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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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花火の終わりと永遠


「そうだ!頭キーンの刑!もうそれでいいよ。オラ、食え!」

「はぐっ。むぐむぐっ…!はうっ…!またキーン来たぁ!」


浩史郎先輩に、容赦なく口にかき氷を放り込まれ、私は涙目になってかき氷を噛み砕いていた。


ううっ…。前言撤回!全然大人になってなかったこの人…!


飼い主のくせに、猫の失言に容赦なさ過ぎでしょ!!


これは、彼女なんかしばらくできそうにないわ…。

猫としては、ご主人様の春がまだ遠そうな事を嘆いたらいいのか、近い位置にいてくれる事を喜んだらいいのか、私が複雑な気持ちになっていると…。



ドンッ!!ヒュルル…パアッ!!


「「…!!」」


突如、夜空に金色の光の花が広がり、わぁっと周りから歓声が上がった。


「うわぁっ…!花火、始まりましたね?」

「あ、ああ…。」


その光景に、興奮ぎみに話しかけると、浩史郎先輩は圧倒されつつ頷いている。


ドンッ!ドンッ!ドドンッ!!


パアッ!パアッ!パアァッ!!


「わあぁ…キレ〜!…!//」

 

空に映し出される赤や黄色、緑などの眩い光に目を奪われていると、不意に右手が温かい温もりに包まれた。


驚いて、手を握って来た隣の浩史郎先輩を見上げると、思いがけず真剣な表情をしていて、私は動揺してしまった。


「こ、こんな時も危機管理必要ですか?」

「いや?花火は人と手を繋いで見る習慣があるんでな…。」

「そ、そうなんですね…!」


さっき、出店を回る時手を繋いで来た理由と同じものかと思ったけれど、花火を見る時の習慣だったらしい。


ということは浩史郎先輩、ご家族と花火を見るときも手を繋いでもらっていたのだろうか。


お母さんである、理事長の手をギュッと握っている幼き日の浩史郎先輩を想い浮かべて何だかほっこりしてしまった。


「でも、こうしていると、花火の美しさをより分かち合える気がするかも…。いい習慣かもしれませんね。」


私は、視覚と聴覚で花火を、触覚で浩史郎先輩の大きな手を感じながら、浩史郎先輩のご家庭の習慣よき…と満ち足りた思いでウンウン頷いた。


浩史郎先輩といる時は、モヤモヤする事も多いけど、時々、こういう一緒にいられてよかったなと思う瞬間があって、全部を取り返されちゃうんだよな。


こんな事、いつまで続けていけるんだろう…。

私は遠い未来に思いを馳せ、繋いでいた手を強く握り返し、口を開いた…。


「浩史郎先輩、私…!……。」


ドオオン!ドンッ!ドンッ!

パアァッ!パアッ!パアッ!

「??今なんて…?」


私の言葉は花火の音にかき消されてしまったらしく、浩史郎先輩に聞き返され、いたずらっぽい笑顔を浮かべ舌を出した。

「ふふっ。何でもありません!浩史郎先輩の悪口を言っただけですよ〜。」


2度は言えませんよ。


『ムカつく事もあるけれど、今はまだ浩史郎先輩にとっての猫でいたい』


なんて…。


「何だと!またかき氷食わせてやろうかぁっ?」

「もう、全部食べさせられましたよ!

「ちっ!」


脅しをかけたものの、既にかき氷の容器は空になっているのを見て、浩史郎先輩は舌打ちをした。


「悔しかったら、浩史郎先輩も言えばいいじゃないですか…。」


「分かった。取って置きの罵詈雑言を言ってやる。」

「罵詈雑言のエキスパートである浩史郎先輩の取って置き、凄そう…!!」


私がゴクリと息を飲んだ時…。


ドオオンッ!


「「…!」」


大きそうな花火が打ち上げられ、その花が開きそうなタイミングで、浩史郎先輩は大声を上げた。


「りんご、その浴衣似合ってる!普通に可愛いっっ!!」

ポスッ…。


「…!!///」


ざわざわっ…。

「何?告白…?」

「高校生のカップル?」


花火の音に負けないぐらいの声を出したのに、その花火が不発だったものだから、思った以上に辺りに響いて周りの人の注目を集めてしまい、私も浩史郎先輩も真っ赤になった。


「こ、浩史郎先輩…!悪口じゃないじゃないですか!///」

「い、いや、褒め殺しという奴だ。///」


褒め殺し!そんな手法が!!確かに今のは悪口以上に大ダメージを与えられた。

まさかの捨て身の技にしてやられた悔しさに、私は文句をいっていた。


「それに、浴衣の感想、何で、今頃言うんですか?」

「君が言わせる隙を与えなかっただろっ?」


「も、もう…。皆に見られて恥ずかしい…。///褒めてくれるのは嬉しいですけど、ここでは注目を浴びてしまうので、悪口も褒め殺しもやめておきましょう?」

「わ、分かった…。///」


それからは、私も浩史郎先輩も無言でただ夜空に繰り広げられる光の乱舞を鑑賞していた。

繋いでいる手は最後まで離すことはなかった。


終盤、圧巻のスターマインの後、花火の終了を告げる一発の打ち上げ花火の光が空を覆い尽くし、その輝きがゆっくり消えて行くの見守ると、浩史郎先輩が名残惜しそうに呟いた。


「花火、綺麗だったな…。終わってしまうのが惜しい位だ…。」


確かにそうだと思った。


花火は毎年見ているけれど、今年の花火は格別綺麗だった。


終わって欲しくないと思うぐらいに…。


これからも花火は見るだろうし、その時の状況は今とは大分違っているかもしれない。


それでも、私の中で、今年の花火の煌めきが色褪せる事は決してないと思った。


「同感ですけど、花火は、終わりがあるからこそ、余計に綺麗に思えるんじゃないですかね?」


私が笑顔でそう言うと、浩史郎先輩は痛みを堪えているような表情になった。



ここまで読んで下さり、応援下さり、本当にありがとうございます!


夏編まだまだ続く予定ですが、以前お伝えしました通り、しばらくこちらの作品を休載させて頂きたいと思います。


ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。


来年夏頃には、再開させて頂きたいと思いますので、よければまた見守って下さると嬉しいです。


どうか今後共よろしくお願いしますm(_ _)m

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