて顔の前で右手を振る鮫島だが、付け足した言葉に成行は当然反応した。


「思った時もあったって……」

「それはほら、事件の後すぐ、行方をくらまされたので」

「好きでくらましたんじゃないです……」


 恨めしそうに二人を睨みながら成行がつぶやいた。


「奴は連続犯です。他の事件のアリバイがある佐納さんでは無理だとわかっています。それに……」

「それに?」

「この日、有力な目撃者がいましてね、その服装が佐納さんとは全く違うんです。佐納さんは白っぽいジャケットを着ておられるでしょ?」

「あ、はい」


 本当はアイボリーなのだが。お気に入りの……渉が見立ててくれたテーラードジャケットだ。そういえば、あれはどこにいったのか。と考えてすぐ思いつく。何もかも忘れた自分が着ていたのだ。あの男性の部屋にあったりするんだろう。成行は背筋がぶるっとするのを感じた。


「目撃では濃いグレーか黒とのことでした。それに、こんな白いんじゃ返り血浴びちゃって大変です」


 そんなこんなで疑いそのものは晴れたらしい。


「我々は、最悪あなたが事件を目撃して、まあその、殺されたのではと」

「へ? あ、ああ、そうでしたか」


 渉が言っていたことをようやく理解した。親にもずいぶん心配させたんだな。今更ながら申し訳なく思う成行だった。


「で、記憶をなくされてたとのことですが」

「あ、はあ。それも全くわからないんですけどね。記憶をなくしてたってことも忘れてて……S県に居たみたいなんですが、全く覚えてない。ただ知らない間に1年経ってた。って感じです」


 昏睡状態のまま月日が経った。それが成行にとって一番しっくりいく状況だった。その間、本当に眠ったままならよかったのに。と、いつも思う。過去を思い出したあの日、慌てて乗ったバス停の名前も今では思い出せない。あの直後知った衝撃的な事実に、全部持って行かれてしまったのだ。


「その、事件を目撃したことは思い出せませんか? 記憶をなくされる直前のことだと思うのですが」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