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web拍手お礼小話つめつめ(11)

――日本昔話、竹取物語。


昔竹取の翁ありけり……ではなく、第一隊隊長ギャンツ・テイラー氏が竹林を散策していると、奇怪な光る竹を発見致しました。ギャンツはいぶかしみ竹を叩き、とりあえず割ってみることに致します。

 するとどうでしょう。猫耳猫尻尾のそれはそれは――半泣きのブランマージュが完全耳ふせ状態で身を震わせておりました。

「これは可愛い! 私の家に連れて帰って嫁にしよう」

「やめろーっ、やめっ、いやマジで止めて下さい」

「ふふふ、嫌がられるとゾクゾクする」

 

ブランマージュは抵抗しようにも恐怖で身がすくんで動けませんでした。

かくしてギャンツは幸せに暮らしました。

めでたしめでたし。


*ギャンさんこれでも警備隊第一隊の隊長さんなので監禁とか誘拐とかは止めようよ。


***


あなたの目の前に白い猫がいます。

「つれて帰って風呂に入れてご飯をやって可愛がる」


あなたの目の前に白い猫がいます。

「普通の猫に用はない」


あなたの目の前に猫耳猫尻尾のブランマージュがいます。

「……耳は触ってもいいんだよな? 尻尾は逆撫でしなけりゃいいか?」


あなたの目の前に猫耳猫尻尾のブランマージュがいます。

「紛い物のブランマージュになど用はない」


あなたの目の前に極普通のブランマージュがいます。

「えっと、どうしようか――」

 普通のブランマージュだとどうしていいか判らないんですね、ロイズさん。


あなたの目の前に極普通のブランマージュがいます。

「――」

いや、いいです答えなくて。答えなくていいですからっ!


* 全然関係ないですが、プロットの段階でエイルをエ、ロイズをロで書いていたら、二人並べてエロになって思考が停止したことがありました。うん、全然関係ないですがね?


***


白いオウムのルゥがその小娘を見たのは、小娘が九つの頃。

それまでは実に平和な日々だった。

 大事な主人であるエリィフィアと二人――もう一匹余計な使い魔はいたけれど、少なくとも自分の世界にはエリィフィアと自分だけの平和な日々だった。


 新しく見出された魔女はエリィフィアに引き取られた。

名前はブランマージュ。赤みの強い金髪に好奇心の強そうな琥珀色の瞳のチビ魔女だった。


「鳥だっ」

 九つの小娘は瞳をきらきらして自分を見ていた。


鳥じゃねー、オレはオウムだ。キバタンだ。カッコイイだろう!


その羨望の眼差しに気をよくして、オレは羽をひろげて嘴でわざわざ身づくろいなどしてやった。

「エリィフィアっ」

とても嬉しそうに小娘は言った。

「コレ、今夜のご馳走? あたし焼き鳥大好き」


――小娘ぇぇぇぇっっ。

 

ぜってぇ泣かす!

オレ様の前で焼き鳥好きだとかほざいてんじゃねぇぇぇっ。


*その日戦いの火蓋は切って落とされた!


***


「あー、髭剃らないとなぁ」

自分の顎先に軽く触れながらロイズがぼやく。

ロイズは熊だがそんなに髭が濃いほうではない。その為に二三日にいっぺん程度しか髭をそっていない。


「あんたは髭も頭も濃くないもんねー」

「どういう意味だ」

 ロイズが目を眇めるが、あたしは気にせずに口の中にマシュマロを放り込んだ。

「あれ、そういえばダーリンは?」

「……あいつが髭を生やしているのは見たことが無いな」

 あたしは瞳をまたたき、エイルに思いっきり声を掛けた。


「ダーリン!」

「なんだ」

「ダーリンって髭生えないの?」

「……それが何だ」

「もしかしてどこもかしこもつるっつる?」

 あたしはめちゃくちゃ興味津々でエイルの足を見たのだが、ロイズが慌てたようにあたしの襟首をつまみあげた。


「品の無いことを言うな!」

「品の無いことを言っているのはおまえだ!」


……判らない人はわからなくていいのよー?


***


「とりー」

耳障りな声がばたばたと足音をさせてやってくる。

オレは苦い気持ちで顔を背けた。

「ちきーん」

「誰がチキンだ、糞ガキ!」

「だって名前教えてくれないんだもん」

「だーれがおまえなんぞに教えるか。ばーか」


 使い魔は主に名前を教えるが、それいがいの相手にはわざわざ名を教えたりしない。勿論、相手が主よりも上位の魔女ならば礼儀として教えることもあるが、すくなくともこのチビ魔女は到底名を教えてやれるような魔女じゃない。

 そして使い魔の名は教えられない限り口にしてはいけないという決まりがある。


おまえなんぞ魔女の中でも最下位だ!


