戯れ
本編がきつかったので、仕事の合間に仲良しな二人が書きたくなって衝動的に書き上げてしまいました。
それでもやっぱり二人のコンビが好き。
ロイズがくっきりと眉間に皺を寄せ、その奇妙な瓶を眺めていた。
じっと睨みつけ、腕を組んで、難しい顔をして。
その時のあたしはそれを興味深々で見ていた。
一瞬ロイズってば病気かしらって思ったのだけれど、何か違うのよ。
難しい顔をして、あたしと薬とを見ている。
それから大きく溜息を吐き出して「まぁいいか」と呟いた。
「で、コレがその薬です!」
あたしはふふーんっと鼻を鳴らしてエイルの前にその問題の小瓶を閃かせた。
中身は液体ではなくて粉末です。少し茶色い。
「で?」
ノリが悪いわよ、ダーリン!
「ダーリンは薬とかくわしいでしょ?」
「おまえもそうだろう」
淡々と言いながらあまり興味を向けてくれないエイルだ。
その手はずっと何事かを書き記している。
「ふふふ、あたしはぁ、ちょっとこのテの薬は判らないのよぉん」
「なんだその言い方は」
「きっと媚薬とか、精力剤だと思うのよ!」
チッ、無言になったわね、ダーリン。
「ってコトで、ちょっと調べてみてよ」
「なんで私がそんなことを」
「ふふふ、隊長殿の弱みを握ってやるのよ。絶対にあとあと役に立つわよっ。
どうする、この薬がものすっごい薬だったり、はたまた惚れ薬とかだったりしたらものすごーく楽しいと思わない?」
ロイズってばどういう顔してこんなもの買ったと思う?
もう想像するだけでお腹よじれちゃいそうなんだけど!
「――少しも楽しくないが」
ノリが悪すぎますよ、エイル。
あなたは本当に立派な成人男子ですか?
そんな貴方だからこそ!
あたしはにまーんっと口元を歪め、きゅぽんっと問題の薬瓶の蓋を開けはなった。
「こうしてくれるぅぅぅ」
「なっ、この戯けがっ」
半分くらいばさりとエイルに掛けてやる。
あ、もしかして飲み薬?
それだと駄目か?
あたし失敗?――なんなら口の中に無理矢理押し込んで……
「ブランマージュ?」
エイルが瞳を眇めた。
「おい?」
「なんか……いいにおーい」
あたしはふにゃりと体の力が抜けた。
尻尾がぱたぱたと自然と揺れて、なんとなく体が低くなる。
むしょうに体を何かに摺り寄せたくて、そう、いい匂いのするエイルにすりすりとすりよった。
「エイルぅ、なんかいいにおーい」
なんか凄いスキーっ。
すっごいスリスリしたい。
いやぁん、スキーっ。
エイルはくっきりと眉間に皺を寄せ、残った薬瓶を引っつかみ、
「媚薬……? いや」
「またたびか」
いやそうに呟いた。
あああ、エイルがいいにおいぃぃ。
「私の服に涎をたらすな。
噛み付くなっ、舐めるんじゃないっ!
戯け!」
エイルはうんざりとした様子でその後あたしを風呂に叩き落した。
……反省してます。はい。
――なんだかんだ言って仲良しです。