軟式テニス部 夏合宿への潜入者
お盆直前の8月●日──。
シェアハウス管理人の杉田さんに見送られる中、俺はウキウキしている様子の宇多川とりんごと共に、軟式テニス部の夏合宿に出掛けた。(流石に黒川さんまでは参加出来ず、何かあったらすぐ駆け付けられる場所で待機となった)
軟式テニス部は、部員の人数が少なく、活動実績に乏しい事もあり、夏合宿として、学校の宿泊施設をお盆直前の1泊しか取ることが出来なかったらしい。
「これでは、夏合宿が盛り上がらないだろうが!!」
時期柄もあり、ただでさえ部員が少ない中、来られない者も二人程いて、熱血部長の松平は悔しがっていた。
そしてその思いをぶつけるかのように、ヤル気がある部員と判断されてしまっていたりんごは、またも集中特訓を受けていた。
「森野おぉ! フォームが乱れているぞぉっ!!」
バシッ!
「きゃいんっ!!」
「おい! 松平、他の部員の指導もあるんだから、いい加減に……」
へばって、コートに蹲っているりんごを見遣り、俺が窘めようとすると……。
バタバタバタ……!
「副部長、あそこです!」
「宇多川さん、ありがと! コラコラーッ!!」
宇多川と彼女に連れられた副部長の七瀬がこちらに駆けてきた。
「女子は私が指導するから、部長はあっちで男子に指導して! また辞める子が出たらどうするの!」
「七瀬……! うわっ。押すなって」
七瀬は松平を男子側のコートに追いやると、りんごに優しく話しかけていた。
「ごめんね、松平くんが無茶して。森野さんが頑張り屋さんのところすごく気に入っちゃってるみたいで」
「ハッ、ハッ。い、いえ。私も初心者なんで、指導して貰えるのは有難いです!」
りんごが荒い息ながらも、立ち上がりそう言うと七瀬さんは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「そう言ってもらえると有難いよ。一緒に頑張ろう! 夏合宿の間は、夜のミーティング以外女子だけで活動するから安心して? 困った事があったら私に言ってね?」
「はい! 七瀬先輩!」
女子の方は七瀬も面倒見てくれそうだし、人間関係はなんとか大丈夫そうだな?
俺が様子を見守りホッとしていると、宇多川がこちらを睨んで来ている事に気付いた。
「女子は女子で活動します(りんごは私達が守ります)から、里見先輩も、男子側のコートへどうぞ!」
「チッ。分かってるよ!」
相変わらず俺を邪魔者扱いする宇多川に俺が顔を顰め、移動しようとすると……。
「おおっ。君は見ない顔だな! 新入部員か?」
「ええ、そうですわ……、そ、そうです。軟式テニスに興味がありまして、特別に顧問の先生に頼んで、合宿に参加させてもらうようにお願いしましたの……、じゃなくて、お願いしました」
ぐるぐるメガネをかけ、縦ロールの髪を無理矢理おさげの三つ編みにしたようなような女子が松平に話しかけられていた。
「んん?」
自信満々で答えようとして、語尾だけ自信なさげなのにかなり違和感があるし、
何だかどこかで見たような……。
「何、あの人……?」
隣にいる宇多川も不審そうに首を傾げている。
「えっ。新入部員なんて、聞いてないけどな……」
七瀬が首を傾げると、その女子は、書類を突き出した。
「これが、合宿許可書類のコピーになります。ちゃんと、保護者と顧問のサインもあります」
「二年の西園マリリンさん……? 確かに、書類はあるみたいだけど……、二年生に西園さんなんて、いたかしら??」
「まぁ、書類もちゃんとあるんだし、細かい事はいいじゃないか! 新入部員は大歓迎だぞ! 部長の松平だ!これから一緒に頑張って行こうな!」
「え? あなたが部長? はぁ……、私は、あなたより……」
部長の差し出した手を女子はスルーし、周りをキョロキョロし出し、俺と目が合うと、ギラリと目を光らせた。
「あ、あの方に指導してもらいたいですわ!」
「うっ?!||||||||」
そう言われ、その女子に、指を差された途端、俺の腕にぶわっとサブイボが出現した。
ううっ。この悪寒。間違いない。
変装しているけど、こいつはきっと……。
「「「??」」」
「……!(西園寺先輩ね……)」
その場にいた松平、七瀬、りんごが呆気にとられる中、宇多川が口パクで呟いた。
*あとがき*
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