ため息をつく俺(飼い主)焦るりんご(猫)
「すーすー。」
りんごは自習室の机の上に突っ伏して、安らかに眠っていた。
連日のバイトと部活の疲れに窓辺に差し込む午後の日差し。
そりゃ、りんごが昼寝してしまうのも無理はない事かと思う。
だけど、シェアハウスを出てから、最近二人きりの時間が、バイトや部活の帰りなど細切れ時間しかなく、(勉強会とはいえ)やっと二人になれたと思ったらこんな調子だ。
必死になって追いかけているのは俺の方ばかりでちょっと虚しくなってしまう。
『でも、結局のところ、《《彼》》のそういうところも可愛いと思ってしまってるから、仕方ないんですけどね…。惚れた弱味っていうか…。』
そう言えば以前、猫カフェのスタッフのお姉さんは、猫みたいな年下の彼氏さんに振り回されながらも、そんな事を言っていて、多いに共感してしまった事があったな。
結局、惚れた方が負けだってのは、分かってるんだけど、俺が追いかける10分の1でもりんごからアプローチしてきてくれたらなぁ…。
ため息をつき、りんごの寝顔に呼びかけた。
「成績落としたら、一緒にもいられないんだろ?少しは危機感持てよ…。」
✽
「あ、あのっ!浩史郎先輩。こちらからお願いしていたのに、今日はあまりお勉強出来なくてすみませんでした…。」
その後、気持ち良さそうに数時間程昼寝をし続けたりんごは、目が覚めた頃には帰る時刻になっていて、帰り道で俺に平謝りして来た。
「いーよ。もう。問題集の中の森野が間違えそうな問題だけ印付けといたから、後は家でやっといてくれれば…。」
俺はそんなりんごに半ば呆れて答えた。
「は、はいっ。宿題ですね?やり終わったら、また勉強会を…。」
「いや、今、部活とバイトに疲れている時に無理に図書室まで出てこなくてもいいよ。」
傍から見ていても、今のりんごのスケジュールはきつそうだ。
せっかく実家に帰れて、大好きな家族と交流する時間もあるだろうし、
どれかを削らなきゃいけないんだったら、りんごの優先度合い的に俺との時間なんだろうな。悔しいけど。
「は、はい…。」
しかし、りんごは俺がそう提案すると、目に見えてしゅんとした。
「ま、分からない問題あったら、メールででも知らせてくれ。俺も都合のよい時に解説送るから。改装終わったら、シェアハウスでも見てやれるし…。」
「は、はい……。」
数学の勉強が不安なのかと思い、そう付け足したが、りんごは更にしょんぼり俯
いた。
何なんだよ。人がせっかく気遣ってやってんのに。
俺が眉を顰めた時、りんごは思い詰めたような表情で、俺を見上げて来た。
「浩史郎先輩も大変お忙しいと思うのですが、日曜はお暇ですか?」
「ん?ああ…。りんごとほぼ同じスケジュールだから、日曜はバイトも部活もなくて予定は空いてるけど…。」
「あ、あの!実は、その日家族で市の花火大会に行く予定で…!
浩史郎先輩もよかったら一緒にいきませんか?」
「…!」
思わぬりんごの誘いに俺は目を瞬かせた。すると、りんごはそれをマイナス方向への躊躇いと思ったのか、一気に畳み掛けるように主張して来た。
「いや、分かります!私の家族と一緒なんて、気遣いますよね…。でも、メリットもあります!
①私の浴衣姿を馬鹿にする事ができる!
②家族の奢りで食べ物食べ放題です!」
「いや、あのな…。」
人を何だと思っているんだと抗議しようとすると、りんごは、俺が断ろうとしているように見えたのか、さらに必死に
言い募って来た。
「③規模は小さいながら花火が見られる!
④あ、あと、人が多いから、巨乳のお姉さんをナンパできるかもしれません。あとそれと…。えーと、えーと!」
「いや、行くから行くから!
君の中で鬼畜な俺の想像を膨らませるのはやめろっ!!」
俺はりんごがそれ以上変な事を思いつくの前に、大声で返事をしたのだった。
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