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魔女の罠?

「おや、久しぶり」

クエイドは片眉を跳ね上げるようにして皮肉な笑みを浮かべた。

「あら、副隊長」

とはブランマージュ。

「また悪さを企んでるのかな?」

「そんなことはないわよ?」

と笑うその口元は実に嬉しそうにゆがんでいる。何かを確実に企んでいるのだろう。

クエイドはちらりと背後を確認し、ちょいちょいっと指先でブランマージュを招いた。

「ちょっと」

「なぁに?」

「あのね」

すすすっと身を寄せてくる魔女ににっこりと笑い、腰にある白い魔道用のロープで手早くその手首を戒める。

「なにすんのっ」

「ギャンツ隊長! こっちにブランいますよーっ」

言った途端にブランマージュが暴れだす。自分を捕らえた魔道具をぐいぐいひくが、引けば引くほど絞まるのだと教えたほうがいいだろうか?

「いやっ、やだっ、離してっ」

そんな魔道具など魔女ならばすぐに解くことができそうだというのに、パニックを起こした魔女は半泣きの瞳でロープを解こうとしている。

「ブランはどこだって?」

先ほど道端ですれ違ったギャンツが足音も高く近づいてくる。

――クエイドは自分の隣でもがいている魔女の姿に顔をしかめ、ぐっと抱き込むようにして近くの建物の隙間に入り込み、ブランマージュの口を塞いだ。

「ふっ、んんっ」

「ごめんね。悪かった――静かにしておいで」

ほんの意趣返しのつもりだった。

ブランマージュがギャンツを苦手としているのは周知のことであるから。悪さばかりするブランマージュを多少懲らしめてやろうと思ったのだが。

――泣かせる気は無かった。

腕の中で涙交じりで震えている魔女に、途方にくれてしまう。

いつだったか、ギャンツに捕まりそうになって腰を抜かしたこともあったっけ。

相当ギャンツが怖いのだろう――完全に怯えている。

狭い場で左肩を壁に触れさせ、腕の中でふるえる魔女を宥めるように苦笑を落とす。

「ほら、じっとして。ロープといてやるから」

「ふぇっ」

まだ涙声しかでないようだ。

参った――悪いことをした気になるじゃないか。

嘆息していると、ふいに背後から声がかけられた。

「クエイドか? そんなところで何をしている?」

「……」

「勤務時間内に女を暗がりに連れ込んで――」

「あ、ロイズ」

 相手にはクエイドの背中と、そしてもう一人の影があることしか見えていないだろう。

しかし、今小さくブランマージュが呟いた言葉をあの地獄耳は聞き入れただろうか?


だらだらといやな汗が流れる。

――腕の中には半泣きの魔女。

その手は捕縛用のロープに囚われている。


……もしかして史上最大のピンチですか、オレ?


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