猫の心飼い主知らず
「ふうっ。取り敢えず一通り揃えましたねっ。」
「はあっ。そうだな。」
花火大会まであと1時間という時間制限の中、俺達は手分けして屋台を回り、15分前に、なんとか以下の屋台飯を揃える事が出来た。
*焼きそば2個
*たこ焼き2個
*りんご飴2個
*かき氷2個
*ベビーカステラ2袋
俺達は、待ち合わせ場所になっていた
少し高い位置にあるテーブル席を人数分確保する事が出来たところで、りんごに母親に電話で連絡を取ってもらう事にしたのだが…。
「ええ〜っ?そうなのぉっ?でも、せっかく食べ物買ったのに…?ええっ。そっちで食べてって言われても…。あっ。お母さん、ちょっ…。」
何やら困った事態になったようで、呆然と切れてしまったスマホを見ているりんごに声をかけてみた。
「りんご、お母さん何だって?」
「浩史郎先輩、それが…。」
途方に暮れた様子でりんごは話し出した。
「お母さん達、遠くの屋台まで行ってしまって、花火大会までにここに来られないそうなんです。
買った食べ物もそっちで全部食べていいって…。」
「そ、そうなのか…。ごほん。それは、とても残念だな…!」
おそらく、これはりんご母が俺達を二人きりにするよう計らってくれたのだろう。
浴衣姿のりんごと二人で花火を見るという状況にニヤけそうになる口元を押さえて、神妙な顔を作った俺だが、りんごは本当にがっかりした様子だった。
「あ〜あ。皆で、ご飯食べながら花火見るの楽しみにしてたのにな…。
んもう!こうなったら食べましょう!浩史郎先輩!!」
「お、おう。」
「もう!こんなに食べたら太っちゃうじゃない、お母さんたら…!」
「……。」
ハグハグとヤケクソのように焼きそばを食べているりんごを見て、浮かれていた気持ちがちょっと萎んでしまった。
そうだよな。こいつにとっては、家族が一番なんだもんな。
二人になれて喜んでいるのは俺だけだ。
「悪かったな。家族団欒しているところに割り込んじゃって。」
「え?」
不貞腐れてそう言うと、りんごは猫のような目を大きく見開いた。
「誘ってくれたのも、どうせお母さんに誘うように言われたからとかだろ?
空気読まなくてのこのこ来ちゃって悪かったな。」
「ち、違いますよ!」
りんごは否定したが、俺は首を横に振った。
「シェアハウスを離れてから、俺は会えなくなった猫とどうにかして接点を持とうとしているのに、君はいつも俺なんかどうでもいい感じで…。まぁ、飼い主の気持ちを猫がわからないのはしょうがないかもしれないが…。」
ガタンッ!
「そんな事ないですってば!!浩史郎先輩だって私の気持ち分かっていません!」
「うわっ。何だよ!」
俺の発言を遮るようにりんごが大声を出して、席を立って主張した。
「私だって、シェアハウスを離れてから、寂しかったし、減ってしまった浩史郎先輩と過ごす時間を増やそうと必死だもん!
今回だって、私が浩史郎先輩に来て欲しいから誘ったんだし、がっかりしたのは、浩史郎先輩と家族皆一緒に花火見たかったからで…。」
「…!」
一気にまくし立てるようにりんごは言うと、しゅんと俯いた。
「その…、せっかく来てくれて、家族と仲良くしようとしてくれてるのに、浩史郎先輩に嫌な思いさせてごめんなさい…。」
「いや、いい…けど…。」
俺はそんなりんごになんと言っていいか分からず…。
テーブルの上の溶けかけたかき氷に目を遣り、変な事を言ってしまった。
「えっと…。りんご、かき氷食わしてやろうか?」
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