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ボイスドラマ『わらし と ワタシ』改訂版

作者: 現状思考

【登場人物】

アイキャッチ: 誰が言っても構いません。工夫を凝らして楽しく言いましょう!


湯江香沙実(ゆえ かざみ) : 大学院を卒業したはいいものの自分がやりたい仕事が見つからず、取り敢えずで入社したIT企業で働くアラサー女子。主な業務はサーバー管理とシステムコンソールの新規開発。日々パソコン画面と睨めっこをしている彼女の目には学生時代に秘めていた輝きなど遠にない。ただ過ぎ行く時間に仕事の忙しさを言い訳に使い、目標の無いありきたりな毎日を送っていた。そんな不変を少しでも変えようと、環境を変える事にした。引っ越しである。それが功を成したのかどうかはわからないが、彼女の人生はその後今までとは大きく変わっていく。


於保寺路(おぼじろ) : 腐レ神という人々の悪情から生まれた負の情念の塊。人の住む家に取り憑いたり、負の情念を向けられる矛先に自然と現れ、その者を不幸に陥れる。そこに意思は無く、ただ奪う尽くすだけの存在。それがどれだけつづいたのか、腐レ神は自我を持つようになり己の存在を恥じるようになった。こんな自分を終わらせたいと思いを胸に抱えながら、人に寄り添う座敷童子という妖怪に憧れを募らせていく。


衣袴峯(いこね) : 木造二階建ての大正初期に建てられたおんぼろ家屋の座敷童子。幾度も繰り返された補修とリノベーションにより、外見とは異なり、意外と住みやすい家となっている。だが、カザミが引っ越して来る前、長いこと空き家になっていた。60年以上住んでいた老夫婦が他界し、遺族もそれぞれ家族を持っていた為、手放す事になった。しかし、空き家になってからというもの、誰もいないはずなのにおかしなモノが住み着いていると妙な噂が立つようになった。管理会社が取り壊しを検討するなか、その夫婦のことを気に入っていたイコネが反発し、誰も寄りつかないようにしてしまった。かくして、扱いに困る厄介な物件として管理会社の管轄をたらい回しにされたイコネの家は、諸々を隠蔽されて超お得激レア格安物件として入居募集を掛けられたのである。そうなるまでの間、イコネは自分の姿が見える夫婦と別れ際に約束をしたことを延々と考えていた。座敷童子という怪異・妖怪はいつ終わるのだろうか、と。



【設定・ねらい】

はじめに。

今回は捻り絞り出し、改変に改変を加え、迷走しまくったものとなっております。


《設定》は、主人公である人間のカザミが福をもたらし家を守る座敷童子のイコネと、人を不幸にしその住処ごと朽ち果てさせてしまう悪情の腐レ神オボジロと同居し、人間と妖怪の摩訶不思議な生活を描いていく、と言うものです。


《ねらい》は、マイルドな作風を目指し、男女問わず幅広い年齢層を掴みたい、と言ったところでしょうか。残酷性のある話やガチガチのバトルもの、理論論争を捏ねくる話なんかが個人的に好きなのですが、まあ、そこは今回は置いておきましょう。




【本編】



『第一話、座敷童子現る』



カザミ「ありがとうございました〜」


【SE: 引越し業者のトラックの扉を閉じ、走り去っていく】


カザミ「さてと、12時……お昼か。荷解きしなきゃいけないけど、先にご飯買ってこようかな。1時からガスの業者を待たなきゃいけないし、今しか動けないよね」


【SE: 玄関扉の鍵を締め、ぱたぱたとお昼を買いに行く】


ーーーしばらくしてカザミが戻ってくる。


【SE: 鳩時計のパッポー、みたいなサウンドで時間の経過を演出して下さい。そして、鍵を開錠し、扉の開け閉め、靴を脱ぎ、廊下をとっとっとと歩く音の後、リビングへ入る扉を開ける音を順に鳴らす】


