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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年7月2日・忍城の戦い・北条氏房隊・氏照隊

氏照が松山城で兵を休めている頃、北条氏房の兵1万は、本城・岩槻城に帰還していた。


八王子から岩槻までは、多摩川、入間川、新河岸川と大きな河川を三つ越えなければならず、1万もの大軍を率いて6日弱での行軍は氏照隊同様に強行軍だった。


岩槻城もまた利根川の畔にある平城だった。故に敵に悟られず近寄るのは不可能だ。しかし、斥候によれば、城兵は100人程度だとの事だったので、氏房は力攻めをすることにした。


既に惣構えは破られていたが、意外なことに城下は乱取りされた形跡もなく、良く保存されていた。


氏房にとっては勝手知ったる自分の城である。各虎口から侵入し簡単に城兵を制圧し、本丸はじめ多くの部分が焼け落ちていて痛々しいが、それでも久しぶりに本城への帰還を喜んだ。


ここで、城下の領民から、自分の妻・小少将、ご隠居様妹の長林院(先代岩槻城主・太田氏資室)が健在である事を知らされ、妻と感動の再会を果たした。


また、城内の牢から家老・伊達房実が発見された。


小少将によると自分や長林院を助命してくれたのは豊臣の大将・浅野長政だということで、氏房は浅野に深く感謝した。


また、城下が荒らされていないことについても、浅野ら豊臣軍はとても急いでおり、岩槻を落とすと城下を荒らす間もなく直ぐに鉢形城に向かったようだとの事だった。


また、小少将らがいた鹿垣の隣からは城兵からはぎ取った武具が大量に放置されていた。氏房が制圧した豊臣兵の装備からみれば品質の差は明らかであり、豊臣方は鹵獲の価値もないと判断したのだろう。


開放した家老・伊達房実によれば、城兵2千は豊臣方2万の大軍相手に奮戦したが、人数の差は如何ともし難く半数以上の兵が討ち死にしほぼ全滅だったという。


その一方、伊達城など支城から落ち延びた兵達が多数、氏房の岩槻城帰還を知って集まって来たので、氏房の軍勢は最終的に1万2千程になった。


氏房軍は岩槻城で一夜を過ごした後、翌3日、守備兵千を残し、1万1千の兵で騎西城に進軍した。






*同日 松山城 北条氏照 *


本来なら、この日2日、忍城に向け進軍する筈だった氏照軍だが、まだ松山城に在城していた。


というのも、氏照の到着を知った周辺の城の敗残兵や農民らが大挙して軍に加わろうと訪れ続けていたからだ。


北条は今回の戦いに当たり、大量の領民を既に徴兵していたから、集まって来た農民たちは皆、壮年老年だったが、彼らは一様に農業にとって欠かせない時期に畑を踏み荒らし勝手放題した豊臣方に怨嗟の念を持っており、皆、農具、竹槍、死兵から剝取ったと思われる武具などを抱えて士気旺盛だった。


また、氏照が武蔵国内で長年善政を敷いてきたのも大きかった。氏照本人が思っている以上に彼は民から人望があったのだ。


元々、八王子からの進軍途中に加わった野武士達もいたから、氏照軍は2万近くに膨れ上がっており、人数だけで言えば忍城包囲軍と対等になったのだ。


参集した元兵や農民の為、氏照はやむなく松山城でもう数日過ごすことにした。


松山城の後ろに広がる吉見郷には式内三社が存在する。

思わぬ時間が出来た氏照は重臣らを連れ、横見神社、伊波比神社、髙負彦根神社に参拝、必勝祈願した。

三社とも豊臣軍の所為だろうか、荒廃が酷かった。


その日の夜半、偵察に出した風魔が戻って来た。彼らの報告では、


・包囲軍の周囲に隠れられそうな場所は無く、気付かれずに荷駄隊に近づくのは不可能


・水攻めの人足には、周辺の領民を使役しており、風魔2名が紛れ込んだ。


・包囲軍は佐竹・宇都宮・結城ら関東勢が主体で豊臣方の兵は大将・石田三成以下5千位である。


・包囲軍は水攻めの為に築いた堤沿いに一列に布陣しており背後はがら空きである。


・風魔1名が忍城に忍び込み、北条方が小田原で大勝した事や氏照はじめ城主・成田氏長・泰親兄弟が近くまで救援に来ていることを伝えに行った 。


これを聞いて氏照は破顔した。というのも何回も戦っている関東諸侯が主体なら力攻めでも十二分に勝機があるからだ。そもそも関東勢は烏合の衆、少し旗色が悪くなれば、脱兎のごとく逃げ出すか、裏切って北条に付くに違いない。


氏照は荒川を渡ったら敵の後ろを着くことを決断し、騎西城に来るはずの氏房隊にも伝令を出した。

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