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ep1

お断り

この作品を構想(妄想?)していたのは40年前です。

ですので古臭い箇所がいくつもでてきます。

時代設定を40年前としてしまえばよいのですが、

最近手に入れた資料が最新のものでした。

それを反映させるには現代劇として描くしかありません。

現代の高校生がどのような思考の元に行動しているのか、

どんな言葉遣いをしているのか見当がつきません。

私が考えるよりドライかつクレバーかもしれませんが、あえて古典的な高校生として描きます。

今はスマホを持ち、SNSの活用が当たりです。

銀行、コンビニのみに設置されていた防犯カメラも今では交通の要衝から一般家屋に設置され、車のドラレコは24時間監視機能もあります。

街中を歩けば必ず映っている有様です。

これでは主人公たちは行動できません。

それらは無いものとして話を進めますが、ご都合主義的にそれらを盛り込みます。

その点は御容赦ください。

夏の大会が終われば3年生は部活を引退。

残りの日数は大学受験か就活にむけて時間を費やすのが既定路線だった。

時間が無いと焦る者も居れば時間つぶしに何をやると考える者も居る。

進学校と呼ばれはしないが有名大学への進学実績が高いのは異例だった。

有名大学への進学も盛んだが部活動も盛んなのが青田高校の特徴だ。

大学への進学希望でありながらも目指すものが見つからない麻相は自問する時間が続いていた。

青田高校は麻相の実力からすれば2ランク、3ランク上の高校だった。

自ら希望し、猛勉強のすえに入学してみたものの4月中頃には目的を達成。

喪失感から意欲が失せ授業についていくだけで精一杯、成績は超低空飛行を続けていた。

留年を免れるためだけ、後始末にも似た勉強しかできなかった。


両親は輸入業を営んでおり一年のほとんどを海外を転々としていた。

帰国するのはパスポートとビザの更新手続きと国内の業者回りのため。

財務処理と法務処理で専門家との面談に時間を費やす。

帰宅してきて寝食を共にすることも稀、こんな生活が十数年。

そんな親を見てきたためか仕事に忙殺される生活には嫌悪感を抱いていた。

就職したとて親の二の舞は嫌。

フリーターで生きる選択もあると考えていた。

麻生が8歳までは母方の祖母が麻相家の家事全般の面倒をみてくれていた。

その祖母が亡くなると家政婦が雇われた。

洗濯と掃除、夕食を整えた家政婦と入れ替わるように帰宅するのが麻相の日課。

家政婦が休みの土日はスーパーかコンビニの総菜で済ませていた。

両親不在のまま一軒家に一人で暮らす生活は続いていた。

祖母の死後は見守る者、頼る者がいなくなった。

麻相の生活態度が乱れるのは当然の流れかもしれない。

中学入学と同時に不良グループと付き合うようになった。

授業のサボタージュ、備品の破壊までは仲間と連れ立って躊躇なくできた。

ただグループ内で常態化していたタバコ、アルコール、違法薬物には手が出せなかった。

仲間から勧められ試してみたが体が受けつけなかったせいもある。

窃盗は物怖じしてしまい、たかりは恫喝する言葉が出てこない。

二輪車、四輪車を乗り回す仲間も居たがこれにも馴染めなかった。

スマホは自宅に置いたままで持ち歩かず、不良グループには持っていないで押し通した。

親が強烈なペアレンタルコントロールを施したため他に使い道がなかったせいもある。

解除する方法はあったが仲間内での使われ方に疑問を抱いたので試してもいない。

ただし、そのおかげでグループ内の悪事に加担しなくてすんでいた。

様々な悪事を傍らで見てきたがどこかで彼らを冷めた目で見ていた。

彼等は仲間であるがそうではないとの違和感はあった。

行き着くところまで行けばいいと自棄にもなれない。

そんな自身の中途半端さに嫌気がさしてきていた。

中三の春、担任との進路相談での出来事だった。

「このままでは置外チガイ高校。」

最初の一言は隣の隣町、置外市の高校にしか進学できないとの宣告だった。

近隣市町の素行不良の生徒が集まる学校として有名であり、仲間の一部はそこに進学する。

