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星明かりのルルク  作者: 大石次郎


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巨木の森

巨木の森に、呪い師達の起こす上位風紋術で操られた大量の魔除けの香の煙が漂う。煙の道だ。

薄暗いこの特殊や森は幻獣達が多い上に昼間でも夜魔が巣食っていたが、一先ず普通の夜魔はこれで退けられる。

魔除けの香では幻獣達は避けられない。足場も悪く、地図の印象からするとバカげているくらい広大なので全員、呪い師も夜魔祓いも飛行絨毯等の飛べる呪い道具に乗っていた。

私達も件の翼を持つテントに乗っている。


「上手く乗ってくれるといいけどね」


ザィネは干し桃を囓っていた。

絶望のアメシストを巡る睨み合いは膠着したままだったが、オズキモズの元に世界中から獣人達が集まりだしていた。

後から来る者は人喰いですらない者達が多く、個々に見れば大した脅威ではなかったが、獣人社会の敵と見なされる事態は避けたかった。持久戦はできない。

私達は先んじて巨木の森に仕掛け、揺さぶりを掛けることした。

オズキモズやラカ本人がラビリンスに出張ればそちらにこの数日で溜めた傀儡人形群をけしかけ、その隙に森に攻略拠点を作る。

こちらに出張ってくればこの森で時間稼ぎをして、ラビリンスでは人形群をそのまま活用し潜んでいる別動隊がなんとか秘宝を回収する。

可能な限り少ない負担で状況を進展させる計画だった。


「好転させないと、交渉も牽制もままならないですよ?」


「まぁね」


ロックアクスの2人と比べると火力が足りないのを自覚したらしく、持参した使い捨てのマナを増幅させる杖を何本も手入れしているベルニュッケ。

穏健派や獣人と近しい呪い閥が間に入って交渉した結果、国を求める獣人達とは多少は話せるようになったが現状相手は様子見。オズキモズに熱狂する勢力以外は多少手を引いた程度だった。

まだ参戦していない無閥の呪い師達もどう転べば利があるのか? 値踏みする気配のようだ。

交渉材料が足りなかった。

私はリラを抱えているルルクを見た。


「・・ルルクはリラと」


「ベルニュッケさんと組んで援護ですね! いつも通りっ」


「トゥイ」


「ああ・・子供が参戦できるのはこの森までだ。後は亀島で待機してるんだよ?」


「勿論ですっ! ユミーとボススと大人しく待機しますっ」


ユミーとボスス・・巻き毛の子と、獣人の血を引く子か。


「ノノコリーとドォセさんの弟子だな。最近よく一緒にいる」


「必殺技の練習とかしてます!」


「必殺・・悪くない、とは思うが、実戦では柔軟にした方がいい」


「はい!」


同年代と一緒ならいい刺激になるんだろう。



・・ラカは捕獲した上位夜魔5体を遠距離攻撃特化型の固定形態に改造し、森の上空全域を押さえる形で設置していた。

お陰で上から森をやり過ごせなくなり危険な低空飛行で改造夜魔に挑むしかなくなっている。

上位の夜魔は基本的に遠距離が強いが、ペンジンの鏡からの情報からすると比ではない。

私達の目標は、知性はほぼ失っている様子であることや充填に時間が掛かること、雷の属性で一方向にしか射てないことを考慮して、3隊に分け、前衛に盾替わりの雷の幻獣を召喚して距離を詰める作戦になっていた。


「出でよっ! スタンリバー!!」


3隊の呪い師達は遥か前方の目標、鹿の夜魔を元にした改造体ワセウギーの射程に入る直前に放電する巨大鰻の幻獣、スタンリバーを召喚した。

ワセウギーは即、反応して一番前に出ていた隊のスタンリバーに向かって猛烈な電撃の光を放ってきた。


「師匠っ?!」


「大丈夫だ。相性がある」


電撃を全て受けきり、吸収する先頭のスタンリバー。しかし相手に反撃するとすぐに再充填してしまうので、魔除けの香にも耐えてワセウギーを囲んで群がる下位夜魔群に向かって電撃を放つ。

いずれも電撃耐性のある個体群だったが、圧倒的な出力で消し飛ばしてゆく。

スタンリバーの消耗や暴走の危険性を踏まえ、3隊で最前隊を交互に交代しながら、計4発の電撃に耐えた。

下位群体は反射の電撃で全滅させ、周囲の巨木の森に火災が発生しだして隊の呪い師の1割をそちらの対策に当てなくてはならなくなりつつも、3隊は無事に近接戦の間合いまで近付けた。

