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落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける   作者: ディエゴ
第一章 包囲されたはじめての街
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1590年6月9日・深夜の大決戦

『御屋形様、申し上げます。只今、箱根の殿下より御触れがあり、陣を進め小田原を奇襲せよ!との事であります。先日、遅参した伊達に我らが軍の武威を大いに見せるべし!との事であります。同様の御触れが各隊に出ているそうです』


『何、殿下がとうとう動くか!よし一番槍は儂等じゃ、全軍、前進せよ。荷駄隊も遅れず付いてまいれ!』


この様なやり取りが包囲軍各隊の大将と馬廻りとの間で行われていた。


西側の部隊(主に猿族)は早川を渡り、北側の部隊(主に猿の家臣軍)は丘陵を降り、東側の部隊(主に狸族)は山王川に迫ろうとしていた。各隊とも松明を掲げ、火縄には既に火を灯している。


小田原は今月に入ってから脱走した部隊も出始めており、指揮も高くなさそうだったので、各隊とも余裕の行進だった。


実際、城壁・土塁400メートルに近づいても城内から全く応戦がない。もしや皆寝てるのでは?と思う程の静けさだった。


やがて、先方衆は200メートル、100メートルと近づく。最早、銃撃が届く距離だ。しかし、相変わらず小田原は所々に松明が灯っているだけで、沈黙している。このまま城内に討ち入り、制圧できるのでは?と思ったその時だった。突如、味方の後方で大きな爆発が起きた。大筒の暴発か?原因が分からず困惑する各隊に再び爆発が起こる。それも、二発、三発と。




*小田原城内 北条氏房隊・新型炮烙玉部隊*


井細田口を守る彼らは敵の本陣が射程に入るのを、息をひそめて待っていた。幸い、敵の松明のおかげで相手の行軍状況は良く見える。


彼ら氏房隊が対陣している相手は木瓜(織田信雄隊)である。まるで先陣を争うかのような行軍振りだった。多古丘陵という最も城内から離れた所にあった筈の本陣も今や300メートル程先、射程内だ。


「一番槍、いや一番玉か、俺たちのようだな」


氏房家臣であり新型炮烙玉部隊長を務める広沢重信が言った。


彼の元にはバリスタ3器があるが2器を配備、1器は本器が故障した際の予備とした。新型炮烙玉ダイナマイトは矢に番えた状態で100玉与えられている。


新型炮烙玉部隊の陣容は、一つのバリスタにつき


敵の場所距離を測る見張り役


炮烙玉矢をバリスタに設置する役


導火線に着火する火役


弦を引き放つ射手


部隊長の指示を確認するお指示役


の5名からなる。


「狙いは本陣!射てぇぇ!」


重信の号令は声ではなく予め決められていたハンドサインで行われた。


声を使わなかったのは敵に気付かれるのを防ぐためである。


導火線に火がついた新型炮烙玉を先端に付けた矢が発射された。続いて他4器のバリスタも敵後方に向けて発射する。


北条方の方針は、敵を誘き出した後、本陣等後方の攻撃は新型炮烙玉。


前面の先方衆へは種子島。


2門の大筒は敵の状況をみて遊撃となっていた。


どこへ弾が飛んでいくか分からない大筒を遊撃に使用するなど常識ではあり得ないが、竜掘りを施した北条の大筒はある程度狙いを定める事ができるのだ。


突如後方で爆発が起きた敵の先方衆は混乱に陥った。前方の小田原城は相変わらず沈黙を守っている。上空を飛び去った導火線の火に気付いた者はいなかったようだ。


やがて、先方衆の大半が後方を気にしだした。


ここで、次の新型炮烙玉の爆発に合わせ、小田原城内からの種子島隊が先方衆に向けて銃撃を開始した。


射撃手を3組に分けて交互に発砲する所謂三弾打ちである。


新型炮烙玉隊もバリスタ3器目を投入し、2器、1器と交互に射出するようにしている。


木瓜こと織田隊は一万を超える大軍であったが、混乱に陥ると大軍であるがゆえに統率は大きく乱れ、謎の爆発と前方からの鉄砲で大混乱となった。


最早、本陣からの指示も届かなくなり、半ば錯乱状態の兵は四方八方に勝手に逃げ出していった。


こうした光景は、この夜、小田原城周辺の各地で見られることになったのである。


(史実での小田原陥落まで、あと27日)

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