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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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番外編 疑惑の浩史郎①

※ 第27話以降、第57話の前(風紀委員弾劾裁判の騒動以降、夏休みに入る前)に入る番外編になります。


今回、番外編を入れるにあたって、第65話 「りんご母の協力」で、りんご母の発言を一部変更させて頂きましたので、ご了承頂けますと有難いです。


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


 夏休み前のとある日――。


「ええっ、そうなんだ! お見舞い行こうか?」


「?」


 キッチンでコーヒーを淹れていた俺は、りんごが居間の電話で家族と深刻そうに話しているのが聞こえ、目を遣った。


「そう? それ程でないならまだよかったけど、お大事にって伝えといて? いーちゃん、かっくんは残念だったね〜。うん。また、連絡して? じゃ、また……」


「どうした?何かあったのか?」

「あっ、浩史郎先輩……。実は……」


 電話を切ったりんごに、聞いてみると、彼女は浮かない表情で事情を話した。


 森野家は次の休日にショッピングセンター内にある映画館に行く予定だったのだが、お父さんが風邪を引いてしまい、延期になってしまったのだという。


「いーちゃん、かっくん、映画に行くの指折り数えて楽しみにしていたので、可哀想で……」


 双子の妹弟の事を想い、しょんぼりしているりんごに俺は言ってみた。


「それって、俺達が連れて行っちゃだめなのか……?」

「え?」


 妹弟も一緒だが、一応りんごと外へ出かける口実が出来る。

 映画を見ながらデート気分を味わえるかもしれないし、りんごの実家の力になれ、りんご、ご両親の評価ポイントも上がることだろう。


 そんな打算の元に提案したのだが、りんごは驚きながらも期待に目を輝かせた。


「えっと、いいの……?」


 俺がにこやかに頷くと、りんごは実家に電話をかけ直し、許可を取り、次の休日に、りんご(&妹弟)と映画デートをする事が決まった。


 これにより、恐ろしい疑惑を生むことになろうとは、この時は考えもしなかった……。

        ✽


 そして、迎えた次の休日――。


 俺、りんご、苺ちゃん(りんご妹)、柿人くん(りんご弟)は、ショッピングセンター最上階の映画フロアに来ていた。


「「仮面◯イダー/アイ◯ツ楽しみ♪」」

「二人共、よかったね〜」


 嬉しそうに拳を震わせる苺ちゃん、柿人くんをりんごは微笑ましく見遣り、俺には感謝と申し訳なさのないまぜになったような眼差しを向けて来た。


「浩史郎先輩。せっかくの休日に付き合わせちゃってごめんなさい。二人共見たいものが違ったから、私一人じゃ連れていけなかったんで有難いです!」


「い、いや、構わないさ。俺も気分転換したかったし(ああ〜、映画中りんごとは別れてしまうのか……)」


 映画デートっぽいシチュエーションを期待していた俺だが、柿人くんは、仮面◯イダーDX、苺ちゃんは、アイ◯ツと見たい映画が違ったらしい。


 それぞれ俺達が一人ずつ付き添い、柿人&俺と苺&りんご、映画中は別れる事になってしまい、内心は大分がっかりだった。


「ごめんね。お兄さんと一緒にデート気分もよかったんだけど、今回は女の子同士でキャラのコーデの話で盛り上がりたいかなって」


 そう言ったのは、苺ちゃん。


「お、おう。そうか。今回は残念だけどまた今度ね」


 俺が引き攣り笑いをしていると、隣のりんごが笑っていた。


「ふふっ。いーちゃんは、女子力高いなぁ」


 全くだ、姉も少しは見習えよ?


