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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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珪藻土と職人街

火薬製造場からチラリと見えていた場所に土が大量に積まれた工事現場か解体現場のような所があった。


「夕、さっきから気になっていたんだが、あそこは何だ?」


『あれは、粘土置き場ですね。実は今の城壁の更に外側にもう一つ壁を作る計画だったんです。猿共が来るのが意外に早かったんで、結局作業できずに土だけが放置されてるんです。』


『ここは早川側ですが、向かいの酒匂川側にも同じような場所がありますよ』


「ん?なんか作業している人がいるな」


『あれは、粘土から不純物を取り出しているんです。西伊豆からとってきた粘土なんですが、結構、石が入ってたりするんです。』


『石でも、最悪は敵に投げつければ武器になりますから、あぁやって取り出しているんです。ほら、ここにも取り出された石が落ちてますよ』


夕が拾ってくれた石を眺めてみる。これは珪石だな。ガラスの原料だ!


粘土の近くまで寄ってみる。よく見ると、これ珪藻土だ。なるほど、珪藻土なら珪石が混ざっていても不思議はないか。


『お頭、次は職人街見に行きましょう』


土をじっと見てる俺に夕が呆れたように言う。


「わかった、案内頼む」


職人街は家がひしめき合い、作業の音も響いてなかなか活気のあるところだった。


最初の店は細工師の工房だ。


夕が店に事情を話し、作業場に通してもらう。


俺が忍びの頭ということが伝わったのか?、工房長のような年嵩の男がやってきた。


『どうも、お疲れ様です』


「仕事中に邪魔して悪いね。今は何を作ってるんだい?」


『今は種子島(火縄銃のこと)に使うバネを作ってるところです。』


随分細かそうな作業を器用にやっているモノだ。


『といっても、予備も含めてそろそろ全部揃うんで、これからは暇になりそうです。敵が包囲しにきてるってのに暇ってのもなんなんですが・・』


工房長も、少し申し訳なさそうだ。


「確かに、しかし、戦が始まれば何が起きるかわからん。休めるときに休んでおくのも大事だろう」


『ええ、それはそうですな』


「邪魔したな」


『いえいえ、お構いもせずに』


細工師工房を後にする。しかし、この時代にすでにバネがあるとは知らなかった。


バネがあるならちょっと新兵器のアイデアがあるんだ、後でさっきの工房長に相談してみよう。


『次は、鋳物師です』


そう言って、夕が工房に入っていく。やはり、作業場までフリーパスになった。


『お勤めご苦労様です』


なんだか映画の任侠の人みたいな挨拶と共に、やはり工房長らしき人が出てきた。


何を作ってるかは、今度は聞かなくても分かった。大砲(大筒)だ!


資料館にも中世のレプリカが置いてあったのですぐに分かった。


分厚い青銅の砲身の真ん中に10cmほどの小さな空洞、これが砲腔だ。


待てよ?この時代の大筒にはライフリングがされていないんだったな。


もしかして、さっき、もうじき暇になると言っていた細工師達なら、ライフリング刻むこと出来るのではないか?何しろ素材は青銅だし。


「親方、この街に大筒が何門あるか分かるかい?」


『わしら鋳物師が作ったのが10門ほど。あと他所から買ってきたのが10門だったかと思います』


「実は、大筒の命中精度を上げるために少し細工をしたいんだが、細工師におたくの品を触らせても良いかい?」


『命中精度を上げる?それはまたどのような?』


ここは困った時の南蛮人だな。


「うむ、実は長崎で南蛮人から仕入れた最新の技術なんだ。伝えるには細工師に直接指導する必要がある。それとも、この砲腔の中を細工できる職人が鋳物師の中にいるなら、そいつに教えるのでも構わんが?」


『さすがにそんな職人おりません。細工師さんにお願いしましょう』


「夕、すまんがさっきの細工師工房の工房長呼んできてもらえるかな?」


『お待ちください。御屋形様の了解も取らずに、勝手に大筒を改造してしまって良いのでしょうか?』


「それもそうだな。だが、この小さい穴の中に細工を施すことが彼らにも出来るかどうかは分からん。実現可能と分かったら、そう・・・親方様に相談することにしよう」


「ともあれ、さっきの工房長を呼んできてくれ」


『わかりました』


夕は渋々といった感じで出て行った。

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