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星明かりのルルク  作者: 大石次郎


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星明かりのルルク

(もう隠す必要もありません、蓄えた力を解放しましょう)


パスカの剣から氷のマナが(ほとばし)り、私は鎧とドレスの中間のような氷の武装を身に纏った。全身のマナが高まる。


「これは・・っ」


「いいですね! 華やかでっ。こっちはリラのやみくもなマナで三つ編みが爆発しそうですよっ!」


大型化したリラに股がったベルニュッケはやはり高まったマナで、髪がバチバチと爆ぜるような現象に困惑していた。


(さぁゆきましょう。ラカが2つ目の願いを叶えた後で、決着をつけることになるでしょう)


「2つ目の願い?」


(復讐です)


パスカの思念は虚しさと悲しみを湛えていた。



あたし達は凄い勢いで灰被りの城を呑み込んでゆく渦巻くマナの巨大球体を前に唖然としていた。どんどん大きくなってる!


「これに入んの?! これにっ!!」


「お~・・面白そうじゃんっ、余裕じゃん!」


「絶対嘘でしょ!」


「嘘じゃないじゃんっ」


ユミーとボススが揉め出してるけど、パスカの氷の針が共鳴してるっ。あたしは1歩踏み出した。


「ルルク?!」


「もう行くじゃん??」


「パスカの針が守ってくれる。行こうっ! ユミー、ボスス!」


あたしは両手を差し出した。

ユミーとボススは頷き合い。あたしの手を取った。それぞれの氷の針が共鳴する。

あたし達は手を取り合って、マナの渦の中へと入っていった。



箱庭の中心点には天を突くような水晶の樹があった。

幹には水晶の樹でできた祭殿が一体化するように迫り出ていた。

空気が震えるように祭殿からマナが溢れている。


(ラカはあそこです)


「でしょうね」


「決着だ」


私は氷の武装の力で飛行し、ベルニュッケは宙を駆けるリラに乗って、私達は祭殿に向かった。



祭殿奥に、ラカはいた。宙に無数の鏡のような遥か遠い景色を映し出す陣を発生させ、それを調整しているようだった。


「・・この箱庭では、私の杖を再び柱の樹に戻し、その力を活用することができる。樹の養分は当座、灰被りの城と周囲の遺跡、配下に集めさせた大量の魔石、だな」


ラカは天気の話でもするかのような口振りだった。


「私の2つ目の目的にはそこまでマナは必要ない。ただの掃除だ」


「映されてるのはどうも世界各地の邪教徒の拠点や邪教の神典(しんてん)の類いですね」


「明星の魔女、君は」


問い正す前に魔女はスッと宙で指を引き、それを合図に無数の鏡の景色が全て激しく炎上した。


「ペンジンから鏡を奪えなかったこともある。精度は大雑把だ。私のような犠牲になる子供も多いだろう。場所によっては無関係な者も多く焼け死ぬ、いやもう死んだか」


「ラカっ!」


私はパスカの剣を構え、ベルニュッケもリラの上で杖を構えた。


「お前達に打ち勝てば、続けて各閥のグランドマスター達が拠点とした大幻獣達を引き連れて攻めてくることになる。鑑みれば、慌てもするだろう?」


元々ヒビの入っていた灰の王冠にさらにヒビが入る。ラカは炎と共に浮き上がると、虚空より構築した仮面を被った。


「信仰の根を断たねば繰り返される。ある種の人々は悪意を解放できる言い訳を常に探している物だ。来い、インバース」


仮面のラカは抽象化された内に夜空を内包した奇妙な怪鳥型の幻獣を召喚した。


「貴女は結局、灰の王冠の破壊衝動に呑まれただけではありませんかぁ?」


「2つ目の願いは叶った。あとは救済を続けるだけだ」


インバースは小さな流星群を放ってきた。


「っ?!」


そんな攻撃があるのか! 私達は回避できる今の自分達の力に当惑しながら回避した。

流星群は祭殿の壁を突き破っていったが、ラカは構わない。


(ラカ、全てに勝ったとして、世界は緩やかに滅びるだけですよ?)


