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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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硝石

 ここが獣人に包囲され始めてる小田原だと知った俺は、夕に案内を頼んで、備蓄戦力の確認を始めることにした。

 まず向かったのは、先代様(俺が宿る前のこの体の持ち主。孝太郎は敬意を込めてこう呼んでる)が買い付けてきたという硝石の確認だ。


『お頭!具合が悪いと聞きやしたが、もう大丈夫なんですかい?』


 どうやら、この人も一族の人間らしい。


「あぁ、大分良くなったので今日は夕に付いてもらって、色々見て回ってるんだ」


『そりゃあ良かった。こいつが、お頭が買い付けた硝石です。これだけあれば火力で猿どもに負けることはないでしょう。実はお頭がいない間に若ぇ者が密貿易船に偽硝石つかまされて途方にくれてたんですぜ。』


「偽物だって?」


『えぇ、ほれあそこにあるズタ袋5つが偽硝石でさぁ。ったく若ぇ奴はよく確認もせずに』


  孝太郎は、袋の中の偽物をのぞいてみた。

 ん?これ全部プラチナ(白金)じゃないか!なんでこんなに大量に?

 プラチナはスペインが南米から銀と間違えて取って帰って、後に偽物と分かって廃棄したという言い伝えがあった筈。


 さては、廃棄を命じられた奴らが他人を騙して売り払ったか?

 騙された奴がまた別の奴を騙し、巡り巡ってここまでたどり着いたのかな?

 うーん、わからん。


『まあでも、本物の硝石がこれだけ大量に入ったんでもう安心でさあ。何しろ硫黄は鬼涌谷で大量に手に入りますからな』


「鬼涌谷?」


『えぇ、あっ、お頭はご存じなかったですかい?大涌谷の先に硫黄の大採掘場があるんですよ。

 露天掘りで大量に甕に詰められるんで、良い採掘場なんですが、風向きによっては下から、硫黄の臭いが強くなると気を失ったり、死亡する事もあるんもんで、鬼の気まぐれみたいな現象なんで鬼涌谷って呼んでまさぁ』


 それ、硫化水素だ!孝太郎は確信した。


「所で甕に詰めて持ってくるんだろ?甕はどこ行った?」


『鬼涌谷から早川岸の弁天洞窟までは甕に入れて来るんですが、その後は舟で早川を下って持ってくるんですが、舟に甕を乗せるのは危ないんで、こんなズタ袋に詰め替えてるんでさあ。川は急流になったり不安定ですかんね』


「じゃあ、甕は今も洞窟にあるのか?」


『そうでさあ』


「全部でどれくらいある?」


『さぁて、100いや200くらいはあるかもしれやせん。なんせ数えたことねえもんで』


「大きさはどれくらいだ?」


『そうですなぁ、甕にもよりますが、大体、甕一体でこのズタ袋2袋って所ですかいね?』


 ズタ袋は市のごみ袋大くらいはありそうだ。つまり40リットル。


 じゃあ甕のサイズは80リットルかデカいな。


「ところで硫黄を入れた甕は洞窟までどうやって運ぶんだ?荷車でもあるのか?」


『いや、背負うんでさぁ。細い崖路なんかも通るんで荷車は使いやせん』


 この世界の人間は皆小柄だ。今は自分も小柄だが。それが、80リットルの大甕背負って歩くというのか?なんとも想像できない話だ。


「皆、凄い体力だな」


『いや、これくらい普通ですぜ』


 ふむ、現代のような便利用具がない世界だからな。この世界の常識的には普通なのかも知れない。


「その甕なんだが蓋は付いているか?」


『蓋というか、油紙を被せて縄で縛って、背負ってまさぁ』


 そう言って見せてくれた紙は、獣皮のような丈夫さと柔らかさを併せ持った紙だった。これなら、密閉性もかなり担保されそうである。


「色々教えてくれて有難う。後で大仕事を頼むかもしれんから覚悟しといてくれ」


『本当ですかい!火薬の製造はもうこいつ等だけで十分なんで、何でもやりますぜ。お頭との仕事はいつも楽しいですからね。いつでも呼んでくだせえ』

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