不穏な空気
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つゆは中1の時から同じクラスで学校では一緒にいることも多い。先日のみづきの件を聞いていたようで、
「なんかやばい話してたよね」
と昼休みに話しかけてきた。つゆの切れ長の目じりがゆめにはとても素敵に見える。
「あれね」
「みづきってしょっちゅうDM来た話してるんだよね」
「ホントの話なの?」
ゆめの言葉につゆが目を見開いた。普段はあまり見えない瞳が大きく覗けてとても可愛い。
「ん?」
「DM来たとか。気を引きたいから言ってるとかない?」
「あー」つゆが顔を上げてあごを見せた。綺麗な形だ。「マジだよ。見せてもらったから」
「じゃー、あれも?」
「たぶんね。確認しなかったの?」
ゆめはうなずいた。そこへ教室に入ってくるみづきが見えた。みづきは2人を確認すると笑いながら駆け寄ってきた。
「まじで噂をすればだね」
つゆが苦笑いを見せた。
「ゆめヤバイよ」
「あんたさー、隣のクラスしょっちゅう来てんじゃないよ」
「えー、いいじゃん。用事あんだからさ。ね、ゆめ!」
みづきにはつゆの攻撃は無効なようだった。
「また来たよ!変な人から!」
みづきの頬が興奮で膨らんでいる。
「無視してって言ったよね」
変な人ならなおさらだろうとゆめには思える。
「なんかさー、特定されたみたいなんだよね」
みづきは薄ら笑いを浮かべている。
「ちょっと!何それ!」
つゆはそう言ってゆめとみづきの間に割って入ってきた。
「どーゆーこと?身バレしたの?」
「えへへ」
みづきはつゆの勢いに屈することもなく不敵な笑みを浮かべていた。
「あんた色んな写真上げてたから特定されたんだね」
「あはは。なんかねそうみたい。びっくりだよね。凸られるかも」
みづきの発言にゆめはあきれた。この子には危機管理という考えが欠如している。どれだけ能天気に暮らしているんだろう。
「あんたねー!」
つゆの怒りのこもった声と同時にチャイムが昼休みの終了を知らせた。じゃーねーと言ってみづきは教室を後にした。ゆめとつゆは顔を見合せてため息をついた。