弟子達
憎悪のオニキスを回収してから急に年少の夜魔祓いの弟子に身体交換術の対策を覚えさせようということになって、今、ゾガ大陸北部にいる該当者が呪い師閥の各拠点に集めることになったみたい。
あたし、あたし以外は子供の弟子なんていないのかな? て思ってたけど、亀島の教室にも7人、たぶん10歳から13歳くらいの子達が集められていた。こんないたんだ。
同い年は2人、かな? 凄いお洒落な巻き毛の子と、獣人の血を引いてるっぽい獣の耳が生えてる子。
「は~い、集まったねぇ。わたくしは特別講師の苔亀のベルニュッケです。マスター・ベルニュッケと呼んで下さいねぇ」
「・・・」
全員、微妙な反応。講師、大人の夜魔祓いじゃないんだ。って感じだよ。
「術を教わるなら呪い師の方がいいでしょう?」
察してムッとするベルニュッケさん。あたしは警戒してる。知ってるんだ。この人、教え方が・・雑っ!
「やり難いですねぇ! はい、午前中は精神確立術を修得して、午後は幽体離脱術を修得させますからね?」
「精神確立術は耐える為にわかりますが、幽体離脱術は呪い師でもないのに覚えるんですか?」
巻き毛の子が質問。
「普通はあんまり覚えないねぇ。ただ精神確立術と幽体離脱術は親和性が高くて、相互に強化できるから。それに身体を乗っ取られても自分を保てるかも? でしょう?」
「うっ・・」
怯む巻き毛の子。
「灰被りの城を攻める時は子供は避難する手筈って、わっちは師匠に聞いた。なら意味無いじゃん」
獣の耳の子。自分のこと、わっち、って言うんだ。
「万が一よぉ。現に、うん十年前にスネークハントの連中が倒した時も完封したはずなのに、今、復活しちゃってるし。とにかく! 午前中の授業始めるよっ。ルルクもずっと口開いてるけど大丈夫っ?」
「えっ?」
しまったっ。知らない子ばっかりだから気を取られてた!
「たくっ・・。まずは精神確立術! その名の通り、自分の心と魂を確かに形作る術っ。術の式は自習してきたよね?」
あたし達は右の拳で左胸を叩くような仕草をした。了解、肯定、そうだよ? の意味の夜魔祓いの仕草。
「それ、普通に返事した方が早くないですかぁ? ま、いいけど。・・ほいっ」
ベルニュッケさんは軽く杖を振るってすぐ近くに子猿と家鴨の中間みたいな幻獣を喚び出した。幻獣は浮いてる。
「っ?!」
戸惑うあたし達。ベルニュッケさんは知らん顔で呪いの品っぽい耳栓をした。
「皆さんは授業だから耳栓禁止ですよ? 代わりに精神確立術を自分に掛けて下さい。このホーントエイプの叫びに耐えて下さいねぇ」
「え?」
「ちょっ」
「待っ」
あたし達に構わず、ベルニュッケさんは促して、ホーントエイプは大口を開け、
「ンチャァアアーーーーッッッ!!!!」
叫んだ!
ただの大声じゃない精神を打ち据えられるっ。精神確立術が間に合わなかった。数人が気絶させられた。
「・・ッッ!!!」
脳ミソが揺さぶられる感じ! あたしや他の耐えてる子達も必死で術を維持するっ。自分の内に結晶の自分の想像し、それを呪いで固定するっ! 衝撃は、遠くなるけどっ、うう~っっ。
ベルニュッケさんは頃合いを見て杖を振るってホーントエイプに叫びをやめさせた。
「まぁまぁですね。じゃあ気絶した子達を手当てをしたらまた始めましょう。もう少し慣れたらホーントエイプを増やして、最終的に1人1体ホーントエイプを目の前に付けて叫ばしますからねぇ?」
「ッッッ??!!!」
絶句するあたし達っ。
やっぱりこの人、雑っ!!!