「ご両親がいないまま話を進めてよいものか、困るんだよなあ。」

困惑した言葉とは裏腹に口調は事務的だった。

この時も麻相の両親は渡航中であり、諸事は息子の判断に任せると一筆書いたのみだった。

「そこで相談なんだ。」

親しげな口調に変わった。

「麻相はもともと頭がいいから今から勉強しても1ランク上の高校を狙える。池口高校はどうだ?」

池口高校は隣町にある。

偏差値でいえば50の普通科高校だった。

具体的な進路相談をしてくれることに困惑し返事に困った。

二年の担任は投げやりな姿勢、まるで違っていた。

「頑張れるなら内申書は俺がうまく書いといてやる。」

困惑顔の麻相を見つめ笑いかけてきた。

「でもな、出来ないというなら、好きにしろ。内申書にはありのままを書く。」

突き放す言葉に麻相の顔が反応した。

「無責任というなら、その通りだ。俺だって麻相一人に時間をかけられない。」

教師としての立場上、無責任な発言は物議をかもすご時世だ。

にもかかわらずそのような言葉を投げかけてきたのは自分を信頼してのことだと麻相は受け取った。

担任は麻相の気配を察したのだろう。

「高崎たちとは縁を切れ。付き合うな。麻相 瞬という人間がもったいないだろ。」

不良グループのリーダーの名を挙げた。

そうはいっても簡単ではない

彼らと付き合いを止めれば裏切者と罵られ、何かにつけて因縁をつけ、イジメやゆすりのネタになってしまう。

抜けるに抜けられないことは麻相自身が分かっていた。

「ちょっとずつでいい、あいつらと会うのを減らしていけばいい。」

担任は麻相の目だけを見ていた。

「仲間うちのルールがあるから簡単じゃないのは分かる。でもな、麻相が少しづつ変えていくしかないんだ。」

一方的に話を進められてしまい納得できるものでもない。

しかし押し問答を始めてもらちが明かないと麻相は思った。

「大人はあてにするな。言いたくはないが教師は無力だ。」

これがこの教師の持ち味、やり口なのだろうと察しがついた。

「な、なんとか、やってみます。」

ようやく口から出た言葉だった。

それを聞いた教師は満面の笑みをうかべ頷いた。

「授業、()けるなよ。出席日数が足りなけりゃ庇い切れんぞ。」

一礼もせずに退席する麻相に条件の一つを提案した。

不良グループと距離をとれば自分の中にくすぶる違和感が払しょくされるのではないか。

そんな期待から担任の言うことを実践してみた。

今までは週四日会っていたのを二日に減らした。

理由は適当にでっち上げたが次第に麻相の行動が怪しまれだした。

徐々に距離をとる努力を続けていく最中に麻相の小遣いが減らされた。

麻生の金遣いが荒いと家政婦を通じて親に知られたせいもある。

そのため彼らの悪事に金を融通することができなくなった。

そんな事情はお構いなくグループのリーダーである高崎は麻相に金を無心し続けた。

金を出し渋る麻相には殴るけるの暴行が加えられた。

麻生とて腕力に自信があり抵抗することもできたが多勢に無勢ではやられるままだった。

麻相の金を当てにしすぎと擁護してくれる仲間も居たが意に介さず。

そんなことが二度三度と続いたため麻相は警察に相談した。

メンバーの溜まり場、違法行為の数々、メンバーの氏名、知っていることはほぼほぼ話した。

内定調査の後、不良グループの溜まり場を警察官が急襲。

不良グループは補導。

違法薬物とダガ―ナイフを所持していた高橋とその側近は少年鑑別所へ送られた。

不良グループは事実上の解散・消滅。

麻相と麻相を擁護した仲間一人の違法行為は無罪放免とされた

その後は何事もなく中学三年の時間が過ぎていった。

池口高校の合格レベルに合わせるための勉強はしたがそれほど根を詰めていたわけでもない。

相変わらずどこかで他人事、絵空事にように感じていた。

ただし定期テストの点数も上がり、成績は上昇傾向にあると担任から励まされた。

そんな中での秋の運動会。

中一、中二と学校行事に参加しなかった麻生にとって最初で最後。

そこで100m、200mの短距離走では男子よりも速い少女を目の当たりにした。

少女の名は森本陽子という。


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