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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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ライフリングと夕の怒り

鋳物師工房、2門の大筒の前に10名の細工師が集まっている。


鋳物師は工房長が一人いるだけだ。


俺は分かりやすいよう事前にスケッチを用意していた。絵心には多少自信があったのだが、慣れない筆と劣悪な紙にかなり苦戦した。


それでも、等間隔に溝が螺旋状の並んだ構図はなんとか職人達に伝わったようだ。


『なんか、竜の鱗のようですね』


『深さはどれ位掘れば良いんですか?』


感想や質問が飛び交っている。どうやら細工師達は、あの細い砲腔に手を加える気満々のようだ。


「掘りの深さはさほど必要ない。1センチ位で十分だ。とにかく、等間隔で溝が引かれてることが重要だ」


『ならある程度練習が必要になるんで、訓練用に同じ位の穴の青銅をいくつか用意してもらえませんかね?掘る道具から作らなきゃならないもんで』


細工師工房長

『そうだな、治郎右衛門さん。頼めるかい?訓練が終わったら青銅は潰してくれてかまわないんで』


鋳物師長は治郎右衛門さんらしい。


『まかせろ、又次。直ぐに5、6個用意してやるわ!』


細工師長は又次というらしい。二人は知り合いか?まあ同じ職人街にいるんだから当然か。


「では、やれると思ってかまわないな。大筒なんて最高兵器に細工するんだ、親方様の了解を得たら、正式に頼むから、それまで練習していて欲しい」


『御屋形様、直命の仕事か!これは遣り甲斐あるぜ』


『まかせておいて下さい』


力強い言葉に押され、俺と夕は工房を後にした。


正直、ライフリングでどれくらい効果があるかはわからない。少し命中精度が上がるか、射程が伸びたら良い方だろう。


しかし、20万というとんでもない大軍が攻めてくるんだ。少しでもあがいておかなければ。


鋳物工房を出た後は職人街をぶらつき、その後、小田原城下の他の区画も見て回ったが、どこも昼間から路上のいたる所で博打をやってる、いかにも治安の悪そうな場所ばかりだった。恐ろしい。


早く自分の館に戻りたい。と思っていたら、夕が突然、


『私は今夜の食事の材料を買って帰るので、お頭は先に帰っていて下さい』


と言われてしまった。


こんな物騒な所で一人にされてはかなわない。そもそも館までの道がわからない。


仕方ないので、夕に正直に伝えた。


すると、不機嫌そうな夕が凄い速さで目の前に移動してきて、俺の両腕を掴んだ。


物凄く痛い。夕ってこんな怪力だったのか!!


そのまま、人気のない路地裏に連れていかれ、声を潜めて囁くように凄まれた。


『いい加減、しっかりしてください。今日一日、ご一緒しましたが、なんだかナヨナヨしてばかりで、本当に頼りないことこの上なかったです。雄二様から過労で記憶喪失気味と聞いていますが、いくらなんでも酷すぎます。しっかりして下さい、お頭!いや、風魔小太郎様!!』


掴まれてる二の腕も痛いが、夕から漂う圧が凄い!これが威圧か!しかし、俺の本当の名は風魔小太郎?孝太郎じゃないの?


風魔小太郎は聞いたことのある名だ。以前ちょっと遊んだ、武将が全員女キャラという変なゲームに出ていた武将の一人だ。ゲームに採用されるくらいだからかなり有名な人なのでは?つまり、俺って物凄い忍者って事?


「すまん、まだ疲労が取り切れていないんだ。申し訳ないが、買い物に付き合うから、一緒に帰ってくれ」


『だから!そうやって、直ぐに謝る所が頼りないって言ってるんです!!付いてきたかったら堂々と付いていくと言って下さい!!』


また怒られた。


結局、怒りながらも夕は買い物に同行することを認めてくれた。助かった。


「しかし、小田原城下はいつもこんな博打街ばかりなのか?」


『何言ってるんです!そんなわけないじゃないですか!いたる所で賽を振って遊んでいるのは、領内から徴兵された兵達です!全部で5万くらいいますよ。戦になったら命がけで戦ってもらう人達ですから博打打ち扱いしないで下さい!』


怒られながら歩いている内に、目当ての場所に着いたようだ。


しかしここはなんだ?食材を買うと夕は言ってたが、とても食料品の店にはみえない。なんだか地下の秘密アジトのような場所に向かって薄暗い階段が下に続いている。


「ここが食材売り場なのか?夕?」


『そうです。ここで鯨肉を買うのです』


クジラ?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 話の展開の仕方が面白いと思います。 [気になる点] この時代まだ、メートル法は当時の人は理解できないのでは? 主人公は化学者ならそう言う所の説明とかきちんととできると思いますがどうなのでし…
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