番外編 疑惑の浩史郎③
「おはよう、りんご……あれっ? もう出るのか?」
「こっ、浩史郎先輩、おはようございます!」
いつもの時間に支度を終え、一階に降りていくと、すでに完璧に支度を終えたらしいりんごが、家を出ようとしているところに行きあった。
俺を見た途端、りんごは慌てた様子で声を上擦らせた。
「いやぁ、爽やかな朝ですね〜。私、ちょーっと、用事がある事を思い出しまして、今日は先に学校行きますね〜」
「あ、ああ。そうなのか? それはいいけど……」
爽やかな朝? 空はかなり曇り気味だが……。それに、心なしかりんごの目の下にはクマが出来ていて、疲れて見えた。
俺が戸惑って目をパチクリさせていると、りんごは一瞬俺に物言いたげな表情になった。
「あの、浩史郎先輩……」
「ん?」
「い、いえ、やっぱり何でもありませ〜ん! 朝食とお弁当はリビングテーブルに置いてありますのでっ! で、ではっ!」
「あ、うん。行ってら……」
バタン!
俺が言い終わらない内に、森野は逃げるように家を出て行った。
「なんだ、あいつ……」
様子のおかしなりんごに、俺は首を捻った。
以前のようにホームシックにかかったわけでもあるまいに、何だろう?
そう言えば、昨日の夕食の時もあまり喋らなかったっけ。
昨日は、森野は苺ちゃん柿人くんを連れて映画を見に行って、かなり上機嫌だった筈では……?
俺、何か失敗したか?
意外に仮面◯イダーの映画が大人も楽しめる作りになっていて、その話で柿人くんと盛り上がってしまったが、りんごはニコニコしていたよな……。
帰りは、改装工事の業者から連絡が入り、急遽家に戻らなくてはならなくなった為、妹弟を一緒に実家には送って行けなかったけれど、それは特に怒っていなかったし……。
まさかとは思うが、柿人くんにりんごの写真を貰った事、バレてないだろうな?
いや、でもそれなら、りんごの性格ならすぐに怒って返せと言って来そうなものだ。
結局疑問は解消されないまま、支度をして学校へ向かったのだが……。
✽
「!?」
下駄箱を開けると、水色の封筒が入っていた。
手に取ると、背面に「里見浩史郎様」と宛名が書いてある。どこかで見たような筆跡だった。
青い桜型のシールで封のしてあるそれは、明らかに女子からのものだった。
ラブレター…か?
中学の頃から、こういう事がしばしばあったので、そこまで驚きはしないが、今、俺は二股事件が発覚した後で学園内の評判は頗る悪いはず。
一体誰がこんな手紙をよこしたのだろうか?
思い当たるのは、風紀委員会の女子……西園寺とか……?
と考えて背筋がゾワッとなった。
うっお、怖いな、コレ。開けた途端に催眠ガスが発生して、西園寺に拉致監禁されるとかないだろうな?
俺は口と鼻を抑えながらこわごわと封筒を開けると、中から数枚の便箋が入っており、一枚目の便箋を広げてみると、こんな文面が目に飛び込んできた。
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浩史郎先輩
突然こんな手紙を書いてすみません。
気になっていながら、どうしても、顔を合わせてはお伝えしにくい事がありまして勇気を出して手紙にしたためてみました。
ご都合のよいときにお返事を聞かせてもらえると嬉しいです。
森野 林檎
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!!!!
俺はバクバクしている胸を押さえて何回か深呼吸をした。
嘘だろ??
まさかのりんごからのラブレター…!?
いや、待て落ち着け!こんなうまい話がある筈ない!
もしかしたら西園寺の策略という事も…。
でも、よく思い返してみると、この筆跡は以前りんごにもらった文房具に添えられていたメッセージカードや、買い物メモなどで目にしたものと酷似している事に気付いた。
もしかして、様子がおかしかったのは、俺への想いを自覚して、ぎこちない態度になってしまったからとか?
俺は震える手で一枚目の便箋を二枚目の便箋の後ろに重ねて、注意深く文字を追って行った。
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浩史郎先輩、言い辛いことかもしれませんが、正直に答えて下さい。
あなたは小学生に興味のある変態さんですか?
もしそうなら何才から対象範囲か教えて下さい。
女の子だけでなく、男の子もイケる感じですか?
私、もうその事が気になって気になって夜も眠れません。
私が卒倒しないようにソフトな言い方で教えてくれると有り難いです。
どうか、どうかお願いします。
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俺は手紙に書いてある事の意味が全く分からず、その場に崩れ落ちた。
*あとがき*
いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
今後ともどうかよろしくお願いします。