イコネ「割り箸とはまたチャチなものを。金で出来た箸を持ってこい。それくらい持って然るべきじゃ」


オボジロ「そんな箸、文鎮と変わらないですよ。ささ、熱いうちにお召し上がりください」


イコネ「ん〜、これちゃんと肉入っておるのか?」


オボジロ「入れてあります。ほら、ちゃんと下に入ってるでしょ。よもや、イコネ様ともあろうお方が野菜を苦手とする、なんてことありませんよね」


イコネ「ぅぐぐ、そ、そんなわけなかろう!ただアレじゃ、ほら、我は熱いのが苦手な、アレじゃ」


オボジロ「猫舌?」


イコネ「そぉれじゃ!そう猫舌!我は猫舌なんじゃよ。うむ。じゃからな、食べぬわけではない。今はただ冷ましているだけというわけよ!」


オボジロ「そうですか。じゃあ、はい。エリンギもどうぞ」


イコネ「なんでじゃ!!?」


カザミ「誰…………」



〜〜〜アイキャッチ「わらしとワタシ」〜〜〜



イコネ「おうおうおう。我らが見えるとは貴様なかなかに良い目を持っておる。よし、我の飯を食うのを許してやる」


オボジロ「お嬢には自分が用意しますから、イコネ様は自分の分はご自身でちゃんと食べて下さい」


イコネ「ぐぬ……めざとい奴め……」


オボジロ「さあさあ、お嬢。どうぞお召し上がり下さい。いやあ、俺のことまで見えるなんてびっくりですよ」


カザミ「あ……ありがとうございます。

【M】で、なんで私、知らない人おっさんと女の子に挟まれてご馳走されてんの……?あの薄くなった保冷バック。絶対、うちの食材使われてね?昼メシ買ってきたのに意味なかったじゃん。てか、こいつら誰!?

……あ、美味し」


オボジロ「ふう、お口に合って何よりです、お嬢」


カザミ「え、お嬢?それ私のこと?」


オボジロ「お嬢以外に誰がいるんです。お嬢はお嬢です」


カザネ「いや、意味わからんし」


イコネ「さっぱりせん表情ばっかじゃのう、娘っ子」


カザミ「生意気な奴だな。学校ちゃんと通ってる?いじめられてない?大丈夫か?」


イコネ「んなっ!?だ、だれが生意気かっ!失敬な!よいか、娘っ子!我らは座敷童子にして、この家を守る妖怪なるぞ!学校なんぞという、人の童ばかりが群れるだけの箱庭に我がいくわけなかろうて。もし通っておったらいじめられるどころか、皆が我を讃え敬い崇拝するに決まっておる!」


カザミ「ふーーん。それは凄いね。で?そっちの人がお父さん?その子連れて出てってくれません?私、さっきこの家に引っ越してきたんですよ。初日から空き巣に入られるとか冗談キツいんで」


