登校前
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なおとが小さいクロワッサンを頬張っている。少しざらついた赤い頬が健気に動く。ふと、また休もうかなと邪な思いが頭をよぎる。
中1の頃はなおとも小さくて手がかかったから、それも言い訳に加えてよく学校を休んでいた。
2年生になって心機一転学校に積極的に行こうと決意をしたが、新学年になってたった3日で気持ちが揺らいでいる。
とくに家に居たいわけでも、学校に行きたくない理由もないのだけれど、胸の辺りに重みを感じることがあって、そんなときはその重みに負けてしまいそうな自分を認めた。
「ゆめちゃん。ジュース」
「あ。待って」
ゆめは食べかけのトーストを皿に戻して椅子から立ち上がった。
「お母さん。なおちゃん保育園、間に合う?」
なおとはゆめの好物であるオレンジジュースは酸味が苦手てで飲んでくれない。冷蔵庫から小さい紙パックのりんごジュースを取り出すとストローを指した。
「もう終わった?」
佳乃はドレッサーの前でタオルを顔に当てていた。
「あとジュースだけだから』
「そう。ありがと」
白と赤に彩られたパックを受け取ると、なおとの小さい口がストローめがけてとんがった。
「行くかぁ」
トーストを食べ終えるとゆめは口に出してみた。あたしは有言実行型だからな。と内心つぶやいた。