爆誕! 鬼コーチ浩史郎
「あの方に指導してもらいたいですわ!」
謎の入部希望者、西園マリリン(ほぼ100%風紀委員長の西園寺茉莉花)の俺を指差しての発言に、驚いて部長の松平と副部長は顔を見合わせた。
「いや、確かに里見は上級者だが……」
「あのね、合宿中は、男女別れて練習を行う事になっていて……」
二人は西園(西園寺)を言い聞かせようとしたが……。
「あの方にコーチして頂けるなら、私、軟式テニス部への入部を前向きに検討を加速してもよろしくてよ! ……じゃなくていいですよ!」
「何ぃっ!✧✧ よし! 里見、コーチしてやれっ!」
「げっ……!」
西園(西園寺)に入部を仄めかされた松平は目を輝かせ、彼女の要求に応えるよう命じて来たので、俺は顔を引き攣らせた。
「もう! 松平くん! 勝手にっ……」
「おおっ。なんか、すごい展開だ……!」
「……」
七瀬は部長の独断に怒り、おそらく西園が西園寺だと気付いていないりんごは好奇心に目を輝かせ、気付いている宇多川は、取り敢えずりんごに被害が出ない内は様子を見る構えのようだった。
✽
そして、コートで対峙するげんなり顔の俺とニコニコ顔の西園(西園寺)。
どうしてこうなった?
「(里見様とテニスで手合わせできるなんて、幸せですわ♡)宜しくお願いします!」
「す、少しだけだからな……|||||||| うっぷ……」
シェアハウス査察の時のトラウマが蘇り、西園寺への嫌悪感から吐き気まで催しながら、俺は自分に言い聞かせた。
とにかく、奴を圧倒しこの茶番を出来るだけ早く終わらせようと……。
「行きますわよ〜! ハイッ!」
パシッ!
「おおっ。鋭いサーブだ!」
「経験者かしら?」
「わぁっ。西園先輩、すご〜い!」
「……(西園寺先輩は確かスポーツ全般得意だった筈だから、これぐらいは当然出来るでしょうね)」
西園寺のサーブに松平、七瀬、りんごを始め、皆が歓声を上げる中……。
「うおりゃあっ!!」
バンッ!!! パァン!
「キャッ!!」
手加減一切なしにボールを打ち返してやると、西園(西園寺)はあまりの勢いに反応できず、その場に崩れ落ちた。
「さ、里見くん?? もう少しお手柔らかにに……」
「あ、ああ……。里見、入部希望者相手にそこまで本気を出さずとも……」
「何言ってんですか! こっちは(吐きそうで)それどころじゃないんですよ!」
「「ひっ……!?」」
七瀬とあの松平にすら止められるも、俺は鬼気迫る表情で噛み付き、西園(西園寺)に向かって、怒鳴り付けた。
「西園! 甘っちょろい考えで、テニスをやろうもしているなら、今すぐ帰れ!(ううっ。恐怖のあまり、悪寒もして来た……! お願いだから帰ってくれ!)」
「わ、分かりました! 私、(テニスを通して里見様とイチャイチャを体験したかったなんて)確かに甘かったですわ! 全力で里見様の愛を受け止めます!」
「っ……!(帰ってくれない……)」
俺の願いに反して闘志を燃やした西園寺はすっくと立ち上がり……。
ビシュッ!!
「ああっ……!」
「ボールをちゃんと見ろ!!」
バシッ!!!
「かはっ……!」
「ステップが遅い! ぼけっとするな! 帰れ!!」
「「あわわ……。里見……||||||||」」
「こ、浩史郎先輩……??」
「さ、里見先輩……(西園寺先輩が怖いから、本当に帰って欲しいのね……)」
周りで見ている皆はドン引きしている様だったが、俺にそんな事を気にする余裕はなかった。
バッシーン!!!!
「ああっ……! もう、ダメですわっ……」
カラーン!! パサッ!
一際鋭いスマッシュを打ち込んでやると、西園寺はラケットを取り落とし、おさげを纏めていたリボンも解け、縦ロールの長い髪が風に靡いた。
「分かったか! 俺にコーチしてもらおうなんて、100年早いぞ!(もう限界だ! 後は他の奴に相手してもらってくれ!)」
「さ、里見様ぁっ!!」
俺は西園(西園寺)にそう言い捨てると、コートを去った。
「里見ぃ! お前、クールな奴だと思っていたが、本当は熱い奴だったんだなぁ!」
ガシッ。
「よ、よせよ!」
コートの外で、松平に肩を掴まれるも、俺はそれを振り払い、走って行った。
「ハハッ。何だ、あいつ……、照れ臭いのかぁ?」
背に松平の声がかけられたが、実際はそんな呑気な状況ではなかった。
ヤバい! 吐きそうだ。早くトイレ!!||||||||
*あとがき*
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