風紀委員会査察 対策会議
「何を言っているんだか、分からないんだが?」
宇多川とりんごの突然の百合宣言に、りんごの許嫁である俺は到底承服できかねず、恐らく発案者であろう宇多川をギロリと睨むと、彼女は腕を組み、挑戦的な笑みを向けて来た。
「里見先輩、何を怖い顔をしているのかしら? あくまで、これは明後日に迫る風紀委員会の査察に対する作戦よ」
「作戦だぁ?」
その真意を訝しむ俺に、りんごは笑顔で説明する。
「そうなの。浩史郎先輩。西園寺先輩含む、風紀委員会の査察では、私と浩史郎先輩の仲がふしだらなものじゃない事を証明しなければいけないでしょ?
査察の間、夢ちゃんとイチャイチャして、浩史郎先輩とは適切な距離を取れば、納得してくれるのじゃないかって」
「プラス、風紀委員メンバーは、査察を通して憧れの里見先輩の私生活に触れる事も目的の一つ……いえ、大半でしょうから、存分に満足させて差し上げてね? 西園寺先輩には特に!」
「げっ!」
西園寺達相手にジゴロ接客をしなければならないと宇多川に告げられ、俺はサブイボが立った。
「あらあら、百合に挟まる男は地獄ならぬジゴロ行きって事なのね?」
「なるほど……! いい得て妙な作戦ですね」
杉田さんの感想に感心したように頷く黒川さん。呑気な大人二人のやり取りに俺は突っ込んだ。
「いや、杉田さん。言い方! 黒川さんも納得しないで下さいよ!」
そして、宇多川に渋い顔を向けた。
「お前の作戦概要は分かった。出来るだけの協力はするが、俺は、西園寺にストーカーされつづけたトラウマで、奴と同じ空間にいるだけで過呼吸になりそうなんだ。限界を感じたら俺は逃げるからな!」
「チッ。軟弱な男ね……!」
「浩史郎先輩……! 査察の為にそこまで体を張って……」
体を震わせて、正直に逃げる宣言をする俺に、宇多川は舌打ちし、りんごはホロリと涙を零した。
「お前も、財閥令嬢なんだから噂が立つと困るだろう? 百合作戦とやらも過激なのはやめておけよ?」
「むっ。あなたじゃないんだから、変な事はしないわよ!」
「はい。里見様、そこは、ご心配ないかと。万一そのような事態になりましたら、この黒川、責任を取る覚悟です」
釘を刺す俺に宇多川だけでなく、黒川さんからも返答が得られた。
よし、これでこちらからも牽制が出来た。
俺を嫌って、隙あらばりんごから引き離そうとしてくる宇多川の事だ。
査察期間だけでなく、夏休みの間ずっと、俺がりんごに接近するのを阻止しようとしてくるだろう。
だが、宇多川め。そうはいかないぞ。
取り敢えず、査察はなんとかやり過ごすにしても、その後はなるべく早くりんごと心を通じ合わせて、しかるべき時に許嫁として公表する。
「え、えっと……。二人共、協力体制を取ってるんだよね? 対立してないよね?」
睨み合う俺と宇多川に、りんごはタラリて汗を流し、杉田さんは全てを包み込む笑顔でパンと手を叩いた。
「まぁ、色々複雑そうだけれど、明後日はここを査察する女生徒が三人来るのよね? 腕によりをかけてご馳走を作らなきゃ!」




