西園寺の爪痕
りんごとの共同生活を守る為、風紀委員会の査察で西園寺らをうまくやり過ごそうと体を張ってジゴロ接待をした俺だったが……。
長年ストーカーをされ、近付かれると蕁麻疹が出るほど苦手な西園寺を相手に少々無理をし過ぎてしまったらしい。
彼女らパーソナルスペースを侵され、風呂場に監視カメラを仕掛けられたダメージで寝込むという情けない結果になってしまった。
遅く起きた翌日、恐る恐る階下に下りると、床の掃除をしてい管理人の杉田さんに会い、西園寺達は既に帰った後だと聞かされた。
深く安堵すると共に、俺にあれだけ執着していた西園寺達が部屋に押しかけてくるでもなく、大人しく帰って行った事に違和感を感じながらも、すぐに食事を出すからと杉田さんに勧められるまま、リビングへ向かうと……。
「査察、上手く行ってよかったね〜。流石夢ちゃん!」
「ええ。あの人達、これでしばらく大人しくしてくれるといいけれど……」
りんごと宇多川が凱旋後のような晴れやかな雰囲気で語り合っていた。
「あっ。浩史郎先輩、おそようございます! もう体調はいいんですか?」
「ああ、それより、西園寺があっさり帰ったみたいだけど、宇多川は何かやったのか?」
嬉しげに声をかけて来たりんごに問うと、彼女と宇多川は気まずそうに顔を見合わせた。
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「ハフッ! なるほどな……。西園寺達にウイスキーボンボンを食べさせて、酔い潰した上、カマトトぶって謝罪する振りをして脅迫して、撃退したと……。宇多川は相変わらずやる事がえげつないな」
杉田さんに出してもらった昨日の夕食のビーフシチューを堪能しながら、二人の話を聞いて眉を顰めると、宇多川は肩を竦めた。
「何とでも言って? 手段なんか選んでいられないわ。あの人達、難癖をつけてりんごを追い出して、私も玉突きで追い出して、このシェアハウスに入り込む計画を立てていたのよ?」
「ひっ……!|||||||| 嘘だろ?!」
宇多川に知らされた恐ろしい計画に怖気が走った。
一日でもこんな有様なのに、西園寺
達とシェアハウスで一緒に生活とか死んでもあり得ない!
そもそも、りんごと一緒にいられないなら、俺がシェアハウスにいる理由もないのだが……。
「私が原因で風紀委員会の査察を受ける事になったのに、浩史郎先輩は体を張って、夢ちゃんは自分の名誉を傷付ける危険も冒して力になってくれてありがとう! 二人に何か困った事が起こったら、私がどんな事でもして力になるから!」
「「りんご……」」
りんごは、凛とした瞳でそう告げ、俺と宇多川の心を打ったのだった……。
✽
「りんごの奴め……。思考がさっぱり読めないくせに、時々こっちの懐に真っ直ぐ入ってくるような事言うんだよな……。しかし、この状況、どうにかせんとな……」
俺は頭を掻いて独りごちていた。
風呂場の脱衣場にて……。
汗をかいたためシャワーを浴びようとここへ来たものの、着衣のまま、もうかれこれ1時間ほどここにいる。
脱衣場に仕掛けられた携帯は取り除いたし、他に盗聴器や監視カメラはない事を黒川さんが確認してくれた。
だが、ここら一帯に西園寺の邪な怨念が残っているように感じ、精神的にストップがかかってしまい、服を脱ぐという行為に移れないのだ。
「くそっ。情けないな……」
俺が冷や汗を垂らして座り込んでいると……。
コンコンコン!
「!」
突然、脱衣場の戸口が叩かれ、俺は肩をビクつかせた。
「浩史郎先輩、大丈夫ですか? 風呂から、なかなか戻って来ないようなので、ちょっと心配で……」
りんごの声が響き、俺は安堵して立ち上がり、戸口を開いた。
「よかった、浩史郎先輩! 風呂が終わった……わけじゃないみたいですね……?」
りんごは一瞬明るい表情に……、そして俺の覇気のない様子を見て、微妙な表情になった。
「あ、ああ……。ちょっと、トラウマで、なかなか服を脱げなくてな……。ハハ……」
またも想い人の前にこんな姿を晒してしまい、気まずい思いでいると……。
「……! 大丈夫です! 浩史郎先輩、私がどんな事でもして力になるから!」
「な、なん……だとっ……?」
力拳を作り先ほどの言葉を再びそう言い放ったりんごに俺は慄いた。
りんごっ……!
一体ナニをしてくれる気なんだっ!?
*あとがき*
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