「どんな宇宙にも寿命はある。それが幸福に満ちた物であるのであれば、それでいいではないか?」


(ラカ・・)


「話し合う、余地は無いんだな!」


私は攻撃に転じる。


「っ!」


インバースはほぼ転送するように加速して避けたが、思ったより大きく回避する。


(ラカは私を持つ貴女の思考や未来は見えていません)


「なるほど・・ベルニュッケ。お前は身を守りながら私の回復に専念してくれ! リラはベルニュッケの脚として速く駆けるんだっ」


「了解!」


「トゥイっ!」


インバースを駆るラカは流星群を連打し、私はインバースの加速に手こずりながらも食い下がった。

やがて祭殿は崩壊し、私達3人は水晶の柱の樹がそびえる中空に飛び出した。

距離が取れるようになると、インバースは流星群に加えて膨張炸裂後に周囲を吸い込んで集束し、消滅する星の球を放ってきた。メチャクチャだ!


「ベルニュッケ! 吸い込みに気を付けろっ」


「お気にのリボンがぁっ?!」


お下げが1つ解けてしまっていた。その方が良い気もする。


「鳥だけ相手していると思うなっ!」


インバースに加え、ラカは上位点火術と上位爆破術を無尽蔵かという程、延々と連打してきた。

避けきれない打撃はベルニュッケの治癒術で癒す。が、動きを読まれるベルニュッケは離れて位置取りしても正確に狙われ続け、苦労していた。

そう持たないかっ。


(パスカ、あの膨張する星、斬れるか?)


(可能です。賭けずに彼女に勝つことは難しいでしょう)


(同感だ!


私は直撃以外の回避は止め、一気に間合いを詰めだした。損耗の回復はベルニュッケに任す!


「消えろっ!」


流星では当たらず、術では止まらない。案の定、ラカはインバースに膨張する星を放ってきた。

瞬間を見切る。私はパスカの剣で星を斬った。凍結して砕ける星を後ろに、私はさらにラカに迫る!


「月よっ!!」


(ラカっ!)


私はインバースの頭部を割りつつ、小さなラカを斬り上げ、交錯した。

仮面が両断され、灰の王冠とインバース共に凍り付いて砕け散る。ラカの鮮血も凍った。


「ああ・・まだ、救いたい。哀しんでいる人々が、こんなにもいる・・・」


ラカは凍り付き、砕け散っていった。



魂は、逃れるっ! 私は本能のまま、銀貨3枚のアイシアとパスカ達から離れてゆく。感じていた。子供達が箱庭に入ってきている。レッドブーツ閥の者達が取り逃がしたか? わからない。速く速く! 身体を失った私の魂が劣化してしまうっ。

見えた。まるで光の道標だ。身体交換術でこんなことは初めてだ。箱庭の術の副産物か? それとも、より特別な子供が・・



ワケわかんない水晶の森をあたし達は進んでいた。あちこちに人や人の魂が捕らわれた繭を見付けたけど、氷の針が光って警告するからそのままして、ずっと遠くに見える。バカみたいに大きな樹に向かって進んでいた。

ノノコリーさんの繭を見付けた時はユミーが騒いで大変だったよ・・。

ずっと進んでるはずだけど、大きな樹が大き過ぎてちょっと距離感もよくわかんなくなってきて、一回休憩しようかと言い出そうとしていると、


「っ!!!」


感じた!


「来るよっ!!」


「えっ?」


「もうじゃん?! こんなんばっかじゃん???」


あたし達のあたふたしながら取り敢えず氷の針を取り出して手に持っていると、


「あっ」


突然発光しだした彗星? みたいな物が見えたと思った側から、あたしはそれに撃たれていた。意識が、飛ぶ・・


「・・・・ハッ?!」


気が付くと光だけになったあたしは、暗闇の雲が渦巻く世界で、顔の無い巨人の子供に掴み潰されそうになっていた! え~~~っ??!!! 身体交換術ってこんな感じなの?? もっとこう「はいっ、取っ替えっこしようね!」みたいなのだと思ってたよっ! 怖過ぎるっ。


(恐れないでっ! 友達を呼んでっ!)


パスカの声だ! よ~しっ。


「ユミーっ!! ボススっ!! 出番だよっ!!!」


叫ぶと、呼応して、巨人の左右から激しい光が差し込み、光の球が2つ突入してきて、それが光のユミーとボススに変わり、2人は氷の針の剣で左右から顔の無い巨人の子供を突き刺した!!