「鳥が教えてくれないから好きなように呼ぶのよ。馬鹿じゃないのっ」


朝からばたばたとうるさい二人に、エリィフィアは持っていた乗馬用鞭をふるい、びしりと椅子を叩いた。


「御黙り、そこの馬鹿二人っ!」


エリィフィアぁぁぁ、オレは、オレは違うだろ。

ちくしょうっ。エリィフィアに嫌われたらどうしてくれるこの糞ガキっっっ。

きぃぃぃっ。

「ルゥ、煩いっ」


戦いはまだはじまったばかりだった。


***


「エリューシュ」

 カチンときた。

チビ魔女が陽気な声でその名前を口にした。つまり、それはそいつが名前を教えたということだ。


エリューシュ。


 もう一人のエリィフィアの使い魔。

普通の狼の二倍は大きい灰色狼のエリューシュ。


エリューシュは無言でそのふっさりとした尾を動かし、ばしばしとチビ魔女を叩いている。

チビ魔女はそれを「遊んでもらってる」とでも勘違いしているのか、掴もうと手を伸ばしては逃げられている。


ふんっ。


ガキのお守りなんざオレには到底できないね。

馬鹿じゃねーかエリューシュ。おまえは狼だろ。犬みたいに尻尾ふってんじゃねーよ。


オレは冷めた視線でそれを見つめた。

あーあ、プライドがないのかね、そんなガキの相手しちゃってさ。

 チビ魔女の手ががしりと尾をつかみ、力任せに引っ張った。

途端、エリューシュはがばりと顔を向け、ぐわっとその大きな口を開いた。


「くうんじゃねぇっっ」


あぶねぇっ、あぶねぇよっ。


くそっ。ちきしょうっ。これだから肉食獣はあぶねぇっ。

オレはぽわんっと人の形になり、大慌てでチビ魔女を引っつかんでエリューシュから引き離した。

「うわっ、鳥が人になった」

使い魔だからな!

つうか、何おまえは暢気に馬鹿なこと言ってんだよっ。


くそっ、ってかなんでオレはこいつの面倒みなきゃいかんのだ!!


……ルゥの立ち居地が確定した瞬間。


***


「あげる」

まるで語尾にハートマークでもつけそうな勢いだった。

漆黒の魔女は満面の笑みで言う。


 ロイズは困惑していた。

肩に乗っかったまま離れないティラハールに。


 まぁ、手を伸ばして抱っこすれば普通に抱っこされるのだが、他におろすとその羽ではたはたと舞い戻り、肩に乗るのだ。

 ほとほと困り果て、飼い主(?)に差し出そうとしたら、その飼い主(??)がにっこりとそんなことを言うのだった。

「あげるって、猫の子じゃあるまいし」

「あんまり変わらなくてよ?」

いや、かわるだろう?


 魔力など欠片もないロイズにしてみれば、魔獣や使い魔なるものに関わることなど滅多にありはしない。滅多というか、普通の生活でそれは考えられない。

「使い魔、ですよね」

思わず低く尋ねるが、

「主はいないの。もう死んでしまったから――行き場がないからあたくしが面倒を見ていたのだけれど、全然言うこと聞かないし」

……そのいうことを聞かないティラハールは、ロイズに抱っこされた状態でレイリッシュ相手に歯をむき出しにしている。

「あなたのいうことを聞かないのがオレの言うことを聞くとでも?」

「――聞きそうじゃない?」


あっさりと言われ、ロイズは眉をひそめた。

「オレ、猫を飼ってるんですが」

「猫は食べないと思うから」

「食うのかっ」

「食べないって言ってるでしょ――食べないわよね? ティラハ」

 そのあやしい確認は辞めろ。


「とにかく。オレは魔導師でもないし使い魔は無理です」

「無理ですって、ティラハ。どうする?」


その言葉に何を思ったのか、ティラハールはぼわんっといつもの愛らしい少女姿になると、ロイズの腰に抱きついた。

「――その姿ならいいだろうって言ってるけど?」

「もっと良くないだろ!」


***


「レイリッシュ!」

ばりっとレイリッシュは餅菓子をかじった。小気味良い音があたりに響く。

 レイリッシュは塔の寝椅子に転がり、すばらしく自堕落に過ごしている。

「なによー?」

「分離のやり方が判らない!」

あたしの怒鳴り声に、レイリッシュはにっこりと笑った。


「奇遇ね? あたくしも判らないわ」

「はぁぁぁぁ?」

「そもそもそれができればティラハールも合成獣のままじゃないわよ。あの子ってば幾つ合成されてるか判らないのよねぇ。あの声からしてセイレーンとかそのへんも入ってそうなんだけど、実際はちょっと判らないし」


なんですとっ。


「もういっそ産み落とせば? 魂は魂だから、体を与えて体外に出せばいいのよ。

ま、あんたは猫の体と融合しちゃってるけど。魂は出せるでしょー」

「はぁぁぁぁ?」

「いろいろ実験してみたんだけど、一応子供は作れると思うのよ? 魔力が子宮に影響をあたえて子供が定着しずらいみたいだけど、あんたの体はそのへん細工してみたから。やってみれば?」


どんだけ人体実験してやがる。


「子作りなんざ一人でできるか!」

「やぁねぇ。そのへんの男引っ掛ければいいでしょ。あ、そうそ、あんた押しかけ婿いるでしょ」


「いないわよ!」


もう本当にこの大魔女イヤだ。



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