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ゆめ 脱出



カラオケはみづきと1年の時に行って以来だった。2人がすぐに曲を入れた。仕方なくゆめはよく聞いている韓流ガールズグループの最新曲を選んだ。

斎木と名乗った男はクールににやけながらコーラの入ったカップを手にした。みづきが先陣を切ってマイクを握った。ゆめはしらけた顔でモニターに映る女性アイドルのダンスを見るとはなしに眺めた。

ゆめにとっては重い空気が部屋に漂っているように感じて、居心地の悪いことこの上ないといった状態だ。

みづきは歌い終わるとオレンジジュースを一気に飲み干した。

「みづきちゃん上手いね。本物っぽかった」

斎木が調子の良い事を言ってみづきを喜ばせた。

「えへへ」

照れ笑いを隠さずににやけた顔で

「おかわり行ってくるね」

と言い残してドアの向こうに消えた。

でかいイントロが唸って斎木の順番を知らせた。気取った体で斎木はマイクを手にしてゆめに近づいてきた。テーブルを迂回するように近づく斎木に対して、真後ろが壁で身動きの取れない位置にいるゆめはどうすることも出来なかった。歌いながらゆめの隣のシートに座り込んだ斎木はマイクを口から離した。

「よく来てくれたね」

「うっ」

顔を近づける斎木になすすべなくゆめは口ごもった。

「カラオケ終わったらどこか行こうよ」

と耳元で囁かれた。

自分の顔が酷く歪んだに違いないとゆめは察した。

ゆめはふいにテーブルに両手をついて立ち上がるとシートに乗り上がりその足でテーブルにも膝でよじ登った。

「えっ」

斎木から驚いたような声が漏れた。

ゆめはテーブル上で膝を中心に回転して一旦斎木に対峙する形になり、続いて後ろ向きにテーブルを降りた。そこへみづきが戻って来た。

「え?どーしたの?」

みづきにしてみれば歌っているはずの斎木が、歌いもせずに壁際のゆめの居た場所でマイクを手に座っていて、ゆめは自分の目の前に背を向けて立ち塞がっているのだから無理もない。

「うちもお代わり行ってくる」

みづきをチラリと見やってゆめはドアから部屋を出た。カラオケの音が小さくなるにつれて心臓の音がしだいに大きく聞こえる気がした。

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