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登校前

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もうすぐ4歳を迎えるなおとはただ今タブレットのゲームに夢中で、保育園から戻るなりテーブルに駆け寄ってすぐにスイッチ入れた。

ゆめは母親の代わりに、今週は自らすすんでなおとのお迎えを担当していた。

学校に行く気はしなかったのであの日以来休んでいた。両親はもう諦めたようで、執拗に登校を強要しては来なかった。成績は決して悪いほうではないので許されているところもある。

つゆからは毎日連絡があった。あの日のことはメールで詳細をやり取りしていたし、つゆは当事者のみづきからも確認しているようだった。そのみづきからは一度も連絡はないが、学校には来ているとの事だった。

つゆによるとあの男はあれきりで事件にもなっていないようだった。いくらみづきが襲われていたとはいえ、ゆめは一方的に暴行を加えた加害者なのだからそれなりの覚悟はしなければとびくびくしていたが、杞憂に終わるかもしれない。

つゆは学校での出来事を少しだけ報告してきた。ほとんどどうでもよい些細なことだったが、自分が中学生であることを思い出させてくれていた。

行かなくなってそろそろ1週間なので、学校のことを考えると胸の奥に暗い重たいものが膨らむ感じがした。行く気がしない。

親が言うには出席日数が重要らしい。

「卒業は何とかしてくれるかもしれないけど、滑り止めの私立高校の確約はとれないよ」

何度もそう言われていた。

出席日数の少ない生徒は高校でも休むだろうと思われるんだろうな。ゆめはそう捉えていたが、実際その通りになるかもしれないとも思う。

別に学校がそんなにいやなわけではなかったが、行くタイミングを失うとエンジンが切れてしまってエンジンを再稼働するのにパワーが必要だった。

時間はあるので自主的に主要科目は教科書を読んだり問題集も解いたりしていて、学習面での不安はそれほどなかった。部活にも入っていないし、行く理由は数人の友人に会って話すことくらいだ。

着信を知らせる音にスマホを見やると長瀬がLINEに写真を送信してきていた。

開くと

『 なんか出会っちゃったかも』

というコメントがあり、その下に何が被写体か判別不能な暗い画像の写真が貼り付けてある。

『 何これ?』

そう送り返した。しばらくして再び長瀬からの着信。

また写真だ。

しかもさっきと同じだが、下の方に黄色い線で謎の縁どりをして来た。

『 だからなに?!』

いらだちを隠さずに返信した。

『 あのクロちゃんだよ』

と返信が来た。

クロちゃん?そこで、はたと合点がいった。この黄色い縁どりはあの居なくなった子猫をあらわしたものなのだろう。全く猫に見えない図だ。なにやらぐにゃぐにゃしてるだけの線だ。勝手に名前も付けていたのか。

『 へえ。良かったね』

と送ると

『 うん。生きてた。すぐどっか行っちゃったけどね』

ゆめは残念感を表現したスタンプを送付した。

ククッ。と笑いが込み上げてきた。こらえきれず声を出して笑った。

「ゆめちゃん。なにがおもしろいの?」

タブレットから姉に視線を向けたなおとが驚いたように声を出した。

「 はははっ。ばかなやつがいてね」

そう言うも、笑いが込み上げてきて言葉が続かなかった。

本当に久しぶりにゆめは笑った。

富士山をめざして2人で歩いていたときの長瀬のニヤついた顔が見えるようだった。




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