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ep21

暴漢たちに見られることもなく麻相たちは一階まで降りることができた。

シュプレヒコールが聞こえた方向から職員室に集合していることは確認できた。

職員通用口には見張りが居たがそれ以外の出入り口には暴漢らしい人影はなく出入りは自由だった。

連絡通路から体育館脇を抜け、さらにプールの裏手からフェンスを越えた。

麻相は難なく乗り越えた。

40前後の田端だが、意外にも身のこなしが軽かった。

校庭側フェンスに沿って人だかりがあり校舎を心配そうに眺めていた。

銃声、発砲音を聞いて人だかりができるのは日本だからだろうと麻相は思った。

海外だったら真っ先に物影に隠れるか伏せる、逃げ出しているはず。

野次馬は放置とばかりに麻相と田端は市役所を目指して歩き出した。

「超能力ってやつはオカルト扱いされてて、まあ酷いもんだよ。

1970年代に超能力ブームってのが起きて、スプーン曲げなんて手品がもてはやされたんだ。

有名になりたい奴らが超能力ありますって手を挙げて、揃いも揃って手品を披露し合ったわけだ。

そのうちにブームは去るは、インチキやトリックがばれるはでタブー扱い。

今ではイロモノ、キワモノ、オカルトの象徴として存在しないことになってる。

ホンモノの超能力者は俗世間が嫌いになったのか表に出てこなくなってしまった。

出てきたとしても見世物小屋のピエロだよ。

スプーン曲げか行方不明者探しをさせられるようではね。

身を隠して大人しくしていた方がいいからねえ、ぱったりと姿を消したね。」

世間話をしながら散歩の体裁を取っているが話の内容はカルトだった。

通りを歩いていても静けさに包まれた住宅もあれば慌ただしく何かをしている住宅もある。

「俺の感覚的に、ではあるけど100万人に一人の割合で超能力を持つ者はいると思ってる。

だから超能力者、チョウノウリョクと言いづらいから【力】と言いかえるけど。

力を持つ者同志が巡り合うのはレアケースなんだ。

レアだけど、こうして麻相君と出会えたのは奇跡だと思う。

奇跡といっても砂漠の中でダイヤモンドを見つけ出すほどのレアじゃない。

俺もそうだし麻相君も同じ、力を出す時、気を出すんだ。

気は力の多きさに比例する。

大きければ気は波動になってあちこちに拡散する。

ま、電波と同じと考えればいい。

現代科学では計測できないけど、力を持つ者ならば感知することはできるんだ。

俺も気を感じてここに来た。

二週間くらい前だったかな。

今さっき、麻相君が見せたバリアー、あの波動と同じものを感じたんだ。」

二週間前といえば高崎に殴打された日と麻相は覚えていた。

胸と腹の激痛と息苦しさ。

陽子が連れ去られようとしたこと。

陽子が傍に居て泣いていたこと。

他に何があったのか麻相は覚えていなかった。

「心当りない?」

「さっきのあいつ、高崎というけど、あいつに殴られまくった。二週間前に。」

「ふ~~ん、その時に防衛本能からバリアーを張ったのか。」

「覚えてないです。実は。」

「そうかあ。無意識のうちに、かあ。ナチュラル・ボーンってわけだ。」

生まれ持っての才能ということだが麻相にはどうでもよい事だった。

「で、その気を感じたのはこのあたりかなと。

隣の池口まで来てみた。

そしたら、こっちの青田市から嫌な雰囲気を感じた。

何て言うのかな、機械油を舐めた時とでもいうかな。」

妙な例え方だと麻相は思った。

「この町に来てみたら嫌な雰囲気と一緒に麻相君の気を感じ取ったわけだ。」

得体のしれない話、聞き流すしかないと麻相は考えていた。

しかし話に乗ってあげる、復唱する程度の事はやろうと思った。

「その気の波動というのは他にも出てる人はいるんですか?」

「偶にあるんだ。あそこまで強く感じたのは麻相君が初めてだよ。」

「いつも出ている?時々出る?」

「時々だよ。毎日というわけじゃないでしょ。」

田端は口を休め耳を傾けた。

どこからか放送が聞こえてきていた。

市の広域放送とも重なって聞き取りにくい。

よくよく聞きくと立てると避難を指示する放送、それが近付いてきていた。

