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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月12日・韮山城の戦いと風魔散開

小田原から総勢1万の兵で韮山城に駆け付けた、北条氏照・松田憲秀だったが、包囲軍は小田原とは比較にならない程少ない事に当初は驚いた。


城内の兵は3千程の筈だが、包囲軍も同数か多く見積もっても5千程度しかいない。


その代わり、城の回りは堀や策が巡らされ容易に城から打って出れないよう工夫がされている。これは完全に「干殺し」つまり兵糧攻めの布陣である。


これは要するにこの城を落とさなくとも、本城・小田原城を落とせば諦めて降伏開城してくるだろうとの判断だったのだろう。


しかし、今その目論見は外れた。小田原城は落城するどころか敵を撃退し、1万の北条軍が救援に来ている。しかも、氏照隊・松田隊とも新型炮烙玉という遠距離高威力兵器を装備しているのだ。


伊豆の峠を越えてやって来た救援軍は、山を下りると山裾の雑木林の中に布陣した、バリスタの射程内に包囲軍の陣幕がいくつか見える。


氏照隊は城向かって左、松田隊は同右の陣幕に目掛けて新型炮烙玉を射出した。


幸いなことに今日も曇ってはいるが雨は降っていない。あっという間に複数の陣幕が爆発に包まれ、続いて突進した氏照、松田隊に包囲軍は抵抗らしい抵抗もできず、四散していった。やはり陣幕にいた筈の敵将を先に攻撃したのが大きいのだろう。


こうして、韮山城の包囲は瞬く間に解除され、北条氏規以下3千の兵は無事、救出された。


その後、小田原城では20万の敵の主力に壊滅的な打撃を与えたことを伝えると、城兵は一様に驚いていたが、兵糧を新たに城に運び入れ、城兵には引き続き城を守備してもらうことにし、旧来からの城家老・朝比奈泰栄を守将にすえて、氏規は氏照・松田と共に小田原城に向かうことになった。


*同日 小田原城*

城内は、前日来、騒然としていた。


というのも、駿河に向かった御屋形様・氏直の軍勢が山中城で敵に遭遇、苦戦しているという報が、前夜届いたからだ。


折角、包囲軍を破ったのに御屋形様が万一討ち死にしてしまったら、元の木阿弥である。


城周辺の遺体処理を急遽中断、宿老・山角定勝を主将とそして5千の兵をあつめ山中城に向かわせた。


また、遺体処理は小田原周辺の領民村民を雇い再開した。梅雨明けが近いこの時期、遺体の放置は疫病の原因となるので、喫緊の課題なのである。


また、この一件は風魔ら忍衆にも大きな衝撃を与えた。本来、行軍先の情勢把握は忍びの仕事であり、駿河までの道中の状況を把握しないまま御屋形様を出陣させてしまった事は、糾弾されても仕方がない事態なのだ。


無論、早雲寺の急襲、包囲軍への欺瞞伝令等で、人手が足りなかったという事実はある。しかし、御屋形様にもしもの事があれば、全て言い訳に過ぎない。


猿こと天下人秀吉に同盟を裏切った糞狸・家康を誅殺したという風魔の高揚感・満足感は一気に冷え込み、北条領内の現状把握に風魔の者が関東中に散開していった。尚、領内には歩き巫女は潜伏していない。彼女らはあくまで他国の情報収集が仕事なのである。


やがて、近い支城の状況から報告が入りだす。足柄城は無人、玉縄城は豊臣方の瀬田正忠、古田織部がおよそ300の兵で守備していることがわかった。


津久井城は攻撃を受けておらず、北条方の重臣・内藤綱秀以下城兵1500程が依然、詰めているという。


また伊豆の林際寺に蟄居していた元下田城主で北条方の宿老・清水康英には小田原が勝利したことを伝え、小田原城に帰還してもらうことにした。


下田城は徳川方の老将・戸田忠次が守備していたが、九鬼軍が逃げる際に事情を聞いたのか城を脱出し現在は無人だという。


依然、動揺を隠せない小田原城にようやく歓声が戻ったのは山中城から御屋形様の先触れが帰参したことだった。


それによると、御屋形様は伊達軍の応援もあり見事山中城を制圧、城に拠っていた蒲生氏郷、宇喜多秀家の降伏を受け入れ小田原に帰還中だという。


応援に出た山角隊も御屋形様と合流後帰還するとのこと。


駿河には北条氏光隊が伊達の支援を受け向かっているとのことだった。


ようやく、小田原城は安堵を取り戻したのである。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] さてはて、秀吉も秀次も家康も居なくなったが、北条家に日本全体を視野に入れて考える人もいないし、どうするのかねぇ。戦国時代が続いて、南蛮にしてやられるのかなぁ。
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