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クエイドと猫

突発思いつきネタ。

「あれ、また猫連れて来たのか?」

警備隊隊舎――第二隊室の壁沿いに作られている腰の低さの物置の上、白い猫が寝ている。

遅刻ギリギリで隊舎に入ったクエイドは苦笑しながら猫の頭を撫でた。


その猫はもう幾度か見たことがある。

警備隊第二隊隊長、ロイズ・ロックの飼い猫だ。

首と胴体を交差させた紐でくくられている。この紐は仕事上でも良く使われる品物で、捕り物などに便利な魔道具の一つだ。

 囚われれば紐をつけたものにしか外せない。

そこまでしなくても、と思わず笑いが漏れた。


「隊長は?」

「所長のトコですよ」

部下の言葉にふーんと鼻を鳴らして応え、猫をひょいっと持ち上げてみる。


「なぅぅぅ」

イヤそうだ。

じたばたとあばれているが、勿論子猫が暴れたところで何がどうなるものでは無い。

「今日はどうして連れて来られたんだ?」

「さぁ、なんか所長が連れて来いって言ってたらしいですよ」


なんだろうねぇ、とクエイドは言いながら猫の首の下を撫でてやる。

「みゃう」

「お、気持ちいいかぁ?」

クエイドは毛のある生き物は全般的に好きだ。

飼うまではしない。生き物に対して責任をもてないからだ。だから見かければ構うが、基本的にはそれだけだ。


物置にくくられている紐は長い為、近くのソファに座って膝の上に猫を乗せる。

手入れのいきとどいた猫の手触りが気持ちいい。

持ち上げて匂いをかげば、石鹸の良い香りが漂う。

「しっかしさぁ、うちの隊長と猫って組み合わせがすごいよな?」

「もともと隊長は面倒見がいいですよ」

「まーなぁ。でも、どっちかっつうと隊長は犬派にみえねぇ? でっかい犬を従えてるかんじ」

「ですねぇ」


膝の上の猫がクエイドの指をがじかじとかじる。

噛み癖があるのかもしれない。

小さな歯はちっとも痛くないが。


「躾がなってないぞ」

と、かみついてくる猫の顎をぐっと掴んで口の中に指を突っ込む。

あがあがと慌てるさまが面白い。

「きひひひひ、苛めちゃうぞぉ」

猫の扱いなら任せろ!


妙な自信を込めてにやりと笑い、膝の上に立たせるようにして両手を掴み、肉球をぷにぷにと親指で押してみる。

「みゃぅぅぅっ」

「ふふふ、いやだろぉ」


猫が必死に身をよじって逃れようとするが、勿論そうはいかない。

なんだか猫の癖に泣きそうな顔をしている。

「つづいてはお腹わしゃわしゃだぞー、我慢できなくなっちゃうぞー」


白くて丸い可愛いお腹に手を掛けてわしゃわしゃと動かすと、必死に猫キックを繰り出してくる。

 小さな足で蹴られたところで何ら実害は無し。

「ふしゅーっ」

「くくく、尻尾がおっきくなっちゃってかわいいなぁ」

興奮のあまり尻尾が空気をはらんでふくれた。


子猫は必死に抵抗するも撃沈。

室内のそこかしこで副隊長の暴挙に含み笑いや呆れたような笑いがおこるが、クエイドはすでに興が乗っている為止まらない。


耳をひっぱり、鬚をひっぱり、中指と人差し指の間で猫の小さな舌を挟んで爆笑する。

確実に猫に嫌われるタイプである。

だが当人は可愛がっていると思っているか、それとも苛めている自覚があるのか、口から「きひひひひぃ」と奇怪な声を漏らす。


「知ってるかぁい子猫ちゃあん、にゃんこの性感帯は尻尾の付け根ぇ」

「何をしているんだ!」

突然力いっぱい頭を殴られた。


「うちの子に触るな!」

いつの間に戻ったのか、ロイズ・ロックがクエイドの膝の上の猫をひったくり、猫もやっと現れた主に必死にしがみつく。

「みゃぅ、みゃぅぅぅっ」

その声がはげしく哀れだ。


「ううう、痛い。

ひどいっすよ隊長。ちょっとした御茶目じゃないですか」

「おまえは二度と触るな、近づくな」

「――いや、そんなマジな目しないで下さいよ?」

その目で外を行けばモーセの如く人々は道をあけますよ?

慣れているといえどほんの少し汗まで流れた。


ロイズ・ロックは自分の胸にしがみついて涙目になっている猫の頭を撫でて、

「っどいつもこいつも」

と不機嫌をあらわにしている。


「そもそも、今回はどうしたんですか、猫連れてきて」

「所長が連れて来いというから連れてきたら」

忌々しそうに舌打ちする。

「倉庫にネズミがでるから猫を入れておけとかふざけたことを。あのタヌキ親父が」

「……いいじゃないですか」

猫なんてそんなものだ。

猫を飼う理由の一番がネズミ避けなのだから。

ある意味しごくまっとうといえる。

「ネズミなんて食べて病気になったらどうする」

ネズミ捕りをさせたいなら自分の家の猫を使え!といきまく相手に、

「いや、あの倉庫だったらすでに所長の猫が一匹入れられてるでしょ」

黒いのが。

クエイドが苦笑しながら言えば、益々もってロイズは不機嫌そうにクエイドを睨んだ。

「完全に駄目じゃないか!」


なんで駄目なのか、その原因はクエイドには理解できなかったが、とりあえず一つだけ判ったことがある。

――我らが隊長殿は極度の猫フェチに違いない。


クエイドは動物が大好きですが、動物はクエイドが嫌いです。


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