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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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王子の一言


あれから、生徒会室のテレビから、固唾を飲んで状況を見守っていた俺達だが、

宇多川がりんごの弁護を行い、理事長たる俺の母が援護射撃をし、風紀委員がシェアハウスの視察を行うという事で話はついた。

西園寺がシェアハウスに視察に来るなんて、鳥肌モノだが、たった一日の事だ。何とかやり過ごすしかないだろう。


取り敢えず、今はりんごが無罪放免になった事にホッと胸を撫で下ろした。



「宇多川さん、あの西園寺相手に堂々たるもんだな。」


感心したように言う石狩生徒会長に恭介は頷き、彼にしては珍しく素直に絶賛していた。


「ええ。彼女は宇多川財閥の孫娘として、他の財閥の人達と今まで対等に渡り合ってきたでしょうからね。本当にすごい人ですよ。」


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

テレビ画面の中では、風紀委員内が不穏な空気になり、西園寺が他の委員と揉めているようだった。


りんごは、宇多川に促され…、その場を離れるかに見えたが…。



『ごめん、夢ちゃん、ちょっと待ってて!!』


『りんご⁉』


!??


りんごは、先程西園寺がいた、議長席に駆け寄り、置いてあった髪切りバサミを手にした。


『も、森野林檎、何をしているの!?』


西園寺はそんなりんごに気付き、青ざめた。


風紀委員の女子達もそちらを見て慄いている。



『風紀委員の皆さん、潔白の身とはいえ、皆さんに誤解を与え、お騒がせしました事をお詫びします。


よく見ていて下さいね。』


✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽


「りんごっ!!」


りんごが、ハサミを自分の方に向けた時、俺は生徒会室を飛び出していた。


「浩史郎っ!」

「里見くんっ!」


石狩会長と恭介が俺を止める声が響いたが、それどころではなかった。


りんごっ!変な事考えるなよっ?

どうか無事でいてくれっ!!


祈るような思いで、俺は生徒指導室へ飛んで行った。


            *

            *


「りんごっ!!」


俺が生徒指導室へ飛び込んだ時…。


「さ、里見様っ!?///」

「里見くんっ!?///」


「里見先輩…!(来ないでって言ったのに…。)」

「浩史郎先輩…!」


教卓近くに西園寺と他の風紀委員、宇多川と、前髪が少し斜めに真一文字に切られたりんごが目を丸くして俺を見詰めていた。


りんごの足下には、短い毛が散らばっており、西園寺の驚きぶりと、宇多川が半泣きになっているところを見ると、りんごが自分で前髪を切ったのであろうは明らかだった。


まだ不穏なものが燻る風紀委員を収める為なのかもしれないが、やる事が無茶過ぎる…!


「こ、浩史郎先輩…!これは、ちょっと気分転換に前髪を切ってみただけですよ?どうですか?さっぱりしたでしょう?」


りんごは一瞬いたずらを見つかった子供のような表情になると、真一文字に切り揃えた前髪に触れて、にっこり笑った。


その潔い笑顔に俺は却って胸が痛んだ。


俺と一緒にいる為にこんな事までして。

ホント馬鹿だな。こいつは…。


宇多川の言う通りだ。


りんごと許嫁になった事で、西園寺を初め、風紀委員が何か仕掛けてくるのは予想できていた事だったのに、対策を怠ったのは俺の失策だった。

俺がちゃんと守ってやらなきゃいけなかったんだ。


「こ、浩史郎先輩…?」


手を伸ばし、りんごの前髪に軽く触れると戸惑ったように目を瞬かせた。後ろから、風紀委員の女子達の悲鳴があがったが、知った事ではない。


「前髪パッツンだな…。すごい可愛い…。」


「へっ?」


りんごは目を見開いて真っ赤になった。


その途端、後ろを取り巻いていた風紀委員の女子がキャーッとざわめいた。


「あの一年生!なんて羨ましい…!」

「やっぱり里見くんはあの女とできてるの?」

「でも、さっきの音声では許嫁になるのすごく嫌がってたわよ。」

「もしかして、髪型だけ褒めたんじゃないの?」



風紀委員の女子の中からずいっと進み出るものがいた。名前は分からないが、顔は選択授業で何度か見かけたことがある。ツインテールに何故か前髪をりんごのように真っ直ぐに切り揃えたその女子は、震える声で、俺に問いかけてきた。


「さっ、里見くん!そういう…真っ直ぐな前髪が好きなんですか…?」


「えっ…?」


戸惑いながら、俺は思わずりんごと顔を見合わせると、りんごは一瞬何か閃いたように目を見開き、俺に向かって力強くこくこくと頷いた。


なんか分からんが、話を合わせろって事だな。


「えっと、うん…。悪くはないと思うよ。可愛いんじゃないかな。」


俺は前髪パッツンの女子に向かって、曖昧に笑いかけると、その女子は湯気が出そうなくらい赤くなった。


「か、可愛い?可愛いだなんて!嫌だ。そんな、恥ずかしい!!」


その女子は恥ずかしさのあまりか、顔を両手で覆うと、ダーッと走り去っていった。


「私、もうずっとこの前髪にしますからぁぁっ!!」


去り際にそんな事を叫びながら…。


俺が呆気にとられていると、風紀委員の女子が近付いて来て、口々に叫んだ。


「里見くん、私も前髪パッツンにします。」


「私も…!」


「私も…!今美容院に予約入れました!」


この事態に西園寺が、長い髪を振り乱して喚いた。


「ちょっと、あなた方、風紀委員の校内恋愛禁止の方針はどうなったのですか?好きな男性の為に髪型を変えるなんて…!違反者は…。」



「確か、前髪パッツンの刑ですよね?委員長、早く私の前髪を切って下さい。」


「私も…!」


「私も…!」


「なっ…!?」


風紀委員の女子達に詰め寄られ、西園寺はタジタジになった。


「森野林檎。計りましたね?まんまと、里見くんの好みの髪型にした上、風紀委員の規律を乱すなんて…!なんて抜け目のない女なの?」


「えっ、違っ…。」


「あなたは髪型元に戻しておきなさいねっ!でないと許さないわよっ!」


風紀委員の女子達で囲まれて、姿の見えなくなった西園寺は最後にりんごに向かってそう叫んだ。


「え!いいの…?」


呆然と呟くりんごに、宇多川が走り寄ってきて、抱き着いた。


「りんごっ!もう馬鹿っ!向こう見ずなんだから。」


「ごめん。夢ちゃん…。心配かけちゃって。」


りんごはポリポリと頭を掻いた。


「後でちゃんと髪、整えてあげるからね。それから里見先輩!」



「お、おう…。何だよ?」


「今回の件、全部あなたせいだからね!よく反省して、これからは言動に気を付けて下さいね。」


「わ、分かったよ。」


「確かに。浩史郎先輩は風紀委員の王子様で、影響力がありますものね。でも、今回はよかったんじゃないですか?浩史郎先輩の一言が、殺伐としていた風紀委員の方々を幸せにしましたよ?」


にっこり笑顔のりんごに俺は首を傾げた。


「そうか…?」


まあ、西園寺以外はそうかもしれないけど…。


後ろの風紀委員のドタバタに、背を向けて森野と宇多川と共に歩き出しながら、俺は考えた。


これで本当によかったのか…?


宇多川が肩を竦めて言った。


「あの人達の幸せなんて知ったこっちゃないけど、これで対策を立て易くなった事は確かね。」



いつも読んで頂きましてありがとうございます。

今後もよろしくお願いしますm(__)m

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