親友と見る夢《宇多川夢視点》
里見先輩に襲われた場面をりんごに目撃させ、二人を引き離す画策は、ボディーガードの黒川の発言によって、あえなく失敗。りんごは画策をした事以上に私の身を案じて怒られてしまった。
泣きながら謝るとりんごは許してくれ、落ち込む私に今日は一緒に寝ようと提案してくれた。
「眠れるまでトントンしててあげるね?」
りんごの提案に、りんごの妹弟・柿人くん苺ちゃんのような小さい子扱いをされ、こそばゆく思った。
けれど、悪い気はせず、規則正しいりんごの手のリズムにしばらく身を委ねていたのだけれど……。
トン、トン……パタッ……。
「え?」
「んんっ……。すかー。すぴー。」
5分もしない内に手の動きは止み、代わりに規則正しい呼吸音が聞こえて来たので、私は呆れて身を起こすと、親友は安らかな微笑みを浮かべてすっかり寝入っていた。
「もう、自分が先に寝ているんじゃない! りんごったら……」
「あぁっ……、夢たん……、浩史郎へんぱいにそんなに大量のピーマンを食べさせちゃっ! エヘヘ、もっとやっちゃえ〜!」
「どんな夢見てるのよぅ。全く!」
ムニッ。
私は呑気な親友の頬を軽く抓ってやった。
「うへへへ……」
親友の寝言(笑い声)を聞きながら、私はため息をつく。
「まぁ、焦る事はないのよね……」
浩史郎先輩との距離の近さは心配だけど、さっきみたいな短絡的な計略を仕掛けるのは逆効果だ。
黒川にも負担をかけてしまうし、問題行動を起こせば、私はすぐに宇多川家へ連れ戻されてしまうだろう。
風紀委員はしばらく大人しくしててくれるだろうし、夏休み中は私も監視出来るし、数日後に予定されているテニス部の合宿の間は女子で行動するし……。
ウンウンと頷き、不意に里見先輩の言葉が浮かぶ。
『宇多川は、ずっとそうやって、りんごに近付く男を排除し続けるのか? りんごだってバカじゃない。自分で物事を判断出来るさ。りんご自身が望んでいないのなら、それは、宇多川のエゴじゃないのか?』
「なんであいつにそんな事言われなくちゃいけないのよ」
私は眉間に深い皺を寄せた。
りんごは魅力のある子だから、いつかはまともな男と結ばれる日が来るかもしれない。
でも、それは里見先輩じゃないし、今じゃない筈……。
中学時代に男子にあんな思いをさせられて、高校に入ったら今度こそ私と楽しい学生生活を送りたいって言ってたりんご。
「そんなりんごを私が守ってあげるのは親友として当然成すべき事で、エゴなんかじゃないわよね?」
「んごー……。すぴぴ……」
その寝顔に問い掛けると、親友はいびきをかきはじめた。
まさか、それから、安全だと思われた夏合宿をきっかけに全てを覆すような事態が起こるとは、夢にも思わなかった……。
*あとがき*
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