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許嫁=猫…ではない  作者: 東音


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暗黒の沈黙

それから、皆着替え終わり、リビングでクッキーや

マドレーヌのおやつを食べていると、森野の母が苺ちゃんと柿人くんを迎えに来た。


「浩史郎くん、ありがとうね。せっかくの休みにごめんね。プールわざわざお家から持って来てくれたんだって?大変だったでしょう?」

「いえ。そんなに重いものじゃありませんし、余ってたものを持って来ただけですから。

俺も二人と過ごせて楽しかったです。プールはそんな大きくなくてすみませんが。」


「そんな事!子供達には十分過ぎるサイズよ。本当にありがとうね。」


「いえ。」

「りんごもありがとうね。」

「うん。私も久々いーちゃん、かっくんと遊べて楽しかった!お母さんは買い物できた?」

「ええ。おかげ様でゆっくりできたわ。あっ。これ、お土産ね。」

森野母は森野に和菓子の紙袋を手渡した。

「おおっ!○福堂。ありがとうお母さん!」

りんごは顔を輝かせた。



「うん。二人で食べてね。いーちゃんかっくん、楽しかったね。お姉ちゃんと浩士郎くんにお礼と言って。」


「りんごちゃん、お兄ちゃんありがとう!」


「りんご、浩史郎、世話になったな!」


「これ、柿人っ!」

「イテッ!オネエチャン、コウシロウオニイチャン、アリガトウ!」

柿人くんはお母さんからゲンコツを食らい、ロボット読みで言い直した。


「そしたら、りんご、私達はそろそろ行くね。また

今度ゆっくりね。」


「うん、お父さんによろしく。気をつけて帰ってね。」


「「バイバーイ!」」


手を振りながら、3人を見送った。


それから、リビングに戻りながら、りんごは感謝の目を向けてきた。


「浩史郎先輩、今日はありがとうございました!プール私も二人もメッチャ楽しかったです。お母さんも買い物できたし、お父さんも、家でゆっくりできただろうし(多分昼寝してる。)。浩史郎先輩のおかげで、今日は森野家の家族皆ハッピーでしたよ。」


りんごの幸せそうな笑顔にも俺は何故か少し罪悪感を抱きつつ、目を泳がせた。


「あ、ああ。皆喜んでくれたならよかったよ。」


「はいっ。あっ。お礼にお母さんのお土産出しましょうか。なんと○福堂の羊羹ですよっ。ちょっと切ってきますね。」


「まだ食うのか?さっきおやつ食べてなかったか?」


「さっきのはクッキーで、洋菓子でしょ?羊羹は和菓子だから別腹ですっ。」


そんな別腹はないだろう。

この間、焼き菓子を食べて、カロリー取り過ぎたって後悔していたばかりなのに。

喉元過ぎれば熱さを忘れるとは正にりんごの為にあるような言葉だな。


と、思ったが、罪悪感もあり、うきうきしている様子のりんごに水を差すことはできなかった。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


「はい、どうぞ。お茶もどうぞ。」


りんごは、ツヤのある羊羹を2切れ程小皿に盛り、お茶と共に俺の前のテーブルに置いた。


一切れを備え付けてあった、楊枝で口に運んだ。


弾力のあるあんを噛み砕くと上品な甘さを感じられ、思わず顔が綻んだ。


「うん。程よい甘みで美味しい。さすが、専門店の和菓子は一味違うな。お母さんにお礼言っといてくれ。」


「はい!ふふっ。よかったです。浩史郎先輩が手放しで褒めるなんて珍しい。よっぽど美味しかったんですね。」


りんごはにっこり笑うと、自分も羊羹を口にした。


「んん〜!美味しい!やっぱり疲れたときは甘いものに限りますよね。」


「ははっ。確かに言えてるな!」


その優しい甘さにさっきまでの、緊張感が解れるような気がして、二切れめを口に入れた途端…。


「浩史郎先輩。やっぱり、さっき見たでしょう?」


「うんっ!?ゲホゲホッ!」


俺は羊羹を喉に詰まらせた。


「ングッ。なっ、何が…?何で?」


俺は胸を押さえて咳き込みながら、尋ね返した。

ま、まずい。動揺し過ぎだ!


りんごはこちらを真剣な表情で凝視していた。


「さっきから私と目合わないですよね?態度もなんかおかしいし。さっき、私が別腹だと言ったとき、いつもの先輩だったら、絶対『そんな別腹があるか!』とか突っ込んでる筈でした。機嫌が悪いのかとも思ったけど、羊羹を食べてる様子を見たらそんな感じでもないし、何か私にやましいところがあるからじゃないんですか?」


膝のあたりのワンピースの生地をギュッと握りしめて、こちらに問い糾してきた。


りんごに理路整然と、理由を述べられ、俺は冷や汗を大量にかいていた。


こいつ、天然の割にそういうとこはよく見てんな!

ヤバイ!!

沈黙は肯定になってしまう。

早く弁解しないと…!

えーと、目を合わせなかった理由か。

さっき読んでいた心理学の本に何かヒントになりそうな事があったような…。


……!!


うん。よし。これで行こう!


この間俺にはとても長い時間に思われたが、実際には

2.3秒のことであったろう。


俺はりんごと()()()()()()にっこりと微笑んだ。


「ははっ。りんごは俺と目を合わないことを()()()()()()()()()()()()!」


「え…?」


りんごは目を丸くした。


「すまん、実はな、心理学のテストをしていたんだ。

『友人に急に目を逸し続けられたら、どう感じるか』

という内容の。」


「へっ?」


「さっき俺が読んでいた本に、『特に仲が悪いわけでない相手に、急に目を逸し続けられたら、どう感じるか』という研究が載っててな。カナダのケベック州にあるオンタリオ大学で学生100人を対象に、事前にテストの内容をしらされている友人と10分間目を逸らして会話を続けた後、相手がどう感じたかというアンケートをとったんだ。そうしたら、相手に対する不信感の他、自分のコンプレックスや、心配事を強く感じる場合が多かったそうだ。」


「へ、へーっ。そんな研究があるんですね…。知らなかった…。浩史郎先輩はだから私と目を合わせなかったんだ…。」


「ああ。感じ悪かったよな。すまん。」


「い、いえ、私こそ疑ってしまってすみませんでした。相手に対する不信感と、自分のコンプレックスや、心配事を強く感じるかぁ…。

そっかー。私、プールでの事を見られたんじゃないかと内心心配していたから、浩史郎先輩と目が合わない事をすぐそれに結びつけてしまったんですね。ごめんなさい。私の被害妄想でしたね。」


「い、いや。分かってくれたらいいんだよ。」


恥じ入った様子で謝ってくるりんごに、安堵すると共に逆に申し訳ない気持ちになる俺だった。


すっかり疑いが解けて、笑顔になったりんごが言った。

「そのテスト面白いですね。私も後でやってみたいな。ふふっ。お父さんとかにやったら、いっぱい理由を言われて心配されそうだな…。」


「あ、ああ…。」


「あーあ、何度も大騒ぎしちゃって、恥ずかしいな。まぁ、いっても、私のなんて見たって苺ちゃんとあんまり変わらないし、どうってことないんですけどね。」


「ははっ。それはないだろう。確かに小ぶりの胸だったけど、流石に苺ちゃんと同じって事はないんじゃないか?」


「……………………………。」


「………………………………。」


りんごと俺双方に永遠とも思える暗黒の沈黙の時が訪れた。




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