改装後のシェアハウス 〜早速の訪問者〜
久々に戻って来たシェアハウス──。
これからは、管理人常駐となり、他に数名分、シェアハウスを利用できるようになるらしいし、りんごと二人きりの時間はこれまでよりは減ってしまうかもしれない。
それでも、改装中は用事を作らなければ会えなかった猫のような許嫁が今、俺の隣にいる。
「それでねっ。特捜戦隊ものは、ピンクやイエローなど大抵女の子役がいるじゃないですか。
私、仮面◯イダーにも女の子バージョンを作ったらどうかと思って、いーちゃんに相談したんですよ。
そしたら、「女の子が複眼のヒーローになりたいわけないでしょ? りんごちゃん、本当にお子ちゃまなんだからぁっ……」ってため息つかれちゃったんですよ。浩史郎先輩はどう思います?」
「うん。苺ちゃんが正しいだろうな」
例え、きらきらした笑顔で語っている内容がこんなものでも、俺はりんごといられる時間をかけがえのないものと感じていたのだ。
「たはは……、そうですかぁ……。制作側に要望を出してみようと思ったのですが、止めときます……。ううっ。ヤケ飲みっ! ぷはっ!」
りんごは苦笑いでペットボトル飲料をグイ飲むと、途中で頬に手を当てて驚いた。
「あれ?りんごメロンソーダ、後からメロンの味もする! 不思議な美味しさ〜!」
「ああ。そう言えば、二つの味を楽しめるって宣伝文句に書いてあったな。このコーヒーもコンビニのものにしてはかなり美味しいぞ?」
「でしょう? その、午後のエクセレントコーヒー。いい豆を使ってるんです」
相手に買って来た飲み物を気に入られ、ドヤる俺達、お互い似たもの同士でお似合いなのではないか?と、ニヤニヤしていた時……。
ピンポーン!
「こんにちは。 杉田でございます!」
「「!」」
外で、年配の女性の張りのある声が響いた。
「来たみたいだな……」
「そ、そうですね……。どんな人でしょうか」
いよいよ、シェアハウスの管理人が到着して、俺とりんごは緊張しながら玄関先に向かった。
✽
「今日から管理人として住み込みでお世話になります杉田かほると申します。以前は息子が大したお役立ちも出来ず、大変失礼致しました。
その分も精一杯努めさせて頂きますので、里見様の坊ちゃま、許嫁の森野様。、今後どうぞよろしくお願い致します。」
「「よろしくお願いします……」」
白髪混じりのショートヘアー、上品な藤色のワンピース姿のその女性に、綺麗な所作でお辞儀をされ、俺とりんごも丁寧に頭を下げた。
杉田かほるさんは、最初にこのシェアハウスを案内してくれた杉田さん(他の学生寮に常駐している為、会ったのはこの時だけ)の母親で、昔は一時期、母方の実家にメイドとして働いていた手伝いに来てくれた事もあったらしい。
その後、学生寮の寮母をしていたが、一度体調を崩してからは息子に仕事を引き継いで引退していたのを、昔の縁もあり管理人を頼む事になったとか……。
「立ち話も何ですから、まずは、お茶をでも飲みながらゆっくりこれからのお話をしましょうか。お台所をお借りしてもよろしいですか?」
杉田さんが目尻に皺を寄せてにっこり笑うと、俺とりんごは慌てて彼女を台所まで案内した。
「あっ。ハイ。もちろん」
「こちらです。どうぞどうぞ」
✽
そして15分後──。
「というわけで、改装後、二階に洗面所、トイレ、バスルーム、一階に部屋を増設しまして、それぞれの部屋に最低限の家具を入れ、一階に二部屋、二階に二部屋が学生用の部屋として利用できるようになったそうです。 私は、しばらく一階の一部屋にご厄介になります。
森野様、坊ちゃまは今まで通りの部屋をお使い下さいね?」
「「はい」」
俺達はテーブルの席で改装後の家の間取り図を見せられ、杉田さんの説明を受け受けていた。
「二階にも風呂が出来たのは助かるな」
「女子と男子で洗面所バスルームを分けられれば、気を使わないですみますね?」
テーブルに、俺とりんごは顔を見合わせて頷き合った。
「ふふ。この年であなた方のように若い方達と関われるなんて楽しみだわ。
さぁさ、お茶と和菓子もどうぞ?」
「ありがとうございます。ずずっ……(管理人さん、どんな人かと思ったけれど、感じのよい人じゃないか?)」
「ありがとうございます。ムグムグ……。ん〜! どら焼き美味しいでふっ(ええ。好意的で優しそうな方です。よかった〜)」
杉田さんに、にこやかに勧められ、俺とりんごが彼女が挨拶にと持って来てくれたお茶と和菓子を堪能して、彼女に対する第一印象を目で会話していると……。
コトッ!
「あれ? もう一人分?」
「他に誰か来るんですか?」
りんごの向かいの席にもう一皿和菓子を置いた杉田さんに、俺達が尋ねると、彼女は笑顔で答えた。
「ええ。本当は数日後の入居予定だった学生さんが、予定を繰り上げて今日、これからすぐにいらっしゃるそうですよ?」
「「え。それって……!」」
俺はげんなりと、りんごは期待に顔を輝かせた時……。
ブロン………! キキッ。
ピンポーン!
「あら、いらっしゃったかしら?」
家の近くに高級車が止まる音がして、すぐに玄関のチャイムが鳴り、杉田さんが応対すると……。
『お忙しいところ、すみません。この度学生寮にお世話になる事になりました宇多川夢です』
インターホンから、利発そうな少女の声が凛と響いたのだった。
*あとがき*
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