前方の交差点からミニパトがこちらの通りに入ってきた。

録音ではなく警察官が直にマイクで避難の呼びかけを行っていたのだ。

田端が手を挙げてパトカーを止めた。

ミニパトのウインドウが開いた。

「仕事中、すんません。警察署、どうなってるんですか?」

田端の問いかけに警察官も困惑した。

「本部と連絡が取れず、我々も困ってます。

とりあえず自宅待機か避難指示かで対応が分かれています。」

「無線がダメ?」

「ダメです。」

「県警とは?」

「係の者が池口署と坂道署へ向かってます。そちらから応援要請をする手筈です。」

「警察署、爆破されたんですよね?」

「現状では不明としか。聞いた話では十数名の武装集団が本部に乱入したとかで。」

伝聞でしか知らないようだ。

となれば交番単位で連絡を取り合りあい行動していることになる。

「武装集団?ここ、日本ですよね。」

「それは言わないでください。私たちも訳が分からない。」

警察官も思わず本音を漏らした。

「お仕事中、もうしわけない。」

「あなた方も早く逃げてください。」

ミニパトは放送を再開しゆっくりと通りを抜けていった。

あの後、陽子は無事に自宅に着いたのかが麻相には気がかりだった。

そして母親と一緒に隣町へ逃げてほしいと願っていた。

「麻相君、お母さんとお父さんは心配してないかな?連絡はしておいた方がよくないか?」

連れまわしておいて今更心配するのは都合がよすぎると麻相は思った。

親については話したくないが今後のこともあるので断っておこうと麻相は考えた。

「父と母は仕事で海外にいます。俺、独り住まいなので気兼ねすることないです。」

「えっ?そうだったの。勿怪の幸いというべきかなあ。

さて、さっき言ったテレパシーだけど、相手といつも以心伝心しているわけじゃあない。

自分の気持ちが乗っている時はできるけど、そうでないときはできない。

相手が心を開いた時はできるけど、心を閉じているときはできない。

しかもだ、相手が心を開いている時は過去の記憶まで覗けることがある。

これはこれでち~と厄介でね。

知らなくてよいことまで知ってしまうと気まずくなって喋り辛くなったりもする。

このテレパシーは誰彼構わず以心伝心できる時もあれば、特定の相手とだけできる時もある。

無意識にそうできる時もあれば意識して切り替える事もある。

ケースバイケースなんだけどオン、オフ、このイメージングができればいいんだ。

俺はそのようにしてる。」

田端が続けたので麻相が口を挟む余地がなかった。

ようやく一区切りついたので麻相は尋ねた。

「警察署に十数名って、襲撃?」

「そのようだね。

男たち、高崎とか言う奴等が学校、教室へ乱入する直前に遠くから銃声が聞こえた。

たぶん警察署を占拠する時に何人かが撃ったんだろう。

警官に死人やけが人が出てなければいいけど。

テストに集中してた君らは銃声は聞こえなかったかもしれない。」

「高崎たちと警察署を襲撃したのは同じ連中なんですか?」

「今は何とも言えない。多分だけど、タイミング的にも同じグループと考えた方がいいよね。」

田端の超能力論よりもこの町で起きていることの方が重要だと麻相は思った。

暴漢たちはこの街を丸ごとジャックしたようだからだ。

日本ではありえない出来事なのだからそちらの方の話題にして欲しい。

テレパシーが使えるならそれくらいは察してほしいものだと麻相は思った。

「実を言うと、力を使うと疲れるんだ。

脳が活性化してるのか、普段使わない脳細胞がフル回転するのか、よくわからない。

特にテレパシーは精神面で厳しい。

テレキネシスは体力勝負の面があるから体の疲労で感じることもあるね。」

「息を吸うようには使えない?」

「そう、いい事いうね。その通りだよ。

麻相君が使ったのはテレキネシスだ。

テレキネシスのバリアーだよ。

でもね、気だけでバリアーを張れるのか俺は疑問なんだ。

昔のアニメでは気の力だけで攻撃を跳ね返すなんて場面が出てくる。

物理的な攻撃なのに、ちょっと考えられない。

気の力で何かをコントロールしていると考えた方がいいかも。

ただこれもイメージングで解決するのかもしれない。」

「想像力?」

「そうともいうけど、心の底から出来ると思い念じる事、かな?

