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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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証拠物件


「森野さん、今日呼び出しを受けた理由をご存知ですね?」


「いえ。こんな呼び出しを受けるような理由が全く思い当たらないため、正直困惑しています。」


私は顔を上げてきっぱりと告げた。


西園寺先輩は額に眉間の皺をよせ、口元を引き攣らせた。


「そ、そうですか。森野さんは大分厚い面の皮をお持ちのようですわねっ。」


風紀委員の女生徒達はざわめき、口々に悪意ある言葉を口にした。


「なんて厚かましい!」「信じられない。」

「図々しい子!」「死ねばいいのに!」



ううっ。女子の集団怖いよおぉっ。


私は震えそうになる拳をギュッと握りしめた。


「では、厚かましい森野さんにも分かってもらえるように、これを見てもらいましょうか。桜井、友田。」


「「ハイ。」」


西園寺先輩の右隣にいるツインテールの女生徒が、リモコンで、照明を暗くして、左隣にいるメガネをかけた女生徒が、プロジェクターに繋がれたパソコンを操作すると、

正面のスクリーンに、何枚かの写真が映し出された。


!!


左端のものは今住んでいるシェアハウスの戸口から制服姿の男子=浩史郎先輩が出てくる写真ー。


真ん中のものは同じくシェアハウスの戸口から制服姿の女子=私が出てくる写真ー。


右端のものは、最寄りのスーパー=トコトコマートで

買い物をしている高校生ぐらいの男女の写真ー。


「これは学校の風紀に関わる重要な案件の為、西園寺家が私財を投じて興信所で具に調べてもらいました。


左端の写真に写っている気品あふれる凛々しいお姿はどう見ても里見様ですね。

そして、真ん中の写真に写っている貧乏くさい小娘はどう見ても…。森野林檎さん、あなたよね。

この写真は里見様が出ていらした10分後に同じ場所で撮られたものです。

同じ日の夕方頃、あなたがこの家に戻った30分後に里見様がこの家に入っています。

そして、二人共翌日の朝までこの家から一歩も外へ出ていません。

これは一体どういう事でしょうか。」


西園寺先輩が青ざめながら、努めて冷静な口調で問いかけてくるのが、却って押し殺した怒りを感じさせる。


「……。」


私は黙秘を貫いた。


「そして極めつけがこの真ん中の写真。スーパーで仲良く買い物をしている男女。里見様と、森野さん、貴方…よね?」


「……。」


「なお、この時のスーパーでの会話を録音してあります。」


『ふふっ。今日は夕食何にしましょうか?荷物持ちして頂くお礼に、浩史郎先輩の好きなものでいいですよ?牛肉入りの肉じゃがでも鶏肉のトマト煮でも何でも好きなもの言ってください。』


『ん?ピーマンさえ入ってなければ、りんごの好きなのでいいぞ?サバの味噌煮でもまいたけハンバーグでもなんでも。』


『おおぅ!いいとこ突いてきますねぇ!んー、でしたら、ここは間をとって…。浩史郎先輩のお母さんから頂いたレシピノートにあったメニューにしませんか?ポトフとか白身魚の白ワイン煮とかどうでしょう?』


『ああ、実家のポトフ美味かったな。久々に食べたいし、りんごにも食べてもらいたいかも…。』


『じゃ、決まりですね。最後の味付けは出来るだけ里見家の味に寄せたいので、浩史郎先輩も味見手伝って下さいね?』


『おう。任しとけ。おっ。このウインナーポトフ用にいいんじゃないか?』


『いいですね。太くて大きくてジューシーな感じで美味しそう!』


「何なんですか、新婚夫婦のようなこの会話は!?

聞いてられませんわ!お、おまけに、最後に太いとか大きいとか卑猥な会話を!!破廉恥極まりない!!」


「は、破廉恥じゃないです!!何考えてるんですか!食材について感想を述べてただけですっ!」


私は涙目で弁解した。

いつの間にかスーパーでの会話まで録られていたなんて!


それにしても、あの後食べたポトフ美味しかった美味しかったなぁ…。いや、今そんな事思い出してる場合じゃない。つい、この恐ろしい状況に現実逃避してしまった。


写真とボイスレコーダー、これらの証拠が指し示すもの=私と浩史郎先輩が同じ家で生活を共にしている事実!


「森野林檎さん、あなた、里見様と同棲生活を送っていますね…?学園内でこんな爛れた関係の生徒がいるなんて風紀委員としては見過ごすわけにいきませんねぇ!」

西園寺先輩が威圧感たっぷりに最後通牒を突きつけた。


「汚らわしい!」「嫌らしい女!」「死ねばいいのに!」


風紀委員の女子達は皆怒り心頭で口々に私を罵倒して

くる。


私はダメ元で真実を伝えてみる事にした。


「一緒に生活している事実はありますが、同棲ではありません。あの家はシェアハウスなんです。」


「嘘おっしゃい!!どこの世界に新婚夫婦よろしく一軒家に男女二人きりのシェアハウスがありますか!!」


「白々しい!」「言い訳にもならないわ!」「死ねばいいのに!」


うん…。まぁ、やっぱりそう見える…よね。

自分でもおかしいと思ってたもんな…。

私は一瞬遠い目をしたが、一貫して主張を続けた。


「でも、本当の事です。理事長に聞いていただければ分かる事です。それに、私と浩史郎先輩はそんな関係にはありません。私は家政婦としてシェアハウスに住み込みで働いているだけです。」


「信じられるものですか?一つ屋根の下に一緒に生活いて、何もないですって?しかもあの里見様が…!」


「信じられないのも無理はありませんが、事実です。

私は清い身体です。何なら病院で調べて頂いても結構ですよ?

確かに浩史郎先輩は今まで女性関係が派手な方でしたが、交際されてた方達のタイプは大人っぽい美人で、グラマーな方達ばかり。私と似通った部分が少しでもありましたか?」


「確かに…、里見様が交際していた女は皆Dカップ以上の巨乳ばかり。それに比べてあなたは…。」


西園寺先輩は眉間に皺を寄せて私の控え目な胸部をガン見して鼻で笑った。


「はい…。Bカップです。浩士郎先輩は私に対して女性としての興味は一切ありません。」


私は神妙な顔で頷いた。


「これはあまり使いたくなかったのですが…。」


「!?」


私はブラウスの胸ポケットに挿したペンを手に取り、高く掲げてカチッとボタンを押した。


『…君を初めて見たとき、俺の好みから一番遠いところにいる子だと思った。女だと思えない。つまり君は俺にとって『モブキャラ』でアウトオブ眼中だ。…頼むからこの話断ってくれ!』


ボイスレコーダーから浩史郎先輩の必死の叫びが部屋一杯に響き渡った。



風紀委員の女子達がざわざわっとどよめく中、

西園寺先輩が呆れたように言った。


「あなた…、めちゃめちゃ嫌われてるじゃないの!」


「そうなんです。分かって頂けたようで。ちなみに、ここで浩史郎先輩が断ってくれと言っているのは、私が家政婦としてお仕えするというお話についてです。

これは証拠物件として風紀委員に提出させて頂きます。声紋鑑定でもなんでもして頂いて大丈夫ですよ。」


私はペンを近くの風紀委員の女子に渡し、西園寺先輩の元に運んでもらった。





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