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耳掃除。

エイルに頭から湯をかけられた!


ぐっしょりと濡れたのは何も髪だけではない。

「いやー、耳の中水ぅっ」

猫の耳の中に水分をいれるとは何事だ! なんかヘン、なんかおかしい。すんごい違和感。

うわー、エイルの馬鹿ぁ。


「どうした?」

黙々と銃の手入れをしていたロイズが眉間に皺を刻む。

エイルは現在あたしと交替で入浴タイムだが、ああ、むかつく!

「猫耳の中に水が入った! なんかもわーんってするっ」

「……だから、どうなってるんだその耳」

呆れたように言うが、そんなのこっちが知りたいよ。

あたしだって好きで猫耳なんてつけてるんじゃないんだよ。不可抗力なんだ。抵抗できるものであればとっくの昔にどうにかしている。



「見てやるから、来い」

とんとんっと膝の上を示される。あたしは溜息を吐き出してその膝に座った。

「こら、耳を伏せるな。伏せてたら見れないだろ?」

「だからソレは勝手に動くのよっ」

あたしの意思で動かすというよりも、こっちの意思とは無関係に動く割合のほうが強い。使い魔に言わせると、あたしの気持ちで伏せたり立ったりするらしいが、それは完全なる無意識だ。


「右か? 左か?」

「左」

 ぐいっと耳が引かれて無理矢理起こされる。

掴まれるとあたしは微妙な気持ちになって身をすぼめた。

「しめってる」

「耳元で喋るな!」

「ああ、やっぱコレは耳なんだ……おまえ本当にどんな創りしてんだ?」

しらないってば。

「そういえば、エイルの実験体にされているって噂もあったな……まさか」

「いやいや、それはないから」

「そうか。良かった――」

 言いながらロイズが耳の中にふっと息を吹き込んだ。


「ふぎゃうっ」

「耳通ったか?」

「まだだよ! このバカー」

「そうか――んじゃ、拭う?」

自分の言葉に疑問符をつけて、やれやれと人の耳を拭おうとしたとハンカチを突っ込んでくる。

「ぬおぅっ」

「あ、痛かったか?」

いがいに繊細なのだよ、その耳。

「そもそもなんで猫耳なんだよ」

 いや、それは突っ込まないでよ。

そこは突っ込んじゃ駄目なトコだからさ。

「白いし」

「……」

「ああ、うちの猫も白いな」

いやぁ、その話題は駄目だって。

まずいですよ。

えっと、えっと。違う話題に転化、転化させねば。

ふいにロイズがふっと笑う。

「おまえも知ってるだろ。うちの猫」

でた!

猫フェチの猫自慢! 

まったく猫好きってヤツは、自分の猫を自慢したがるのよ。

辞めてよね! それをあたしに言うのはとくにっ!

こっぱずかしくなっちゃうじゃないのっ。てれてれになっ……

「うちの猫性格悪くてな」

「……は?」

「よく噛み付いてくるし。ひっかいてくるし、本を読んでると邪魔してくるし」

「……」

「人間が食べるものばっかり欲しがるし」

……なんだろうね、このフツフツくるものは。

普通はさ、猫フェチっていうのは自分の猫を褒め称えてどれだけ可愛いかを無駄にアピールするものじゃないのか?

褒めろよ。

おまえの可愛い猫を褒めたたえろ。このぼけ熊めっ。

可愛い可愛い白猫ブランマージュを褒めなさいよぉ。こっちが照れて鳥肌たつくらい!

「何か企んでる顔してるしなー」

「……へぇぇ」

「なんかおまえにそっくりだよ」

あたしだよ!


「ほら、もう平気か?」

「――」

「ブランマージュ?」

不思議そうに覗き込んでくる男に、あたしはにっこりと微笑み返した。

――許すまじ!

猫フェチの分際で!!!

絶対に報復してやるからな!

覚えてろっ。



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