さっき女の子を庇うときにバリアーを張ったんだけど、何を考えてた?」

「何をって・・・・・」

「どんなことを強く思ったのかな?」

「ただ、守りたい、森本さんを守りたい、とだけ。」

「ふ~~ん、守りたい、かあ。最大の動機、きっかけかもねえ。」

「あれは本当に俺が出した力なんですか?」

「他の誰も防ぎようがないよ、銃撃なんて。」

「じゃあ、俺があの力を出してなければ、俺、死んでたんでしょ?

あんたは見ているだけで助けてくれなかったんですか?」

麻相は憤慨していた。

田端は苦笑していた。

「あの男、高崎をひっくり返そうと準備はしてた。

足元をすくえばいい。

引金を固定してしまうことも出来た。

いよいよダメ、ならば、と、思ったら君があることをやって見せた。」

「ある事?」

「女の子の元へ瞬間移動した。

ほんとうに、あっという間に女の子の所へ移動してた。

君がどんなに足が速くても弾よりも速く、は無理でしょ。」

「瞬間移動・・・・・・」

絶句したまま麻相は先ほどの出来事を回想した。

高崎が銃爪(トリガー)を引いたのを確かに見ていた。

身体が動いたのはその直後だったはず。

弾丸の速度がどれほどか知らないが3mの距離を飛び出しても間に合わない。

「俺も初めて見たよ、瞬間移動。

えっと思っていたら強烈な気が出てきた。

弾が直進しないでカーブを描いて壁にドッて。

あの時の気は以前感じた気と同じ、やはり君だったのかと、ね。」

腑に落ちない顔で麻相は歩いていた。

田端は終始ポーカーフェイスだった。

「古文書によると・・・あ、これはまたいつかにしとこう。

さっきも言ったようにイメージングによって力は応用が利く、はず。

バリアーもイメージング、体を浮かすのも同じだよ。

とはいえ、備わった力の大きさに応じて発揮できるものが違ってくるんだ。

俺の場合、重量でいうと100キロくらいのものまでなら持ち上げられる。

でも車は無理だった、1トンを超えてるって既成概念があるからかもしれない。

頭で無理と思い込んでいるからかもね。

麻相君がどういう理屈でバリアーを張ったのか分かれば俺にもバリアーが張れるかもしれない。

まあ、可能性は信じたい、でも、無理だろうなあ。」

住宅街を平然と歩いている麻相と田端だったが周囲の騒がしさが気になってきた。

ある住居の玄関先では近隣同士の会話が聞こえてきた。

警察署と連絡が取れない、いきなり県警とつながって要領を得なかったとか。

市役所とも連絡がとれず、広域放送の趣旨をどう理解し、どう対応するべきかわからない。

避難するにも人出が足りず、どこへ逃げてよいか見当がつかない。

平日の午前中であるから自宅に居残った者たちが困り果てる姿がそこかしこにあった。

これまで自然災害に遭ってきた地域ならば是非もなく避難することができただろう。

そうでもない青田市の住民は右往左往するしかなかった。

再び市の広域放送が流れてきた。

市街への退去を指図する強制的なものだった。

作者懺悔:申し訳ありません。

体育祭、学校際、修学旅行・・・・高校生活でのビッグイベントを忘れていました。

25年3月10日現在、ep48まで書き上げてから、あれれ???

投稿済みの高校襲撃場面は高三の12月・・・・・・ぜ~んぶ終わってる・・・・よね。

作者がそれらに良い思い出がないとかそんなわけじゃなくて・・・・・・

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