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森にて

本編があんまりにもジミでつまらなかったので、こちらに一本追加。


 ブランマージュの森、と呼ばれる森は元々は違う名前の森だった。

勿論、それは魔女が住み着いたから、人々は【ブランマージュの森】といつの間にか呼ぶようになったのだ。


暗い夜道を蝙蝠がはたはたと過ぎる。

森にぽっかりと作られた小さな家を前に、蝙蝠はぽんっとヒトの形になった。

「おや、おかえり」


その家に今いるのは本来の主ではなく、髪をひっつめた眼鏡の女性だ。


淡い金髪に細身の眼鏡。普段から不機嫌そうにその目は細い。

自然と背筋が伸びて「先生ごめんなさい」と他人に言わせそうな雰囲気を持つ。


「エリィフィアさま、来てたんですか?」

「定期的に来ないことには仕方ない。

まったく、あの馬鹿娘はいつまでたっても面倒をかけてくれるよ」

 

呆れた口調そのままに魔女は鼻に掛かる眼鏡のツルを押し上げた。

「昼間のうちに村のやつが来てた。

子供が熱を出したとかでね、クスリを出しておいた。もし明後日までにまた来るようなら一度見に行くから、あんたも気にかけておいで」


「はい、すみません」

「あんたが謝ることじゃないね。

悪いのはあの馬鹿娘さ。それに、あの馬鹿娘の尻を拭うのは母であり師である私の仕事だからね」

 ふんっと鼻を慣らし、エリィフィアは目を細めた。


「何か言いたそうだね?」

「………マスターは、このまま体を見つけられないとどうなるんですか?」

「わかってるだろ?

猫の体に無理に収まってるんだ。魔女の魂をあんな小さな器に入れて、今はその魂を守る為にギリギリの魔力まで与えている。

負荷が掛かりすぎさ―――無茶をすれば魂が融合して消え去るか、猫の体が死ぬか、まぁ、どちらにしろあの子にとって楽しいことじゃないね」


使い魔の顔が歪む。

「だからといって妙な手出しはするんじゃないよ?」

使い魔の心を察するように、エリィフィアは嘆息交じりにいった。

「あの子はあの子の手で見つけなければならない。

他人が手出しを許されているのは、あの魔導師だけだ。それだって、最終的には何の力にもなれないことは判ってるだろ?

おまえが妙な手出しをして全てを台無しにしちまったら―――それこそ、レイリッシュは最終手段に出るだろうよ」


今回のことは土台レイリッシュにしても私にしても随分と無茶をやってるんだ。


 今にも泣き出しそうな使い魔の様子に、ふっとエリィフィアは微笑んだ。

「すまないね」

「―――エリィフィア様?」

「あの子が愚かなのは、私の教育が悪かったからさ。

あの子の我儘を許しちまったのは私だからね」

 

厳しくすればするほど、ブランマージュは反発した。

最終的にエリィフィアの手を離れたのだって、家出同然。

それでもブランマージュはレイリッシュに居場所を求めたことだけば褒めてやってもいい。


レイリッシュに甘えてしまったのだ。

大魔女のもとであれば大丈夫だと。

げんに、未熟な娘の為にレイリッシュは平和な小さな町の横にある森へ住むようにと居場所を与えた。

 悪意持つ魔物が多くいる場所や、人々が争いを繰り広げるような場所から遠く離れた場所。

―――年若い幼い娘を、魔女達は愛していた。


その娘がこともあろうに魔女の(ことわり)の書すら読んでいないとは!


段々と怒りが沸いてきた。

勉強していないにも程がある。

いいや、勉強はしたはずだ。さらりと表面だけをなで上げて、あげくすっかりとそれを脳内から締め出したに違いない。

「えっと………エリィフィア様?」

ふつふつとした怒りが顔に出たのか、使い魔が怯えたような声を出す。


「どちらにしろ、誰にもどうにもできないさ。

私たちは見守るしかできない」

大きく息をつき、使い魔を眺める。


「あんたも覚悟だけはしておきな」

―――主を失う覚悟を。


魔女のひたりと冷たい視線を受けて、使い魔はうつむいた。

「ぼくは………ずっと、ずっとマスターと一緒です」

「そうかい」

難儀な子だね。


そういいながら、エリィフィアは慈愛のこもった眼差しで使い魔を見た。

「あの子は幸せモンだよ」


やばいこっちもジミだった。

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