オボジロ「あの、失礼ですがお嬢。イコネ様は俺の子ではなく」


イコネ「やめいっ!こんな奴が父だなどと体が朽ち果てようとも嫌じゃ!」


オボジロ「ぁ、ひどい」


カザネ「なんで。いいじゃん。料理美味しいじゃん。お世話うまそうだし、良いお父さんだと思うよ?手紙なんて書いてあげたら一生大事にしそうだよ?」


オボジロ「お、お嬢。そんな、俺のことをそこまで。ありがとうございます!一生付いて行きます!」


イコネ「ぉぇぇえ、飯が不味くなるわ」


カザミ「おい、吐くなら財布の中身から吐き出せ。ただ飯ぐらいの無礼者め。それで、そっちは私に付いてきちゃダメだから。行くのは児童相談所と警察だから」


オボジロ「お嬢。口答えをして申し訳ございやせんが、イコネ様が言ったのは本当なんです。俺たちは人間じゃありやせん」


カザミ「出頭したくないからってそんな、あるはずないでしょ」


オボジロ「お願いでさぁ。信じてくださいよ」


カザミ「妖怪なんでしょ?じゃあなんか見せてよ。というか、なんで見えてんのよ?私、霊感とかないからね。ほら、嘘じゃない」


イコネ「貴様に何で見えてるかなど知るか。そっちが勝手に我らを見ておるんじゃ」


カザミ「新手のクレーマーか」


イコネ「やかましわ。見せろなどと面倒をよく言ってくれるわ。概ね、人が出来ぬことを見せれば良いのか?」


カザミ「まあ、そんな感じの」


イコネ「オボジロ、貴様がやれ」


オボジロ「ええ!?俺ですかい?いやぁ、それはちょっと、家事全般しか自信ありやせんよ」


カザミ「逆に凄いな」


イコネ「チッ、使えぬのう。まったく。……仕方ない。なれば、我が直々に見せてやろう。驚いて腰を抜かすなよ?」


【SE: パチンッと指を鳴らす音。すると、シャーッとカーテンが勢い良く閉まり、天井の電気が勝手に付く……的な効果音が欲しい】


イコネ「ふふんっ、どうじゃ!!」


カザミ「おおお」


イコネ「これで我らが人間でないことが分かったであろう」


カザミ「自動カーテンに連動した照明。うちってオール電化入ったたんだ。(SE: パチンッ、パチンッ)あれ、照明消えない。私、指パッチンそんな下手くそ?」


オボジロ「いいえ。良い音です!」


【SE:指パッチンの音を連続】


イコネ「これ、貴様ら我の力を家電と一緒にするな!」


カザミ「え、どう見たってアレクサ入ってるでしょ」


イコネ「座敷童子がアレクサと同格……」




〜〜〜アイキャッチ「わらしとワタシ」〜〜〜




オボジロ「元気出してください」


イコネ「我、あんなパチモン家電と違うもん」


オボジロ「ええ。イコネ様は立派な座敷童子です。そうだ、先ほどお菓子見つけたんです。これでも食べて元気出して下さい」


イコネ「お菓子っ!」


カザミ「帰れ」


オボジロ「まあまあ、しばらくイコネ様のことはそっとしておいてあげて下さい」


カザミ「いや、お前もだよ」


オボジロ「あははは〜」


カザミ「誤魔化すの下手くそか。……まあ、それは後でいっか。ところで、聞きたいことあるんだけど」


オボジロ「へい、なんですかい?」


カザミ「引越しの荷物どこ言ったか知らない?」


オボジロ「荷物ですかい?」


カザミ「私、帰ってきてから一度も目にしてないんだけど。あんた、知らない?ていうか、なんかしたでしょ」


オボジロ「ああ、それならほら」


【SE:引き出しや扉を片っ端から開けていく音】


オボジロ「もう片付いてまさぁ」


カザミ「……うそ、いつの間に」


オボジロ「そんなの決まってるじゃないですか。お嬢が外に出ている間ですよ」


カザミ「本当に?全部?どうやって?」


オボジロ「どうやって、って。そらあ、前の家でお嬢のことをずっと見守ってきましたからね。どこに何を入れていたかなんてのは覚えてやすから、俺がパパっと。ああ、安心して下さい。お嬢の私物は開封せず、そのままですから」


カザネ「あれ、なんか今、サラッと気持ち悪いこと聞こえた気がする」


オボジロ「まあ、それで食材をしまっていたところで野菜が傷んでるの見つけてしやいやして」


カザネ「だから、鍋だったわけか。いや、だからとかじゃないんだけど……。はぁ、もういいや。ありがと。ごめん、私御手洗い行ってくるから、あのちっちゃい子のご機嫌直しておいて。それで帰る支度しといて!」


オボジロ「お嬢……まだ信じてくれてないんですかい?」


カザネ「警察呼ばないだけありがたいと思ってよね」


オボジロ「はぁ〜〜〜〜」


イコネ「菓子がなくなった」


オボジロ「おや、イコネ様。もうありませんぜ。夕飯まで我慢して下さい」


イコネ「別に我は食いしん坊ではないからな。ただこのマシュマロとチョコの菓子が、な」


オボジロ「気に入ったんですね。今度、お嬢に買ってきてもらいましょう」


イコネ「ふん、あの生意気な娘には菓子などよりも、もっと良い馳走を献上してもらわねば気が済まぬわ。で、その娘はどこに行っておる?」


オボジロ「ええ。少しお花を摘みに行っておいでです」


イコネ「貴様、花を摘むなどと良くそんな言葉まで覚えておるな。本当に変な腐レ神じゃな。聞いた通り、あやつには不幸のふの字も災いが及んでおらんようじゃし、貴様のことを信じてやろう」


