第17話前編 第1の試練
「最終戦の…スタートだ。」
瑠衣子がそう口にすると校内マップが黒板に表示された。
「お前らには今から、2つの部屋の試練を突破してから、私のいる部屋に来てもらう。せいぜい頑張りな。」
瑠衣子の声が聞こえなくなった。迷っている暇は無い。
「菜七子さん。私たちに任せてください。必ず、あなたの無念を晴らします。…行こう。みんな!」
「うん。」
「はい」
「行きましょう。」
私たちは4人で1つ目の試練が行われる部屋に向かった。
1つ目の試練の部屋には4人の人物がいた。
「やえこさん…。」
「…みねちゃん。」
「パパ!なんでこんな所に!」
「お母さん…。どうして…」
部屋にいた人物は弥江子さん、峰さん、里紗の父親、そして鈴の母親。
「みんな騙されるな!これはホログラムだ!本物じゃない!」
「ええ…わかってます。」
私たちが落ち着きを取り戻すと、部屋のスピーカーから声が聞こえた。
「第1の試練、過去の真実。目の前にいる4人のホログラム。その中の1つは生きている本物の人間だ。その人物を当ててもらう。10分以内にな。」
…この中の誰かが生きている………。もしかしたら…弥江子さんは生きているかもしれない。そんな気持ちが私の頭にいっぱいになる。それは他の3人も同じだ。
「みねちゃんは…生きてるかもしれない……。」
「パパは失踪しただけだし…生きてるのかも…」
「お母さんが…まだ…」
死んだと思っていた人が、生きていたかもしれない…。私たちは…冷静さを失ってしまっている。
そんな時…
「みんな!しっかりして!」
心さんがみんなの意識を引いた。
「おそらくこの試練は、ココロのノートを見て生きてる人物を当てる試練。みねちゃんはココロのノートがある時点でもう生きてない…。みんなで協力して考えましょう!」
…心さんも大切な人を亡くしている。でも心さんは、この試練を突破するために峰さんが生きている可能性を否定した。
「そうですね。みんなで考えましょう。」
「あーしも冷静じゃなかった。ごめんね」
「私も…情けないですね。」
私たちは目の前にあるココロのノートを手に取り、片っ端から読み進めて行った。
5分後…。生きている可能性があるのは里紗の父親か鈴の母親の2択になっていた。弥江子さんは…鳴が殺してしまったのを目の前で見たんだ…。生きてない。
「直接的な名前は書かれていないけど、殺人をしてしまった人たちのココロのノートには殺した人の特徴が書かれていることがある。ここから推測しよう。」
「そうですね。」
百合さんのノートに書いてある3股していた男。白井さんと黒井さんのノートを見る限り、この人物は風間也一だ。
…ノートを見る限り、正体が分からないのは菜七子さんのノートに書いてあった
『この世に希望を持ってなさそうなホームレス』
『テレビで有名になってた犯罪者』
そして、百合さんのノートに書いてあった
『壊滅寸前の宗教団体の残りの信者』
この中から考えることにした。
「りさとすずの父親と母親のことを教えてくれないか?」
2人は了承してくれた。
「あーしのパパは、あーしが4歳の頃にいなくなっちゃった。だからあんまり覚えてないけど、犯罪とかは犯してないと思う。けど、住むところはないはずってママが言ってた。」
「私の母親は犯罪は犯したことないし、ホームレスでもない人でした。でも、宗教にハマっていたのは覚えています。」
2人の話を聞く限り、里紗の父親は『この世に希望を持ってなさそうなホームレス』に当てはまるかもしれなくて、鈴の母親は『壊滅寸前の宗教団体の残りの信者』に当てはまるかもしれない。
でも、良く考えればもう一択と言っていい。なぜならば『壊滅寸前の宗教団体の残りの信者』というのは複数人のことを指している。そんな不確定な人数で推測するような問題を出してくるだろうか。いや、ないはずだ。
「答えはわかった。生きているのはすずの母親だ。」
そう口にした瞬間、ホログラムの弥江子さん、峰さん、里紗の父親が話しかけてきた。
「しず。俺は生きてる。一緒に脱出する約束だったろ。」
「やえこさん…」
「お姉様。私は生きてますよ。一緒に脱出しましょうよ」
「みねちゃん…」
「りさ、今まで構ってあげられなくてごめんな。脱出したら沢山遊ぼうな。」
「パパ…」
どんなに話しかけられても、本物みたいに話しかけてきても、もう私たちの心は決まってる。私たちは瑠衣子に負けない。
「るいこ!答えはすずの母親だ!」
「…正解だ。第1の試練クリア!」
瑠衣子がそう言うと、鈴の母親は目の前から消え、他の3人のホログラムはホログラムのハンマーによって潰されてしまった…
「許せない…」
「みねちゃん…」
「あーしも、しずパイセンと気持ちはおんなじ……」
仮に潰された人達が偽物でも、私たちの心は確実に傷つく。でも、私たちは心に決めている。
『瑠衣子を倒し、ここから脱出する。』
挫ける訳にはいかない。
私たちは、第2の試練が行われる部屋へと向かって行った。




