第6話前編 新たな交流と事実
「もしもし?りさ聞こえる?」
『しずパイセン聞こえるよー!手紙気づいたんだね!』
「うん。ポケットに入ってた。」
『しずパイセンが実験室で寝てる間に入れちゃったー!』
「そっか。」
里紗はいきなり声のトーンを落として話し始める。
『パイセン。落ち着いて聞いてください。』
「…」
『あーしの今回の能力は殺人犯でした。』
「え?…それって」
『でもあーしは人なんか殺せない。だから何もしないです。』
「でも、なんで教えてくれたの?」
『それはパイセンを信用してるからですよ。あ、それと仲間の人、言っときますね。』
「わ、わかった…。」
『今回の殺人犯はあーしと鳴パイセンと心パイセンです。』
…。また鳴が殺人犯なのか…。いや、それよりも、今さりげなくとんでもないことを言ってなかったか?
殺人犯が心さん…。心さんって確か白井さんの遺書に…
〖あの姉妹を前に俺は手も足も出なかった。忘れもしない、遠藤姉妹。一瞬であいつらにやられた俺と黒井は命令に従うしかなかった。〗
もしも、白井さんの遺書が本当だったら…。
「ねぇ、りさ?」
『パイセンどーした?』
「あの…ね」
私は白井さんの遺書の内容を話した。それが本当に良かったのかなんかもう私には考えることも出来ない。でも言っとかないと里紗が大変なことになると感じた。
「……ってな訳で、ちゃんと殺人犯っぽく立ち回らないとまずいかもしれない。」
『…パイセン、もしかしてあーしの心配してくれてるの?』
「当たり前だろ。先輩なんだから。」
『…ども//』
「りさの照れ声なんか初めて聞いたよ。可愛いね。」
『…//しずパイセンの人たらし!』
電話を切られてしまった。でも、有力な情報が手に入った。今回の殺人犯は鳴と里紗と心さん。つまりこの3人、いや、2人に気をつけてれば死ぬことはないってことだ。
「あっ、そういえば。」
ふと思い出した。私の能力〖半幽霊〗の詳細を確認するのを忘れていた。名前的には…ありえないけど1回無敵とか、考えてしまう。しかし、そこに書かれていた内容は想像とはあまりにも違うことだった。
〖半幽霊〗
〖半幽霊は半分人間、半分幽霊のような存在。都合よく相手から見えなくなるなんて、そんな無敵能力な訳もなく…。第一発見者として死体を見つけた際に放送が鳴りません。疑われちゃうかもね〜〗
そんな…。あまりにも不遇な能力じゃないか。一番最初に死体を見つければ白確なはずなのに、私が見つければ放送が鳴らない。そこを誰かに見られでもしたら…。いや、ネガティブになってる暇は無い。今からみんなからの信用を得よう。自分の能力を明かし、あわよくば仲良くなる。1回戦で仲良くなった人達はもう…いないから…。私は個室を出て周りの探索に出かけた。
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簡易食堂。初めて見る教室だ。それに廊下を歩いてみた感じ、1回戦とは違う建物らしい。簡易食堂に入るとセルスさんとエルナさんが楽しそうにお茶会をしていた。
「お茶会…。だめだ、あの人のことは忘れないと。」
私は少し緊張する体を無理やり動かし、2人に話しかける。
「セルスさんにエルナさんこんにちは。お茶会ですか?」
「しずさん、話すのはほぼ初めてだよね。僕の名前覚えててくれて嬉しいよ。」
そう言うと、セルスさんは私の手の甲にキスをしてきた。
「ちょっと…」
「いやぁ、ごめんね。ほんの挨拶だと思ってくれ。」
「しずさんにだけずるいですわ!わたくしにもしてください!」
「エルナさんってば、もう3回目だよ?ま、いいけどね!」
「ありがとうございます…//」
「あの?前々から思ってたんですが、エルナさんってセルスさんのことが…」
「なんでございましょう??」
とてつもない圧と怒りを感じる。黙れ…と。
「い、いやぁなんでもないですははは。それより聞いてください。」
「なんだい?」
「なんですか?」
「実は私の能力は半幽霊で、覚えておいて欲しいんです。」
「そっか、わかった。覚えておいてあげよう!」
「なかなか不遇な能力なんですね。頑張ってくださいね。」
「2人ともありがとうございます。じゃあ、また後で。」
そう言い残し、私は簡易食堂から出て行った。
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被服室に着いて中に入ると菜七子さんがいた。菜七子さん…。瀬羅さんを殺した人。ほんとに話して大丈夫なんだろうか…。そんなことを考えていると…
