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君たちはワルイコです  作者: H.R
日常パート
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第1話後編 信用と代償

時計を見て部屋に戻る。時刻は2時になっていた。


「みんなと話すの楽しかったな。」


そんなことを思いながら遅めの昼食を食べる。内容は質素なものだが味はそこそこいい。楽しい時間を過ごしていたしずだったが、ひとつ疑問があった。


「さっきの時間。なんでなるは来てくれたんだろう。」


そう。鳴が来ていた理由が分からないのだ。鳴は沙奈枝さんと仲が悪そうだった上に怒っていたようにも見えた。そんな鳴が沙奈枝さん発案の集まりに来るとは思えなかった。…と考え事をしていると、


コンコン


誰かが自室のドアを叩く。


「さなえです。しずさんいますか?」


沙奈枝さんだ。


「さなえさん。どうかしましたか?」

「少しお話がしたくて、私の自室かしずさんの自室でお茶でもしませんか?」

「さなえさんは今日の会を開いてくれたし信用できるのでいいですよ。鍵開けるので入ってきてください。」

「ありがとうございます。」


沙奈枝さんを部屋に入れて鍵を閉める。


「紅茶を持ってきたんです。一緒に飲みませんか?」

「さなえさんありがとうございます。いただきますね。」


沙奈枝さんが紅茶を用意し始める。


「さなえさんは私の事信用してくれてるみたいだし嬉しいな。」


と、そんなことを思いながら紅茶ができるのを待った。



…数分後、沙奈枝さんが紅茶をふたつ持って机の方に向かってきた。


「しずさんお待たせしました。さっそく2人だけのお茶会を始めましょ。」

「はい!」


沙奈枝さんと一緒に他愛もない話をしながらお茶を楽しむ。


「しずさんって成績は良かったんですか?」

「…いえ……あまりよく……なく……て…」


急に眠気が襲ってきた。寝不足だったのかな。


「しずさん眠いんですか?私に構わず寝ていいですよ。」

「さなえさん…ありがとう……ございます…」


沙奈枝さんの言葉に甘えてベッドに入る。何も考える暇もなく意識が遠のいていった。

……………………………………………………………………


しばらくして目が覚める。目を擦ろうと手を動かそうとする。しかし、


「手が動かない…」


何故か手には金属のような冷たさがあり、動かせなかった。


「これは…手錠?」


咄嗟に寝る前の記憶を掘り返す。そうだ沙奈枝さんがいるはずだ。


「さなえさん!いませんか?なんか動けなくて…」

「しずさん!起きちゃったんですね。」

「起きちゃった…?」


すると水場の方から刃物を持った沙奈枝さんがやってきた。


「さなえさん…。その…手に持ってるものって…」

「包丁ですよ。しずさんを殺すための。」

「そんな…さなえさんがそんなことをするはずがない。」

「なんでですか?」

「だって、さなえさんは優しい会長さんで…」


急に口を抑えられて喋れなくなった。


「あのねしずさん。関わって数時間の人間をそんなに信用しちゃダメなんですよ?そんな数時間で相手の全てが分かるわけないでしょう?あなたは私のことをとても信用してくれたし、かわいいからターゲットにしたのよ。」


必死に抵抗しようとするが手も足も動かない。


「しずさん。あなたのその可愛い声でたくさん絶叫を聞かせてくださいね♡」


その言葉と同時に手首を軽く切られた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「ふふ♡かわいい♡」


傷自体は浅いがとても痛い。今まで1度も怪我をしたことがなかったから、少しの切り傷でも普通の人より痛みを感じてしまう。それに信用していた沙奈枝さんからの攻撃ともなれば心の痛みだって出てくる。


「さなえさん…ごめんなさい…許して…痛いの嫌だよ…」

「だーめ♡」


さっき切られた少し下をまた軽く切られる。


「い、痛い…痛い」

「まだまだいきますよ♡」


時間が経つのが遅く感じる。私はこのまま苦しみながら死ぬのか。そんなことを考えていると…


「う゛っ゛」

「え?」


沙奈枝さんのお腹から刃物が姿を現した。それと同時に沙奈枝さんは吐血をした。


「き、貴様…よくも…ゴホッ」


血を吐きながら沙奈枝さんが床に倒れる。すると鳴の姿が見えた。何が何だか分からない。


「しずちゃん。遅れてごめんね。」


その声と同時に鳴は沙奈枝さんの喉仏周辺に刃物を刺して抜いてを繰り返す。


「や゛…や゛め゛…ろ゛……」


次第に沙奈枝さんの声は小さくなっていき、ついには聞こえなくなった。


「ふぅ…」


鳴がため息を着く。何が起こったのか分からない。考えようとしたところで手首が痛む。


「う゛っ」

「しずちゃんごめんね。私が遅れたばっかりに。綺麗な手首に傷がついちゃって。」


そう言いながら鳴はペットボトルの水で傷口を流す。


「いたっ」

「ごめんねしずちゃん。ちょっと我慢してね。」


その後ポケットから出したハンカチで止血をしてくれた。


「タオルかなんかで覆っといた方がいいよ。」

「う、うん…」


鳴に言われて傷口を塞ぐ。痛みは少しづつ引いてきた。


「ごめんなる…何が何だか分からなくて…」

「私ね、しずちゃん達が紅茶飲んでる時からここにいたんだよ。」

「え?」


そんな話をしていると、チャイムが鳴った。


キンコンカンコン


「死人が現れました。死人が現れました。」


その放送とともに我に返る。


「そうだ。私はさなえさんに殺されかけて…、そしてそのさなえさんをなるが殺したんだ…。」


焦っていると鳴が話しかけてきた。


「ねぇ、しずちゃん?私しずちゃんの事守ってあげたよね?」

「う、うん…」

「じゃあ、私が殺したこと黙っててね。」


そう言いながら鳴は沙奈枝さんの血が沢山付いた刃物を首元に持ってきた。


「わ、分かった。だからやめてくれ…」

「ありがとう!しずちゃん!」


助けてくれたはずの鳴が恐ろしく見える。これは本当に正しい判断だったのだろうか。


「さなえさん…なんであなたは…」


そんなことを思いながら私は沙奈枝さんの死体を片付ける鳴をベッドから眺めることしか出来なかった。

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