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1590年11月20日 初陣

俺、伊勢直光は雄二こと直雷や家臣を伴って10月下旬に下総・上総にようやく入った。本城は千葉氏の居城・佐倉城だ。千葉重胤を伴ってのお国入りということもあってか中々の歓迎ぶりだった。領内の湊・富津には梶原景宗を派遣し水軍と交易としての湊の整備に動いてもらうことにした。

もう一つ、いや富津以上に重要な港は鬼怒川というか香取海の湊だ。何しろ武蔵、上野、下野の鉱山から採集した品の集積港となるのだ。こちらは第一開発拠点に佐倉城に近い印旛甫を選び地元の領民を雇い湊の整備に宛てた。


そんな中、北常陸で騒動が勃発する。ここからは親戚・宿敵絡みのとても複雑な話で理解するのが凄く大変だったが、俺も一枚嚙んでるらしいので無下にはできず小田原城での評定での説明を文字通り”地蔵”となって聞いていた。


発端は俺が進言した北常陸の金銀から始まるという。


その結果、佐竹氏の降伏を受け入れる代わりに本城・太田城も含め全て手放し南常陸に移転する事になった。


南常陸は当初は俺達伊勢氏の領土となる予定だったが、家臣が少なく飛び地が多い伊勢家では統治しきれないとのことで武蔵・西下野の北条氏房に委ねる事にした。


この時代の武将にとっては、米処である南常陸を北条一門とはいえ他家に譲渡するなどあり得ない話だそうだが、農業に関する知識が全くない俺には、苦労して米を作るより、奴隷を使って鉱山掘らせ得た銭で米買えば良いじゃないかという考えだった。これは農業に携わってない現代人には普通の感覚だろう。


話を戻すが、南常陸を氏房領としたことで後は氏房さんが上手くやるだろうと思っていたら、これが新たな火種を生んでしまったらしいのだ。


氏房さんは、南常陸の内、北条寄りだった小田氏治を小田城主に復帰させ、鹿島貞信・清秀兄弟も鹿島城に加え過去に因縁のある江戸氏の河和田城を召し上げ鹿島兄弟に加増、江戸氏は水戸城のみとした。佐竹氏は降伏した結城氏の支城だった下館城、下妻城二城を与えるとことになった。


これに不満を持ったのが、元小田城主の梶原政景・資胤兄弟とその父・太田資正である。

元々、彼ら太田氏は武蔵・岩槻城が居城だったが北条に岩槻を追われ佐竹に身を寄せていた。佐竹の力を借り本領・岩槻に復帰するのが彼らの悲願だったらしい。


ところが、今回の仕置きで、

・兄弟の小田城は奪われ(父資正の片野城は安堵されている)

・身を寄せていた佐竹は北常陸の大大名からたった2城の国人同然の没落

・しかもこれらを差配したのは、太田氏の且つての本城・岩槻城を拠点にしている北条氏房だ(太田氏は名目上は佐竹家臣なので怨敵北条の陪臣ということになる)


ここに至って、太田父子3人は一部の忠臣とともに常陸より逃走、陸奥の岩城氏を頼ることになる。


この岩城氏は磐城平12万石の大身であるが、当主・岩城常隆が8月に死亡、嫡男はまだ幼いので、佐竹より義重三男の貞隆を当主に迎えたばかりだという。


ところが、その翌月、佐竹氏が北条に降伏し北常陸から移転してしまった。

死亡した前当主の母親は佐竹氏の出、未亡人も佐竹氏の出という家柄の岩城氏は北条に臣従したら佐竹と同じ目に遭うのでは?と心配していた。北の相馬氏との関係も良好とは言えず、更に西には過去に佐竹と共に戦った北条の盟友・伊達氏が迫って来ていた。


そんな四面楚歌の状況下に武名高い太田一族が来てくれたのである。


国境を接する旧佐竹領の北常陸は今は北条領であるが、まだ仕置きが進んでおらず、かつて佐竹に仕えていた国人も多くがそのまま在城している。


太田一族が来た今なら北常陸の金山銀山を獲れるのではないか?

常陸平に加え金山銀山を得れば陸奥北部の諸将の援助を期待できるのではないか?

幸い岩城氏は箱根で関白に所領安堵されていたが、北条攻めには加わっておらず兵は温存されていた。

このような状況下、岩城軍3千と岩城氏に呼応した北常陸一部の国人衆2千、計5千の兵が南下、赤沢鉱山を襲った。赤沢鉱山は佐竹の時代から金の採掘が行われていた北常陸の主要鉱山の一つである。


で、俺は今、太田城にいる。初陣である。


切っ掛けは、氏房さんからのお誘いだった。


『北常陸の賊軍を討伐するから、一緒に行こう。5千程度の相手なら初陣に持ってこいだろ!』


半年前まで現代の普通のリーマンだった俺が戦場にでる?なんと恐ろしい。でもまあ、歴戦の氏房さんと一緒なら大丈夫だろうと思って、上総・下総から2千の兵を徴兵して参戦することにしたのだ。

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