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1591年4月10日 化学者が出来る内政チート

季節は4月を迎えた。新暦で言えば5月に当たる。我が領内、下総上総は俺の意向で強力に畜産にシフトしていっているが、それでも、未だ従わずに稲作に励む者達もいる。

因みに俺は、領内の検地を行わせると同時にガスの噴出地点も記録させていた。

それによると、やはり一番ガスの噴出が多いのは現在の茂原市にあたる鷲巣山城周辺だった。鷲巣山城は城というより砦にちかく本納城の支城のような場所である。

現代でも茂原市は天然ガスの産地となっており、ガスに関する企業が多い土地なのだが、既にこの時代から噴出していたのだ。但し、現代人にとっては天然ガスは資源でもこの時代の農民にとっては危険物以外の何物でもない。俺は土気城主・酒井康治に命じ、本納城から鷲巣山城に至る平地一帯の耕作を全面的に禁止させ、農民の移転を行った。一揆でも起きるかと思ったが皆整然と従ったという。どうも俺は領民から恐れられているらしい。何故だろう?


さて、現代の化学者がこの時代で出来るチートとは何だろう?機材を持って転移したならともかく、俺にあるのは知識だけだ。正直、やれることは少ない。

化学肥料を作れば?いやいや、そう簡単に作れたら苦労しないよ。

アンモニア合成法というのがある。ハーバー・ボッシュ法、俗にHB法とも呼ばれ今では高校の化学の教科書にも出ている定番ともいえる方法だ。20世紀の人口爆発を支えた画期的肥料生成法で、”空気から平時には肥料を、戦時には火薬を”とも言われ、開発に参画した、オストワルト、ネルンスト、ハーバー、ボッシュ全員がノーベル賞を受賞している。

彼らが作ったような大規模施設は無理だが、この方法自体は、この時代でも不可能ではない。そもそも、HB法の為に天然ガスが豊富な下総上総を所領に所望したのだ。とはいっても、現在、職人達には内燃機関の開発を優先してもらう為相良油田に行ってもらっており、未だHB法は手つかずの状態だ。そして、この方法には一つ大きなハードルがある。それは200~250気圧というとんでもない圧力を出すコンプレッサーが必要だということだ。俺にはこの点も当てがあるのだが、諸般の事情でまだ手つかずだ。


現在、天然ガスがらみでやっているのは、熱い水に交じって吹き出すガスを水から分離させ大甕に貯め密閉するという作業だ。ガスの水からの分離は水の温度を常温に下げるだけで容易に行えるので、いわば、プロパンガスの大量生産を行っている状態と言えるだろう。細工師にガスストーブでも開発させたい所であるが、内燃機関優先!我慢、我慢である。

さて、ガスを分離した後の水だが、これがとんでもない資源なのだ。この水、所謂かん水なのである。つまり、この水を使えば中華麺が作れる訳だ。更に、この水に磁鉄鉱を入れ酸性状態にしたあと、塩素を噴霧するとヨウ素が取れる。

そして、ヨウ素をアルコールに溶かしたのが外傷消毒薬として有名なヨードチンキである。酒を吹きかけるくらいしかなかったこの世界の消毒事情には画期的な製品になるだろう。

以上が、俺ができた内政チートである。はっきり言って、ヨードチンキしか作れていない。


では、現状俺には他に内政に関するアドバイスはできないのだろうか?

いや、それができるんだ。但し、化学者というより現代人としてだが。

何しろ、この時代の稲作、田植えしていないんだ。最初見た時はビックリした。種まきしているよ。最も、俺が見たのは下総の農家だけだったから他では、田植えしてるかもしれないが。ともかく、その種まき集落の皆には、種もみは管理しやすいところに植え、発芽して長さが10センチ程度になったら、田にできるだけ均等になるように植えるよう指示を出した。


もう一つは、木酢液だ。これは祖母が家庭菜園で使っていた。木酢液は木炭を作るときに発生した蒸気を冷却して得られる。蒸気さえ逃さずに配慮すれば比較的容易に得られる防虫剤だ。何しろ、この時代の防虫剤は忍びが使うような強力なやつしかなかったから、木酢なら農業にも使えるだろう。


最後は蛇だ。農作業中に蛇に遭遇するとビックリして鍬や鋤を振るい殺してしまう事が多いようだ。しかし、本来、蛇は鼠を食べてくれる農民にとっては味方な存在である上、性格も臆病なのが多いのだ。なので作業中に蛇に遭遇しても慌てず、農具の柄の方で殺さず追い払えと指示した。

実際、蛇を食用に飼育していた風魔の里では鼠は全く出ず、蛇の餌探しに他所に鼠探しに行く程だったという。


以上三点は大評定でも発表する予定だ。

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