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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年7月25日・襲名の儀

「なるほど、なるほど」


俺は、氏照さんの館でこの日何度目かになる八王子城・忍城の戦いの話を聞いていた。


土産に持ってきた泡盛はもう大分減っているが、氏照さん酒強い事強い事。


『結局、忍城包囲にいた連中が種子島を使わなかったのは、一度堤防が決壊して、火薬がみんな駄目になっちまったって理由だったんだよ。

あいつら自分で作った堤で自分の首絞めてやがんの 全く間抜けな連中だぜ、がはは』


黒色火薬は乾かせばまた使用可能な筈なんだけどなぁ・・・。


『泥濘にいた兵達はな、将級以外は武器だけ取り上げてそのままにしておいて来たぜ。なまじ装備がよいから縄で拘束するよりキツそうだったぞ、ははは』


いつまでも泥濘ではいないだろうし、今頃は逃げ出してるんじゃないのかな?


『それにしても、忍城にいた甲斐姫ってのは大した女だぜ。浅野長政の大軍を迎え打って撃退したんだってさ。

水攻めしか出来ない石田って野郎と違って浅野は中々の武将だったそうだが、それを追い返したってんだから大した玉だぜ。

おまけに美人だしな。そうだ小太郎、お主の嫁にどうだ?紹介するぞ』


いやいや、強い女は夕一人で十分です。


『捕まえた時の氏勝の鳩が豆鉄砲を食ったような顔、あれは傑作だったわ。お主にも見せてやりたかったぜ』


裏切ってるところを氏照さんの怖い顔で見つけられたら、そりゃあビビるだろうな。


『奴らが種子島使ってこなかったのはな、堤防の決壊で火薬が全部駄目になっちまったからなんだと 全く馬鹿な奴らだ』


あ、もう一週目に突入だ。


こうして、飲んで楽しそうに一人語りしてる姿を見ると、榎本館長や木内館長代理を思い出すな。


木内館長代理は郷土愛の強い人だったから、小田原が勝ったって話したらさぞ喜ぶだろうな。


一方、秀吉大ファンの榎本館長にはこの話は出来ないわ。


本当は氏照さんに相談したい事があって来たんだけど、今日は無理そうだね。


ここで、氏照さんの奥方・比左様がいらした。


『あなた、もうそれくらいにしてください。二曲輪様にご迷惑ですよ!』


氏照さんは八王子城での奥方との再会後、また直ぐに出陣したので、二人でゆっくり時間を過ごしたいと比左様を小田原の館まで呼び寄せていたのだ。


因みに比佐様は、俺が風魔であることを知らない。なので、二曲輪呼びである。


比佐様のお陰で館を辞去した俺は、日を改めて氏照さんに相談に行った。勿論、今度は酒は無しだ。


相談したかったのは、


・自分と雄二は、目立ち過ぎて忍び働きはもう厳しい事

・南蛮の新技術はまだ他にもあるので、今後は、新規開発を行っていきたい事

・その為に、家内で新たな立場が欲しい事


だった。


氏照さんはそれを聞いて、


『そりゃそうだろうな。なんたって天道様に雷神様じゃあな』


と怖い顔をクシャクシャにして笑った。


『よし、ご隠居様達に相談するから、暫く待っておれ』


と言ってくれた。


そうして、評定の間に俺と雄二が呼ばれたのが、今日25日である。


上座に座るご隠居様からのお話が始まる。親方様は隣に控えている。


『氏照から話は聞いておるぞ。此度の戦いに勝利できたのは風魔の働きが大きかった。いや、小太郎、お前の作った新型炮烙玉や箱根で指揮した鬼煙戦法が我らが勝利の全てと言って良いくらいじゃ。

よって、これだけの手柄に見合う恩賞をどうしようか考えておったのだよ』

『忍び働きはもう難しいとの事だったな。ならば、話は簡単だ!その方ら武将になれ!無論、領地も与えるし、下働きの家臣も付ける。領内管理は家臣に任せ、大いに開発をやっていって欲しい。どうじゃ?』


これには、異存などある筈がない。それに、元々欲しい土地があったのだ。


「ありがたき幸せにございます。我ら兄弟今後も北条家中の発展のため精進いたします」


『そうであるか。では、二人には新たな名を授けよう。

まず、小太郎。其方は、我らの曽祖父・早雲様の家名を継ぎ、伊勢小太郎直光と名乗れ。本当は氏光にしたかったのだがもう氏光はおるからな。

そして、雄二、其方は伊勢雄二郎直雷なおらと名乗れ。

どうだ?光と雷。二人の仇名にピッタリであろう。

任せる領地については追って連絡する。何しろ当家はこれから領地が倍増する予定だからな』


やられた!伊勢は伊勢神宮つまり天照大御神。光はお天道様。雷は雷神様。


通り名から離れるのは不可能というより、正式な名前になっちまった。

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