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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月9日・夜明けの地獄絵図

この時期の日の出は、およそ4時30分頃である。


徐々に明るくなっていくにつれ、小田原城周辺の状況も目に見えてわかる様になってきた。


西も東も北も、夥しい数の、遺体、打ち捨てられた軍旗、武具、防具が散乱している。


最後まで抵抗を続けていた、西側の堀秀治・長谷川秀一・池田輝政・細川忠興といった天下人直臣の猿人族隊だが、明らかになった周囲の状況に恐怖しついに後方に逃げて行った。


彼ら直臣部隊は総兵5万近かったが、北条氏照隊・松田憲秀隊・ご隠居様隊からの攻撃による被害もまた甚大だった。


が敵に後ろを見せた物の、梅雨で増量した早川河口域は簡単には渡れない。むしろ新型炮烙玉と大筒の良い的となってしまった。


攻撃の直撃を受けて死亡した者もいたが、それ以上に砲撃の着弾が引き起こす川の大波に体をとられ流され命を落とした者が多かった。天下人直臣とあって下級兵も重い鎧を装備した者が多かったのも仇となった。


無事に逃げおおせた兵は当初の5万の兵から考えれば10分の1位以下、5千もいないのではないか。


小田原城から周囲を見れば、あれ程の大軍だった包囲軍は水軍を除いて全く見かけない。


辺りの無残な光景を見て、誰かが呟いた、『まるで蒙古襲来だ!』


昔、日本に攻めてきた蒙古の大軍だが、日本の侍の抵抗に上陸を果たせず、夜間は船に戻っていったという。ところが一夜明けると蒙古の大軍は一艘の船もなく姿を消したという故事がある。蒙古軍が停泊していた場所には、水面のあちこちに敵軍の残骸が散らばっていたという。目の前の光景はその故事を彷彿させるものがあった。




ところで、敵の水軍勢も陸で起こる夜闇の爆発音に気づいてなかった訳ではない。


度々、斥候の小舟を出して情報の把握に務めようとしていた。


だが、斥候隊は一艘として帰ってこなかった。


対処したのは言うまでもなく、風魔と三つ者である。闇の中では、松明に片手を取られる水軍の一般兵より夜目がきく忍びの方が遥かに優位だったのである。


彼ら水軍は、結果的に情報を得られないまま朝まで相模湾内に停泊することとなったのだ。


因みに、現場の判断で大筒の使用など決断できた将は水軍勢にはいなかった。勝手に武器を使用したと知れたら叛意を疑われ誅殺される恐れがあったからだ。天下人とはそれほど恐ろしい存在なのである。




さて、小田原側の海への備えは北条氏照隊が担当していた。が、主力は早川口を抑えていたので、海側は氏照の指南を受ける成田氏、壬生氏、那波氏等関東衆が担当していた。


彼らの元にはバリスタ2器、新型炮烙玉100個、大筒4門が配備されている。


海に近い早川口、高井楼からも応援のバリスタが向かってきている。新型炮烙玉は夜間に追加で製造した20個に加え、各隊の余った在庫を海側に運ぶよう親方様からお触れが出ているが、在庫が全隊でどれくらいあるのかは誰も正確には分からない。




そして、この梅雨の晴れ間は、俺、孝太郎に正に天恵となった。


そう、アルキメデスの熱光線のチャンス到来である。


この日の為に、城下から集め磨きに磨いた鏡、およそ1000枚。


今それらは大きな格子状の枠に嵌め込まれている。


各々の格子は不揃いな鏡の大きさに合わせて其々調節されており、これは細工師・木工師の力作である。


こうして、この木枠は今や一辺が5メートル程の大鏡と化したのだ。それが5枚。


これを敵の大筒の射程外である、本丸に設置する。元は山である本丸からは海側を見下ろすことになるので、この作戦には格好の場所なのだ。


今回の人員は本丸を守備する親方様の隊から出して貰った。


雨続きで事前に十分な訓練が出来なかったのが気がかりだが、こればかりは仕方がない。


今はまだ日の出が終わり朝日が顔を出したところだが、もう少し日が昇り日差しが強くなったら作戦開始だ。目標は向かって左から二番目の長曾我部隊の安宅船。


下田城攻略の際、苛烈に大筒をぶち込んでた隊だと聞いている。


彼らには、古代の天才物理学者の生贄になってもらおうか。

(史実での小田原陥落まで、あと27日)

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