「女子力がなんだよ! 男ならやっぱり仮面◯イダーだよな? 浩史郎、DXは今までの話知らないと難しいから、後で時系列別のエピソードを教えてやるよ」


「あ、ありがとう、柿人くん。わ、わぁ、楽しみだなぁ」


 柿人くんは仲間意識を持って熱く語ってくれたものの、特撮ものに特に興味のない俺には正直共感出来かねたが、取り敢えず話を合わせた。


 それから程なくして、映画館の入口で、係の人の指示に従って、アイ◯ツの映画に並んでいた人の列が動き出したので、りんごと苺ちゃんは俺達に声をかけた。


「あっ。もう中に入れるみたい。じゃあ、時間になったので、先に行きますね? すみませんが、かっくんの事よろしくお願いします。

 かっくん、浩史郎先輩の言う事きちんと聞いてお利口さんにしててね?」


「おう。任せておけ」

「はいはーい」


「行ってきま〜す」

「行ってらっしゃい。楽しんで来てね?」

「行ってら」


 アイ◯ツの映画の方が若干時間が早い為、先に入場していく二人を見送り、俺は柿人くんと二人になった。


 う〜ん。これからどうしよう? あんまり子供の扱いに慣れていないんだが……。


「ちょっと、あそこ見て来る!」


 俺が戸惑っている内に、柿人くんは、映画の入口とは逆方向へスタスタと歩き始めた。


「え? あ、おい。柿人くん?」


 俺が慌てて追いかけると、彼はグッズやパンフレット売り場で目を輝かせていた。


「へ〜。いっぱいグッズ出てるんだなぁ!パンフレットは、ステッカー付きか〜」


 チラチラッ。


 う。この流れは何か買ってくれっていう事か?


「柿人くん、もうすぐ、映画館入る時間だよ?」


 苦笑いでそんな言葉をかけた時……。


「浩史郎。コレあげるよ」

「へ? ……!!」


 柿人くんの小さい手から、何枚かの写真を差し出され、俺は目を剥いた。


 それは、小学生の女の子がランドセルを背負ってにっこり笑っている写真、海でビーチボールをしている写真、そしてセーラー服を来た女の子が中学校の前でピースをしている写真――。


 どれも、りんごそっくりの容貌の女の子が映っている。


「へへ、りんごの写真、お家のアルバムからくすねて来たんだ」

「ええっ! 何してるんだよ?」


 してやったりといった顔で見上げてくる柿人くんに俺が驚いていると、彼は更に衝撃的な事を告げて来た。


「りんごのどこがいいか分かんないけどど、好きなら欲しいだろ? この前、浩史郎ん家のプールで転んだ時、りんごのおっぱい見て、嬉しそうな顔してたの俺、知ってる!」


「……!! ||||||||」

 

 見られていた……! そう言えば、庭のプールで、柿人くんが転んだ勢いでりんごの水着を捲ってしまってから、一瞬縁側の俺の方を見たような気がしたんだよな……。


「その事も写真の事も言わないから、映画のパンフレット買ってくれない?」


 ニヤリと笑い、こちらを見上げてくる柿人くんに……。


 むむっ。あの姉にして、この弟ありだ。これは、きちんと言い聞かせなきゃいけないなと、俺はため息をついた。


「柿人くん、こういうのは、よくない。人を脅したり、勝手に家族の写真を取引材料に使って、物を買わせようとするのは絶対ダメだよ?」


「……! ごめんなさい……」


 人差し指を突き付けて、険しい表情で俺が言い聞かせると、柿人くんは、ハッとした表情で謝って来た。


「分かった。もうこんな事しないよ……」


 柿人くんがしゅんとして、写真を引っ込めようとした瞬間、俺はその手をガシッと掴んだ。


「え? 浩史郎……?」


「いや、まぁ……、ハハッ。せっかく持って来てもらった物だし? 戻すのも大変だろうからそれはもらっておくよ」


「あ、うん……。??」


 早口でそう伝え写真を素早く受け取ると、柿人くんは、目をパチクリとさせた。


「じゃ、映画のパンフレット、買いに行こうか?」


「え、でも、さっき……」


 戸惑っている様子の柿人くんに、俺は安心させるように言ってあげた。


「いやいや、元々柿人くんに買ってあげたいと思っていたんだよ。おっ。映画用に色々グッズが出ているんだなぁ。何か欲しいものあるかい?」


「え、えーと……。あ、このライト付きキーホルダーカッコいい!」


「じゃぁ、それとポップコーン一緒に買いに行こうか?」


「うん! ありがとう! 浩史郎!」


 ぴかぴかの笑顔になる柿人くんに、俺も心からの笑顔を浮かべた。


 ハッハッハッ。子供って案外素直で可愛いじゃないか。


 俺は上機嫌で、りんごの写真を手帳に挟み、大事にしまい込んだのだった。




*あとがき*


 久々の投稿でありましたが、読んで頂きまして、ブックマークや、リアクション、評価下さって本当にありがとうございます

 m(_ _)m

 

 4話分番外編の後は、本編の続きに入っていきたいと思います。


 今後ともどうかよろしくお願いします。


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