風紀委員の査察 ④ 〜風紀委員の画策とその顛末〜
風紀委員に盗撮されそうになり、心に傷を負った浩史郎先輩が、2階の自室で休んでいる間に、私&夢ちゃん、風紀委員幹部の三人は、管理人兼厨房スタッフの杉田さんが腕によりをかけて作ってくれたビーフシチューを夕食に頂いた。
シェアハウス改装後の数日間程、私、夢ちゃん、浩史郎先輩は杉田さんの食事を頂いていたけれど、長年、寮の厨房に入っていたという杉田さんの料理はどれも味が良く、栄養バランスも取れていたけれど、今日のメニューは格別に美味しかった。
豪華な食事に慣れているであろう風紀委員の面々も、この料理には頷き合い、満足げに食べていたので、査察では、かなりの高評価が期待されるところだ。
食事の後、風紀委員と私&夢ちゃんはリビングに残り、皆で持ち寄ったお菓子をつまみながら、査察について話し合う事になった。
西園寺先輩は、夢ちゃんの持って来てくれ高級チョコを気に入ったようだった。
「モグモグ。あら。このチョコ、なかなか美味しいじゃない」
「はい。先日ヨーロッパに旅行に行った時のお土産です。沢山召し上がって下さい。それで、査察の感触としては、どのようになっていますでしょうか……?」
「シェアハウスについての現段階の評価について気になるのね……」
向かいの席につく西園寺先輩は、右隣におさげの桜井先輩、左隣にメガネをかけた友達先輩を従え、査察に関する書類を確認しながら、厳粛な面持ちで私達に結果を告げた。
「施設の設備については、狭いながらも新しく、使いやすく、また清潔に使われていると確認出来ました。管理人がいる事、個室に鍵がついている事はセキュリティの面からもよいでしょう。よって、B判定。
食事については、栄養バランスも取れていて、味も良かったです。よってA判定。
施設そのものについてはほぼ問題がないでしょうね」
「! よかったぁ!」
「! きっと気に入って頂けると思っていました」
その言葉に、私と夢ちゃんはホッとした顔を見合わせたのだけれど……。
「ですが……。シェアハウスの入居者に問題がないかどうかという事も大事なポイントかと思われますの……。里見様は、美しさ、品、どれをとっても素晴らしく問題などありよう筈もございませんが……、問題はあなた方です」
「「!!」」
どこから取り出したのか、西園寺先輩は、高級そうなファーの付いた扇子をビシッと私と夢ちゃんに向けて来た。
「ここは、男女共同のシェアハウスです。周りの人を惹きつけてしまう里見様に対して邪な気持ちを起こして、不相応に親密な態度を取って迷惑をおかけしていないか、しっかり調査しないといけませんわね〜」
「特に、森野さんは里見様と買い物デートへ行った疑惑が出ていますから、念入りに調査しませんと……」
「ふさわしくない行動が認められれば、学園の風紀を乱すとして、シェアハウスを出て行って頂く事も検討しませんと……」
「ひっ……||||||||」
風紀委員の方々の攻撃の矛先が、明らかに私に向いて来て、怯えていると、隣の席の夢ちゃんがきっぱりと否定してくれた。
「りんごは、そんな事しません!(逆に里見先輩は危ういだろうけど……)以前は家事をしなければいけない関係で、一緒に買い物に出歩く事もあったでしょうが、今は管理人さんに炊事などの家事を担って頂いてますから、もうそんな事もありません。
シェアハウスの改装後は、見ての通り男女で個室も浴室も一階二階に分かれていますから、りんごはほとんどの時間、私と過ごしていて、里見先輩との接触はほとんどありません! ねっ。りんご?」
「う、うんっ。ずっと夢ちゃんと百合百合しています! 里見先輩とは、ほとんど話さないです!」
夢ちゃんに同意を求められ、私は赤ベコ人形のように必死にコクコクと頷いていると……。
「そう……。森野さんは里見様と親しい接触はないとそう言われるのね……?」
「はい。そうですっ……」
閉じた扇子を顎に当て、流し目の西園寺先輩に私は自信を持って返事をしたけど……。
「なら、この髪の毛は一体なんでしょう……?」
「へっ」
西園寺先輩は、少し茶色がかった一本の髪の毛(多分私のもの……かな?)が白いハンカチに包まれているのをテーブルの上に置いて見せて来た。
「これは、里見様のお部屋で本棚の前に落ちていたもの。長さと色から言って、森野さんのものに間違いないですわよね? これは一体どういう事でしょう?」
「うっ……!||||||||」
西園寺先輩に昏い瞳で追求され、私は思わず言葉に詰まった。
そ、そうだ……! 夢ちゃんがシェアハウスに来る前、浩史郎先輩のお部屋に『宇宙英雄伝説外伝』を借りに行ったんだっけ。
風紀委員会にそんなところまで、チェックされていたなんて!
ど、どうしよう……?
*あとがき*
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