オボジロ「恩にきます」


イコネ「よい。当面の厄介ごとは、我らの姿が見えっ放しというところじゃ。何かの拍子にあの娘との波長が合ってしまったんじゃろう」


オボジロ「お嬢は我らのことを信じていないようです。このままでは迷惑を掛けてしまいます。どうにかなりませんか?」


イコネ「さあな。我にも分からん。時に任せるしかあるまい、と言いたいところじゃが。家に住む人間を苦しめるのは座敷童子の在り方に反する。ここは認めさせるしかあるまいて」


オボジロ「それはどのように」


イコネ「まあ、見ておれ」


【SE: パチンッと一回、指パッチンの音が鳴る。その後、カザミの悲鳴と共に大きな水の音が部屋の奥から聞こえてくる】


カザミ「いやあああああああああああ!ちょっ!なにこれ、なにこれええ!!だれか、ちょっ、助けっ!誰か手を貸して!!!」


オボジロ「……イコネ様、もしかして」


イコネ「大変じゃ〜〜、娘を助けにゆかねば〜」


オボジロ「なんて荒っぽい」


【SE: 素足で水を踏む音と、バチャバチャと蛇口から水が床に落ちる音】


イコネ「どうした、娘。何をしておる?洗面台で水浴びかや?」


カザミ「そんなわけないでしょ!ちょっと突っ立ってないで押さえるの手伝ってよ!あと、拭くもの持ってきて!」


イコネ「仕方ないのう。では、我が手を差し伸べてやってもよい、が、どうしようかのう」


カザミ「はっ?ねえ何言って」


イコネ「先ほどは貴様に散々、酷いことを言われたからのお。ここでまた我が手を差し伸べてやっても、どうせ文句を言うに違いないじゃろ。すまぬな、人の子よ。我は別に仏と仲の良い妖怪ではないのじゃ。達者でな」


カザミ「待って待って何それ、この状況でよくそんなこと!いいから手伝ってってば!」


イコネ「なんじゃ?水の音でよう聞こえぬ。子供の我には貴様が水遊びをしておるようにしか見えぬな」


カザミ「あああーーもう面倒臭いなあ!ごめんって!謝るから!ごめんなさいっ!だからお願い、手伝って!この水何とかして!」


イコネ「ふん、心がこもっておらぬ。あーたいへん、わたしたいへーん、だれかたすけてー、という感情しか伝わってこぬわ。謝罪の気ゼロじゃわ。そんなんでやる気を出せと言うのが難しい話じゃと思わぬかや?のう、オボジロ」


オボジロ「イコネ様ァアアア!早くなんとかしてくださいっ!!」


イコネ「っ!?なんで既にそっちに着いておるんじゃ貴様は!それでも妖怪の端くれかっ!」


カザミ・オボジロ「「早くッ!!!!」」


イコネ「ええいっ、節操のない奴らめ!やればいいんじゃろっ!」


【SE: 指パッチンの音が鳴ると、水が止まり、滴り落ちる水滴すら全て無くなる。なので水の音は全てなし】


カザミ「と、止まったぁぁ〜〜〜…………」


オボジロ「遅いですよ、イコネ様ぁ」


イコネ「ふんっ!情けない声を出すな、たわけ。どうじゃ、娘。全ての水を無くしてやったぞ。その水栓も直っておる。これが我の力じゃ!恐れ入ったか!」


カザミ「〜〜〜〜!もっと早く助けろっ!」


イコネ「んなあっ!なぜ襲い掛かってくる!?馬鹿者目、来るな!やめるのじゃ〜!」


カザミ「アンタみたいな座敷童子はごめんよー!」


イコネ「なんでじゃぁあ〜〜!」


オボジロ「おや、誰か来たようですな。お嬢、来客ですぜ」


カザミ「え?」


【SE:呼び鈴】


カザミ「あ、ガスの開栓だ!って、あれ、ガス開いてないのに、どうやって鍋作ったの?」


オボジロ「それはほら」


【SE:手のひらから鬼火のような炎がボワっと出る音】


オボジロ「こんな感じで」


カザミ「マジかっ!!!!????」




〜〜〜アイキャッチ「わらしとワタシ」〜〜〜



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