「しず君じゃないか!話すのは初めてだよね!よろしくね!」
「うわぁ、びっくりした。」
「考え事でもしてたのかい?驚かせてごめんね!」
「いえ…」
「悪かったと思ってるよ。いくら殺人犯になったからって、僕はせら君を殺してしまった…。許してなんて言わないし言えないよ。でも、今回僕は終了者だから、死なないように頑張るよ!」
もちろん菜七子さんを許すことはできない。でも…
「私の能力は半幽霊です。お互い不遇な能力ですけど、頑張りましょうね!」
「ああ!頑張ろう!」
「あの、そういえばなんですけど」
「どうしたんだい?」
「実はここに連れてこられる前に、SNSでななこさんの投稿を見つけて…」
「見てくれたのかい?ありがとう!」
「それで、キャラになりきることが大事だって投稿してるのを見て、なにかコツみたいなのってあるんですか?」
「ごめんね。実は僕、生まれつきキャラになりきるのが得意でね、占い師になろうと思えば占いできちゃうし、催眠術師になろうと思えば催眠術をかけることだってできるんだ。」
「そうなんですね!色々ありがとうございました。」
「こちらこそありがとうしず君!」
根はいい人なのかもしれない。そう思った。
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自習室に着くと心さんと峰さんが勉強をしていた。正直この2人とは話したくない。でも、弥江子さんだったら…。こんな状況でも絶対に話しかける。誰にも屈しない、誰にも媚びない、それが弥江子さんだもん。
「心さんと峰さん、勉強の邪魔してごめんなさい。1度も話したことが無いので話したくて、」
「…」
「…」
返事がない。私はそんなに嫌われていたのだろうか。そんなことを思っていると、
「今は…まだ」
「今のあなたに用はありませんので、勉強の邪魔ですし出てってください。」
「…分かりました。」
今のあなた…?なんのことだろう。考えても分からないので、私は気にしないことにして次の部屋に向かった。
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会議室では右端後ろの席で百合さんが漫画を描いていた。左端前の席には机に突っ伏している瑠衣子さんが、左端後ろの席には勉強をしている鈴さんが居た。私はまず鈴さんに話しかけることにした。
「すずさんこんにちは。」
「ちょっと、歳上なんだから敬語はやめてよね。」
「ごめんねすずちゃん。」
「いいわよ。それでなんか用?」
「勉強の邪魔してごめんね。すずちゃんと仲良くなりたくて…」
「よ、余計なお世話よ!子供じゃないんだから…//」
こういう子との接し方は漫画で読んだことがある。
「よしよし」
「ちょ、ちょっとやめてよ!」
そう、頭を撫でてあげるのだ。
「もう!勉強の邪魔だってば!どっかいってよ…//」
失敗してしまったらしい。私は一旦諦めて百合さんに話しかけに行った。
「ゆりさんこんにちは。漫画ですか?」
「しずさんこんにちは。ええ、締切が近くて。ここから出たら急いで提出しなきゃいけないんです。」
「頑張ってくださいね!あと、私の今回の能力が半幽霊で…」
「ああ、さっき私がやってたやつですね。特にいい事ありませんよ、あなたには。」
「ですよね。話してくれてありがとうございました。」
「いえ、それでは気をつけて。」
「はい!」
百合さんとも話してしまったがいい人だと感じた。少し違和感はあったが…。最後に瑠衣子さんに話しかけに行く。
「るいこさんこんにちは。」
「は、はいいいいぃ!ごめんなさい!」
「え?」
「あっ…す、すみません。」
「いや、大丈夫だよ。」
「あの…実は、その…私しずさんと話したいことが…あって、、」
「ん?どうしたの?」
「その…場所移動、したくて…」
「いいよ!」
私は瑠衣子さんと一緒に会議室を出た。
化学実験室に向かう途中、空き部屋のドアの隙間から鳴と里紗が話しているのが見えた。里紗は頑張ってくれているらしい。本当にいい後輩だ。
化学実験室に着くと瑠衣子さんはドアの鍵を閉めてカーテンを閉めた。
「え?るいこさん?」
「あ、そそそ、その!気にしないでください。周りに聞かれたくないだけなので…」
「それならいいんだけど。それで、話って?」
そこで私は衝撃的なことを聞くことになる。とても嬉しいことと、とても悲しいことを…
「実はですね…」




