花火の終わり
「えっと…。りんご、かき氷食わしてやろうか?」
思わず言ってしまった言葉に、りんごは悲壮な顔で頷いた。
「分かりました。やらかしてしまった罰に、またあの頭キーンの刑ですね?」
「ああんっ?」
「ひぃんっ!」
人のかき氷あ〜んを罰ゲームのように言われ、俺は拳を固め、りんごを怯えさせたが、
以前猫カフェで人を彼氏持ちの店員さんとくっつけようと勝手にその場を抜け出したりんごに、かき氷を一気食いさせた前科があった事を思い出し、渋い顔に、なった。
「そうだ!頭キーンの刑!もうそれでいいよ。オラ、食え!」
「はぐっ。むぐむぐっ…!はうっ…!またキーン来たぁ!」
やけになって、口にかき氷を放り込んでやると、りんごは涙目になってかき氷を噛み砕いていた。
ったく、夏祭りにせっかく男女が二人きりでどうして俺達はこうも甘い雰囲気にならないんだろうか…。
心の内にため息をついていると…。
ドンッ!!ヒュルル…パアッ!!
「「…!!」」
突如、夜空に金色の光の花が広がり、わぁっと周りから歓声が上がった。
「うわぁっ…!花火、始まりましたね?」
「あ、ああ…。」
興奮ぎみに話しかけてくるりんごに俺は頷き、気を取り直してこの絶好のシチュエーションに、出来る限りアプローチを計ろうと決意した。
ドンッ!ドンッ!ドドンッ!!
パアッ!パアッ!パアァッ!!
「わあぁ…キレ〜!…!//」
空に映し出される赤や黄色、緑などの眩い光に目を奪われているりんごの手をそっと握ると、驚いたような顔をこちらに向けて来た。
「こ、こんな時も危機管理必要ですか?」
「いや?花火は人と手を繋いで見る習慣があるんでな…。」
「そ、そうなんですね…!でも、こうしていると、花火の美しさをより分かち合える気がするかも…。いい習慣かもしれませんね。」
しれっと大ウソをついた俺だが、意外にもりんごには好評だったようで、ウンウン頷くと、満足そうな笑顔になった。
それから、りんごは繋いでいた手を強く握り返して来て、少し思い詰めたような表情になった。
「浩史郎先輩、私…!……。」
ドオオン!ドンッ!ドンッ!
パアァッ!パアッ!パアッ!
「??今なんて…?」
花火の音にかき消されたりんごの言葉を聞き返すと、いたずらっぽい笑顔を浮かべ舌を出した。
「ふふっ。何でもありません!浩史郎先輩の悪口を言っただけですよ〜。」
「何だと!またかき氷食わせてやろうかぁっ?」
「もう、全部食べさせられましたよ!
「ちっ!」
舐めた事を言ってくるりんごに脅しをかけたが、奴の言う通り、既にかき氷の容器は空になっていた。
「悔しかったら、浩史郎先輩も言えばいいじゃないですか…。」
「分かった。取って置きの罵詈雑言を言ってやる。」
「罵詈雑言のエキスパートである浩史郎先輩の取って置き、凄そう…!!」
人に不本意な評価をしながら、りんごがゴクリと息を飲んだ時…。
ドオオンッ!
「「…!」」
大きそうな花火が打ち上げられ、その花が開きそうなタイミングで、俺は大声を上げた。
「りんご、その浴衣似合ってる!普通に可愛いっっ!!」
ポスッ…。
「…!!///」
ざわざわっ…。
「何?告白…?」
「高校生のカップル?」
花火の音に負けないぐらいの声を出したのに、その花火が不発だったものだから、思った以上に辺りに響いて周りの人の注目を集めてしまい、俺もりんごも真っ赤になった。
「こ、浩史郎先輩…!悪口じゃないじゃないですか!///」
「い、いや、褒め殺しという奴だ。///」
「それに、浴衣の感想、何で、今頃言うんですか?」
「君が言わせる隙を与えなかっただろっ?」
「も、もう…。皆に見られて恥ずかしい…。///褒めてくれるのは嬉しいですけど、ここでは注目を浴びてしまうので、悪口も褒め殺しもやめておきましょう?」
「わ、分かった…。///」
それからは、俺もりんごも無言でただ夜空に繰り広げられる光の乱舞を鑑賞していた。
繋いでいる手は最後まで離すことはなかった。
終盤、圧巻のスターマインの後、花火の終了を告げる一発の打ち上げ花火の光が空を覆い尽くし、その輝きがゆっくり消えて行くの見守ると、俺は名残惜しい思いで呟いた。
「花火、綺麗だったな…。終わってしまうのが惜しい位だ…。」
「同感ですけど、花火は、終わりがあるからこそ、余計に綺麗に思えるんじゃないですかね?」
そう言うりんごの顔はやけに大人びていて、俺は胸の奥がツキンと痛んだのだった…。
先々週、先週は、投稿スケジュール乱れまして、大変申し訳ありませんでした。
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