午後の幽体離脱術の授業も終えたあたし達はボロボロになってベルニュッケさんの教室を出た。酷いっ、本格的に酷かった・・
「なんなのあの、管楽器みたいな迷路っ!」
うんざり顔の巻き毛の子。
幽体離脱術の授業は術で魂を身体から分離してから細い管が複雑に絡んだ呪い道具の中に、魂を細くして入り込み、無事出口まで出て、また入り口まで戻る。という物だったんだよっ。
「あそこまでする必要ないじゃんね・・途中あちこち穴塞がってるから外見と違ったし・・・」
ぐったりしてる獣耳の子。
「マスター・ベルニュッケの雑さと、呪い師達の凝り性の合わせ技だよっ。あたし、捩れてる管の行き止まりで詰まって頭おかしくなるかと思った!」
ほんとに酷い授業だった! 術は覚えられたけどっ。その点は評価せざるを得ないけどっ!
というか、巻き毛の子と獣耳の子は宿泊棟の組分けがあたし達と同じみたい。
「・・2人、名前なんて言うの? あたし、ルルクっ! 銀貨3枚のアイシアさんの弟子!」
2人はきょとん、とした顔をしたけど、
「私はユミー。紫電走りのノノコリーさんの弟子よっ!」
巻き毛のユミーは髪をかき上げて見せて言った。
「わっちはボススっ! 古桟橋のドォセの弟子じゃん」
ボススは獣の耳を立てて言った。
「あたし以外に子供の弟子、いないのかと思ってたよ」
「いや、結構いるじゃん? 大人を弟子に取っても月の光の力を上手く覚えられないみたいだし」
「ずっと辺境にでもいたの?」
「まぁね。モノガリ郷のあるオタン草原で拾われたんだ」
「オタン草原! 人いないとこよねっ?」
「いるよ~」
それから歩きながらあんまり立ち入り過ぎないくらいに色々お喋りしていたんだけど、
「あっ! そういえば魔女を倒す武器っ、もうバッチリ剣の形に整えられたらしいぞ?」
「子供の遺骸を使ったんでしょ? 気持ち悪ぅーっ! 私、無理っ」
「切り札らしいよね」
「よしっ、行ってみるじゃんっ?」
ボススは急に向きを変えて小走りに駆けだした。
「ちょっと? なんで?? 気持ち悪いって、私言ったよっ?」
「えー? ちょっと、ボススっ、勝手に行ったら怒られちゃうってっ」
あたしはしょうがないからボススを追い掛け、ユミーも「もうっ、最悪!」と怒りながらついてきた。
前に敵から取った潜行術の力のある腕輪を3人に纏めて使って、錬成の技が得意な呪い師モッタヨーのグループの研究棟を潜行術だけではバレそうだから、物陰から物陰へと隠れながら進み、最後は物陰が無かったから仕方無く、3人で木箱をひっくり返して被って端を進んでいたら、思い切りモッタヨーのグループの呪い師の1人が木箱に気付いた!
私達は止まって、木箱の隙間から様子を伺う。
「・・なんだ、木箱か。動いた気がした。寝不足だな。モッタヨーさん、日程の設定がムチャ過ぎるよ・・・」
呪い師はボヤきながら書類の束を手に歩き去った。
あたし達はため息をついて、一番近い物陰まで進み、あとは木箱から出て、一気に奥の切り札の剣があるはずの部屋に入った。
人気は無かったので潜行術は解除した。
掴まっていた2人も離れた。授業後だったから、どっと疲れたよ。生命薬の瓶を取り出して飲む。
「あー疲れた・・」
「ルルク、昼、アップルパイ食べたよな? 匂い凄いからわっちまで口がアップルパイになっちゃったじゃんか。後で食べたいじゃんか?」
「ペンジンさんの分の残りがまだあると思うけど、部屋来る?」
「ここ寒くない?」
照明術を利用した灯りの点いた部屋は寒いばかりで噂の剣は無かった。と、
(こちらです。夜魔祓いの子供達よ)
あたし達の頭の中にあたし達と同じ子供の声が響き目の前の壁に突然、扉が現れ、鍵も解かれた。
「ちょっと、もぅ~っ、なんか話し掛けてきてるっ。だから言ったのよ! もぅ~~っっ」
「面白そうじゃんっ?」
「行くしか、ないよね・・」
あたし達は氷のように冷たい扉を開け、その剣の部屋に入っていったんだ。