「アアァーーーッッッ!!!!」


巨人の子供はひび割れだす。光の私を掴む力も弱まり、光の私は飛び出した。


「月よっ!!!」


私も人の姿になって氷の針の剣を構え、冷たい太陽みたいに輝く剣を、ひび割れて苦しむ、哀れな、顔の無い巨人の子供の胸に突き立てた。


「もう終わっていいよっ! ラカっ!!」


「アアァァーーーーッッッッ!!!!!」


赤ん坊のように泣いて、顔の無い巨人の子供は砕け散っていった。

闇の雲の渦は晴れ、私達は元の水晶の森にいた。水晶の森は崩れ始めていた。


(・・ありがとう。私の戦士達。いつかまた、私達の命が巡って出逢えたら、友達になってね)


「いいよ!」


「しょうがないわねっ」


「勿論じゃんっ!」


3本の氷の針は砕けて消えていった。


「ルルク!!」


「うぉ~いっ!」


ボロボロの氷の防具を身に付けて飛んでる師匠と、おっきくなったリラ? に乗ったベルニュッケさんが大きな樹の方から飛んできた。


「師匠っ! 無事でしたか?」


「こっちの台詞だっ。3人ともあとで色々お説教がある」


「え~っ????」


あたし達は声が揃ってしまった。


(子供達は叱らないで下さい。それから、私が最後の力でまだ生きている皆さんをこの箱庭から出します)


「パスカ・・」


「やるならやるで速くした方がよさそうですよぉ?」


(では!)


パスカの剣は目も開けられないくらいに輝きだした。そして・・



とある草原の祓い所で、円い月の明かりの下、あたしはあたしの懐中時計を開いて見ていた。路に迷わぬように という言葉の後に師匠の師匠の名が刻まれていた。

師匠が引退する時にわがままを言って、あたしの時計と交換していた。


「お師匠。その古い時計もいいでしょうが、もっと新聞を読むべきですよ? 新聞をっ!」


私の弟子のこの少年は活字好きで、ちょっと発展した郷や街によるとあれこれ新聞や雑誌買ってくる。今も照明術の灯りを頼りに何紙も斜めに読み込んでいた。


「新聞も雑誌も本と、誰か他の人が書いてる物だからね」


「だから色々読み比べるのです!」


「物事は直接見なよ?」


「文明的な発言じゃないですね!」


「はいはい、どうせあたしは学が無いよ」


可愛くないなぁ、あたしの弟子!


「・・そう言えば、来月にはお師匠のお師匠の農園を訪ねるんですよね?」


「まぁね。途中であんたが夜魔に丸呑みされなきゃね!」


「えーっ?」


この子、術や技は得意だけど、実戦はヘッポコなところある。


「ふふふ、途中のドワーフの郷で、あんたにも時計買ってあげるよ」


「一門の習わしですね!」


「ふふっ、そうそう!」


「お師匠のお師匠は厳しい人なんですよね?」


ちょっと不安そうな顔してる。


「まぁね。でも昔より丸くなってるよ。ベルニュッケさんと一緒だし」


ベルニュッケさん、意外とあっさり呪い師辞めて、ただの人間の木工飾り細工職人になっちゃった。


「へぇ~・・あっ! ラカニア国の英雄王がまた戦争に勝ったみたいですよ? またまた獣人の国と連携したみたいですっ。凄いですね」


「軍国主義者でしょ? ロクなもんじゃないよ。国名もなんか挑戦的!」


ただ妙に獣人と融和的で、よく連携してて、結果的に獣人の権利が年々回復してる気がする。


「あっ!」


祓い所の上空を星空と地上の間を、月の蝶の群れが飛んでいた。


「近くの月桂樹の祓い所にも寄るんだろね。あたしも次の郷でユミーやボススに送ろうかな? この、星明かり、のルルクがね!」


「普通に郵便機関に頼んだ方が確実ですよ? 都市部では電信も発達してきていますし!」


「ほらまたあんたはそういうことを言う~っ! 台無しだよっ」


「文明ですよ! 文明! お師匠っ」


ほんと可愛く無い弟子っ!

読んでくれてありがとうございました。

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