手繋ぎとりんご飴
りんごの家族と別れて屋台飯を買うことになった俺達は、取り敢えず、食べ物をやっている屋台を見て回る事にした。
「え〜と、花火まであと1時間ですね。浩史郎先輩、急いで屋台見ていきますか。」
「ああ、そうだな。」
スマホの時間を確認したりんごに言われ、俺はにこやかに頷いた。
りんご母から課せられたミッションは、花火の時間までに、頼まれた屋台飯
*焼きそば2個
*りんご飴2個
*かき氷2個
*ベビーカステラ2袋
をゲットする事。
どの屋台もそれなりに人の列が出来ていて、ゆっくりし過ぎていると、時間内に戻るのが大変かもしれない。
けれど、俺はこのミッションはりんご母が俺とりんごを二人きりで過ごせるように仕組んでくれたものだと知っている。
必ずしも、全部の店を回る必要がない事を分かっていたが、りんごはうちわに書いてある屋台飯のメモと、実際の屋台の客の並び状況を交互に見て難しい顔で計画を立てていた。
「う〜ん。焼きそばは、温かい内の方がいいだろうから最後の方がいいかな?私と浩史郎先輩で手分けして…。」
「おいおい、りんご、それはダメだろ。下の方に書いてある注意書き見てみろよ。」
「え?あ…!」
俺に促され、りんごは、うちわに書かれた屋台飯のメニューの下に、小さな注意書きが書かれているのに気付いた。
『※はぐれたら大変だから、浩史郎くんと一緒に行動してね。』
「二人で行動するように書かれているんだから、並ぶ時は一緒に並ぼう。」
「そ、そうですね。お母さんの言いつけですもんね。」
大好きなりんご母の意向をりんごは素直に聞いていた。
「温かいものは後の方がいいんだよな?て、最初は、その場で食べられるかき氷とかりんご飴にするか…。あっ。あそこにりんご飴とかき氷の屋台があるぞ?りんご、行こう。」
ギュッ!
「あっ。ちょっ…浩史郎先輩!//」
俺は近くにあった屋台を指差して、やや強引にりんごの手を取ると、抗議するような声を上げられたので、キリッとした顔で、りんごに言い聞かせるように言ってやった。
「今日、周りが混んでいるし、お互い履き慣れないものを履いてるだろう?
お互い安全の為に手を繋ぐ事は連れとして当然の心配りじゃないか…?」
「…!連れとしての当然の心配り!な、なるほど…!」
りんごはハッとしたように目を見開き、納得したように大きく頷いていた。
「分かりました!浩史郎先輩が転ばないようにしっかり手を握っていてあげますね?」
「ああ。よろしく頼む。」
使命感に燃え、握った手に力を込めてくるりんごの手の柔さにニンマリしながら、俺は一言付け足した。
「ああ。今の心配りは、家族(飼い主含む)や、女子限定だからな?」
✻
それから、俺達は、すいているりんご飴の屋台を先に回り、買ったりんご飴を片手に、混んでいるかき氷屋台の列に並ぶ事にした。
「あむあむ…。りんご飴うま〜!でも、浩史郎先輩、右手塞がって、食べにくくないですか?止まってる時も手を繋いでいる必要あるのかな??」
「何を言ってる。止まっている時こそ、不測の事態に備える必要があるだろう!」
不思議そうなりんごにくわっと目を見開き、俺が主張すると、りんごは純粋に尊敬したような瞳を俺に向けて来た。
「そ、そっか…!浩史郎先輩、危機管理、しっかりしているんですね…✨✨」
「まぁな。それにしても、りんご飴、美味しいな…。」
宇多川が聞いていたら、「またりんごを口八丁でだまくらかして!」と怒られそうだが、ともかくこの場は、りんごと手を繋ぎながらの甘酸っぱいりんご飴の味を堪能する俺だった。
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