焼け始めた巨大の森の木漏れ日に焦がされながら激しく帯電しているワセウギー。機械に近い姿に変えられていた。


「ベルニュッケ! チビッ子とテントの番、頼んだよっ?!」


「ベルニュッケ、さん! 先輩ですからねっ」


ロロアは飛行する箒の柄に両足で乗って飛び出し、ザィネは続いて鳥型の傀儡人形に乗って飛び出した。

私も素早く飛び降り、駆ける。夜魔祓い達は左右に別れ、ワセウギーの両側面を狙う。

戦闘に参加する呪い師達は接近する味方や支援に回った者達を上位障壁術で守る組、雷耐性のあるスタンリバー3体を操りワセウギーの砲身の頭部を直接攻撃して引き付ける組、始末に負えない帯電する多数の触手のような器官を押さえる組に別れていた。


「銀貨3枚っ! 最近、そっちの弟子にウチの弟子が懐いてるみたいじゃないのっ?」


ワセウギーの複数本ある巨大な両腕は自由なので振り回され、それを避け、牽制しながらノノコリーが呼び掛けてきた。

大体同期だ。結婚して一時引退したが、暫くして復帰した。弟子は実子ではないようだ。


「そのようだな」


「そのようだな、だって!」


笑われた。ノノコリーは昔から私を面白がる傾向があるが、私の何が面白いのかよくわからない。


「アイシア! ウチのチビ助も仲良くしてもらってるらしいぞ? 珍しいこったっ」


ドォセさんだ。力任せに金棒でワセウギーの腕を払っていた。


「・・私の弟子は人当たりがいいようだ」


ノノコリーとドォセさんは一瞬、虚を突かれた様に私を見て、すぐに大笑いをした。なんだ??


「はははっ、まぁ、ベルニュッケとつるんでる辺りであんたの弟子がそういう子なのもわかるわ」


「良いことだっ! 夜は祓わねばならないからなっ!!」


「・・・」


解せないが?

ともかく私とノノコリーとドォセさんは、いち早くワセウギーの右側面の懐に飛び込めた。

ノノコリーが一番速い。彼女の得物は大鎌。霊木の灰の小袋を7つ、派手に投げ付け、右側面全面を焼きながら空橋術で駆け込む。


「月よっ!」


発光する鎌でワセウギーの腕を1本切断する。斬られた腕は変化しようとしたが、後続のドォセさんが止めを刺して消滅させてゆく。


「月よ」


腕を1本減り、既に霊木も撒いてくれたので入り易い。私は炎の戦斧に月の光を灯し、深々と燃えて激しく発光する斧をワセウギーの右脇腹に打ち込んだ。

右脇腹から抉れるように炸裂して焼き祓われる。


「エエェェゥゥーーッッッッ!!!!!」


絶叫するワセウギーは大きく体勢を崩し、あとは物量差で、改造夜魔は為す術無く削り滅ぼされていった。



戦闘後に確認すると、オズキモズはこちらの動きに呼応して絶望のアメシストのラビリンスに手練れの手勢と共に突入していた。

怒りのトルマリンのラビリンスの時と同じに、背後から人形群を押し込んだこともあってまだ秘宝の回収は済んでいないようだが、今回のラビリンス攻略でオズキモズの手勢の内、側近以外の人喰いはほぼ壊滅だろう。

獣人に関しては時間を掛け過ぎなければ一段落ついたと言える、か?


「明星の魔女、動かないねー」


私がルルク達と負傷者の手当てをしていると、モッタヨーがふらふらと歩いてきた。撃破したワセウギーの設置されていた地点近くに仮設転送門を造る為に私達の後ろから付く形に現地に入っていた。


「仕事はしないのか? モッタヨー」


増援を転送して、獣人軍の攻勢の心配の無い内に残りの砲台夜魔を順次撃破しないと、次の段階には進めない。


「仮設転送門の設計と組み立て材料の製造はしたからあとは誰でもできるよ。それより」


モッタヨーは眼鏡をクイっと上げた。


「ダイルゥーワみたいな幹部の呪い師達は発動条件を事前付けた記憶隔離(きおくかくりじ)術を自分に掛けていたけどさ、身体に残ってる記憶から、箱庭、って言葉が何人からか引き出せたんだよー」


「ごほっごほっ!」


「けほっけほっ」


「お~~っとぉっ、トイレ行きたくなったじゃんっ?!」


ルルクと巻き毛の子が咳き込みだし、獣の耳を持つ子が立ち上がった。


「あたしも!」


「私もっ。師匠! 仮設のおトイレはあっちですねっ?」


「んん? 造ってたね」


「行ってきます!」


「失礼しますっ」


「すぐ戻るじゃんっ?」


3人は小走りに仮設トイレの方へ去っていった。


「・・怪しい。銀貨3枚、なんか知ってる?」


「いや、わからないな?」


「ふーん」


私達大人は弟子達の謎の挙動を訝しむばかりだった。

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