りんご母の協力
日曜日夕方ー。
りんごの誘いで、りんごとその家族と一緒に花火を見に行く約束をした俺は、家族付きではあるが、浴衣姿でデートが出来る事に俺は少々…いや大分浮かれていた。
「これを機にりんごちゃんとの仲をぐっと深めるのよ!ドレスコードぐらい合わせときなさい!」と母に勧められるまま、浴衣を着せられてしまうぐらいに。
市民祭りが開催される広場の入口に立ち、他にも大勢の人が待ち合わせをしている中俺がキョロキョロ周りを見回していると…。
「あっ。浩史郎せんぱ〜い!」
ると、後ろから聞き慣れた明るい声が響いて、振り向くと…。
「浩史郎先輩!こんばんは〜!」
「りんご…!」
可愛く三つ編みアレンジされたショートの髪に花飾りをつけ、ピンク地に黄色の花柄を散らした浴衣姿のりんごがいたずらっぽい笑みを浮かべてそこに立っていた。
ヤバい!想像していたのより、1000倍ぐらい可愛いな!
馬子にも衣装!猫にも浴衣!
これは盛大に褒めてやらなきゃいかん。
「お、おう。今日はよろしく。りんご、その浴衣…。」
「うんわ!浩史郎先輩、浴衣姿メッチャ似合うじゃないですか!」
俺の声と被せるようにりんごが口に手を当ててテンション高く叫んだ。
ガシッ。
「うちの家族にも見てもらいましょう!」
「うわ、何だよ!ちょっと、りんこ…?!」
慌てつつ、りんごに腕を引かれ、公園の中へ入っていくと、くじのコーナーに見覚えのある双子と両親がいた。
「ああ、浩史郎くん連れて来た…おお!浩史郎くん、浴衣似合うね〜。」
「本当だ!浩史郎くんグレーの絣に、青の帯とは、なかなか風流な佇まいだね…!」
「わぁ。浴衣男子素敵♡」
「おお、浩史郎、来たか。ふむ。りんごとは違って、浴衣ちゃんと似合ってんな。」
「あ、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。」
りんごの浴衣を褒めようと思ったのに、何故か、りんご母、りんご父、りんご妹、りんご弟と、森野家全員に全員に自分の浴衣姿を褒められる運びとなり、俺は戸惑いながら頭をペコリと下げた…。
「うん。浩史郎くん、今日は来てくれてありがとうね。ウチの家族の用事で度々借り出しちゃってごめんね。
えーと、会うのはお家プールにお邪魔させてもらった時以来…かな?」
「…!///」
りんごの母に、ちょっと困ったような笑顔を浮かべてそう言われ、裸の画像を撮られたスマホを回収しようと、りんごを押し倒している場面を見られてしまっていた事を思い出した。
あの後、りんごが母親に誤解を解いていてくれた筈だが、一応自分も一言否定して置かねば…と俺は口を開いた。
「あの、以前見られてしまったすごい場面は、誤解でして…!」
「ああ、もちろん分かってるよ。りんごからもちゃんと説明してもらってるから。それはいいんだけとさ…。」
りんごの母親は、ううん…とちょっと考えるようなポーズを取り…。
「浩史郎くん、ちょっとこっち…!」
「えっ?」
「「「「?」」」」
他の家族の面々からちょっと離れたところに招かれ、りんご母からこそっと耳打ちされた。
「(あのさ。浩史郎くんて、りんごの事を女の子として好いてくれてるってわけではない…のかな?)」
「(えっ!?何でですかっ?)」
突然そんな事を聞かれて、俺は驚いて聞き返してしまった。
「(いやさ、りんごは、浩史郎先輩は自分の事を猫のように思っていて、女の子としての興味は一切ないから、お母さんが心配しているような事にはなり得ないって言うのよ。
浩史郎くん、以前、ホームシックになっていたりんごを迎えに来てくれたでしょう?
あの時の浩史郎くんの雰囲気はどう見ても男女の情があるように感じたから、いやいや、そんな事はないでしょって言ったんだけどね?
あまりにりんごが固くそう信じているみたいだったので、私も分からなくなって来ちゃって…。
本人に聞いてみようと思ったわけ。)」
りんごの母親に、苦笑いでそう説明され、俺は脱力してその場に崩れ落ちそうになった。
「(い、いえ、違います…。あれは、シェアハウスに帰って来た時に、りんごが自分の事を妹とペットどちらのように思っているかって聞いてくるから、「猫」だと答えざるを得なかっただけで…。
俺はちゃんとりんごの事を女の子として、好きです!)」
「(だ、だよね〜。うう、りんごの奴め、何を考えているのか…。)」
きっぱりと告げると、りんご母は額を押さえて呻き…、そしておもむろにガシッと俺の手を取って宣言して来た。
「浩史郎くん!あんな奇想天外な娘だけど、見捨てないでやって?
二人でいい雰囲気になれるよう、私も出来る限り協力するから!」
「お、お母さん…!ありがとうございます!!」
俺も感激して礼を言ったのだが…。
「あ、あの、ちょっとちょっと!二人仲良くしてくれるの、嬉しいけど、浩史郎先輩、その人は私のお母さんだからねっ。取らないでねっ?」
こちらに駆け寄り、別方向にヤキモチを焼いてくるりんごを、俺とお母さんは
魚の目で見遣り、同じ事を呟いたのだった。
「「………。(前途多難だ…。)」」
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